日本と外国のワークショップ、どう違う?第3回目のゲストは、押野健一氏。押野氏は日本放送協会(NHK)所属で、現在はテクニカルプロデューサーとして活躍されており、これまでに様々なジャンルの番組でステディカムオペレート経験をされている。

  • Steadicam Gold Workshop Japan 2018
  • LA ARRI Academy Burbank Trinity 2019
  • SOA Fall Philadelphia Workshop 2019

上記3つのワークショップに矢継ぎ早に参加し(笑)、海外ワークショップ経験が多い日本人の1人だ。今回はTrinityのワークショップと、SOAのワークショップ、2つのワークショップでの経験をお話いただいた。

ステディカムを手にしたきっかけとは

押野氏:単純にカッコいいと思ったからです。2016年頃に社内で研修があり、それに参加して学ぶことができたのが始まりです。最初は全然できず、大変だと感じていましたが、研修後にもっとうまくなりたいという特別な思いがありました。そこから自分のものにしたいと思い、自主練をしました。

研修の翌年、ゴルフ中継でステディカムデビューしました。9月の暑い時期かつ長時間だったので、辛いこともありましたが、選手にずっとついていけるのは、ステディカムだからこそできた面白さでした。

関わった中で印象的だった作品

Steadicam M-1を使い、NHK 8K開局特番を、ローマ・バチカンから8K生放送の中継を行ったことが印象的ですね。今まで使っていた放送用のカメラより重く大きい(総重量約35kg程度)ものでしたが、トレーニングもして、気合を入れて行きました。

ロケ・中継とも充実したものになりました。スーツを着ないと入れない場所があり、ワイシャツ、ネクタイ、スラックス、革靴にステディカムのヴェストを着てオペレートをしたことも印象的です(笑)。

ワークショップ参加の動機、苦労など

ゴールドワークショップ(日本開催)に参加したのは、きちんと勉強したいと思ったからです。社内研修も良かったですが、もっと知りたいと思いました。操作だけでなく歴史など、様々な部分を知ることができました。講師陣もすごく良かったです。

ゴールドワークショップを受けてから、どんどん自分で調べるようになり、日本国内・日本語で学ぶことに限界を感じ、もっとステディカムを学ぶためには英語圏で学ぶべきと思いました。行きたいワークショップは4つあります。

  • Steadicam Gold Workshop(Tiffen主催)
  • SOA Workshop(SOA主催)
  • Trinity Training(ARRI主催)
  • Steadicamp(Betz主催)

Steadicampは不定期主催で、ここ何年か開催されていませんね…。

海外のワークショップに参加した感想

偶然、Trinityのワークショップが海外で開催されることを知り、申し込みました。TirinityワークショップからSOAのワークショップまで期間が短くなったのは想定外でしたが、たまたまそうなった感じです。あとは先にもお話しましたが、国内・日本語で学ぶことに限界を感じ、英語圏で学んでみたいと思ったのがきっかけです。

行くまでに大変だったことは特にありませんが、それ相応の英語が必要になると思い、覚悟していました。ただ、ホテルの予約を電話で行う必要があり、そこは苦労しました。割引を効かせるなどのために電話したのですが、ちゃんと予約できていると不安はありました。行ってみたらちゃんと予約も割引もされていて安心しました。

行ってから大変だったことは、SOAのワークショップは、毎日ホテルから会場まで誰かの車に乗り合いで行くため、毎日相手を探す必要がありました。あとは、お互いに芝居をしながら撮影するのですが、言語の違いや、英語圏の人なら理解できるような文化的な意味を理解できない時があり、シーンの本当の意味をとらえられないことがあり、苦労しました。

Trinityの場合には、取り扱いが複雑なことが一番で、ワークショップの期間が3日間と短いのもあり、セッティングなどが多くの時間を占めました。最終日はずっとシチュエーションを設定したワークを行いましたが、3日間は習得するには時間が短いなと感じました。

ワークショップ参加で得たものとは

理論などを体系的に理解できるのはすごく良かったです。色々な動きのバリエーションを学ぶことで、これができなかったけど、こうすればできるようになるな、というようにイメージができるようになりました。躓いた時(できなかった時、という意味で)に、振り返るバックボーンができたのは大きいです。あの時こうやっていたよな、みたいな思い出しができます。

その他、海外っぽいなと思ったのは、いい画を撮ったもん勝ちみたいなところです。もちろん機材の扱い方は教えてくれますが、それを扱って「どう撮るか」を教えてくれました。使い方というより、「こういう表現のほうがいい」という話にどんどんなっていくのが、非常に良かったです。

Trinityはほぼ触ったことがなかったので、ステディカムと近い部分はすんなり入ってきましたが、そうではない部分は初めてのことが多く、こちらも学びが多かったです。

国内と海外でのワークショップの違いとは

参加者に若い人が多くていいなと思いました。この仕事をしたい、と思って来る人が多い印象で、みんな本気度が高くて積極的でした。ステディカムオペレーターという職の地位が確立されているなと感じました。また、技術よりも、どう表現するかというところに重きを置いている感じがしましたね。

また、リードインストラクターが60代から70代とベテランで、培ってきたものが大きく、次の世代に伝えていきたいという懐の深さを感じました。

海外ワークショップをオススメする理由は?

ワークショップ参加には費用がかかるため、心からやりたいと思っている人が集まっている印象です。うまくなりたいという野心を持っていくのももちろん良いのですが、海外オペレーターとのコミュニティの中に入れるのは嬉しかったです。世界のオペレーターのコミュニティは広いので、そこに入っていけることは、海外ワークショップの醍醐味かなと感じました。

日本人は真面目で、休憩時間まで練習して人よりもうまくなりたい、ということをやりがちですが、あんまりそういう雰囲気はないんですよね。メラメラはしていないけど、楽しみながらなにかを得ようとはしているみたいな。

あいつよりうまくなりたい、ということよりは、お互い高めあっていくみたいな。表現が難しいですが…。だからこそステディカムオペレーターはみんな仲がいいのかなと思います。

また直近では、去年ARRI AcademyのオンラインTRINITY trainingに参加しました。コロナ禍で海外にいけないので、オンラインというかたちでワークショップに参加しました。内容はTRINITYの基礎からオペレートのTipsまでと、結構盛りだくさんで学ぶことができました。講義は収録したものを視聴する形式でしたが、5コマで5時間を超える内容でした。オンラインでも学ぶ機会があるのも、時代の変化かもしれませんね。

WRITER PROFILE

柏原一仁

リリーヒルワークス代表。銀一株式会社にて映像機器・写真用品のセールス・マーケティングを経て独立。好きな食べ物はからあげ。