日本と外国のワークショップ、どう違う?第4回目のゲストは、撮影監督の山田康介氏。

SOA Spring Philadelphia Workshop 2015に参加した経験をお伺いしました。第3回登場の鈴木氏、第4回登場の押野氏も参加しているお馴染みのワークショップだ。

ステディカムを手にしたきっかけ

22年ほど前、映画「催眠」(1999)に見習いとして現場入りした時に、佐光さん(佐光朗氏)がステディカムオペレーターとして現場に来ており、初めてステディカムでの撮影を見ました。その流れるようなカメラワークがカッコいいと思いました。オペレートしている姿がカッコ良くて、画が良かった。そこがきっかけです。だからといってすぐ始められる環境でもなかったので、ステディカムに触れるまでしばらく時間が空きました。

ある時、先輩の清久さん(清久素延氏)がメーン州のワークショップに参加した後にステディカムを購入されました。それから練習に誘ってくれて、基礎から教えていただきました。とはいえ助手だったので、撮影の機会はなく、またしばらく時間が経って、自分がカメラマンとして撮影できるようになって、映画「僕等がいた」(2012)の、釧路駅のシーンで初めて使いました。

駅のホームにレールを敷くスペースもなく、ドリーに乗って引っ張りの画を撮るだけの単純なワークでしたが、うまくいきました。その後、自分の作品でも頻繁に使用するようになりました。

関わった中で印象的だった作品

WOWOWドラマ「そして生きる」(2019)の中で、バス停での主人公の男女の別れのシーンをワンカットで撮りました。この時色々な条件が整っていて、お芝居はもちろん良かったし、夕景狙いの夕陽の感じも良く、バスのタイミングも全て良かったです。

すべて撮れたなと思いました。カットを割って撮影すると、そうならなかったと思いますが、ステディカムだから、一連で感情を乗せることができました。刻一刻と変化する芝居の中で、カメラも一緒に芝居をして、最後見送った顔に寄った瞬間に涙が落ちる。それがカメラもお芝居も全てがシンクロした瞬間でした。それはすごく印象に残ってます。このドラマは6話で放送された後に、再編集されて劇場版としても公開されました。

「シン・ゴジラ」(2016)の撮影前にSteadicam M1を購入し、そこからなるべくステディカムで撮れる画はステディカムを使っています。作品によってはほぼ毎日ステディカムで芝居を撮っています。今日に至るまで、何百時間もステディカムで芝居を撮っているので、自分はその事に特化していると思います。

映画でもドラマでも、1回テスト、1回本番、それしか撮らないです。何回もテストをやって、何回も本番やって、いいものができるというのは違うと思っています。芝居を逃しちゃダメなんです。それが僕らに与えられた条件なので、瞬時にこの条件で撮れるのか、ということをずっと考えています。ほかにこんなにステディで撮ってる人はなかなかいないと思います。

筆者:それはDPだからできることですよね?オペレーターだとそういうわけにはいかないと思うんです。

※DP(撮影監督)兼ステディカムオペレーターでないとできないですよね。という質問

そうです、オペレーターは言われたことを完璧にこなすのが一番の仕事だと思います。自分がDPもやっていると、自分で全部決められるんです。ただその責任は全て負う。編集のことも考えながら撮っていますが、自分でジャッジできるというのはありますね。

ワークショップ参加の動機、苦労話

ずっとワークショップには行きたいと思っていました。でも忙しすぎてずっと時間がなかったんです…。

たまたま「シン・ゴジラ」撮影前に、ちょっとだけ時間が空き、そのちょっとのスケジュールに、たまたまSOAのワークショップのスケジュールがハマっていました。清久さんや佐光さんは何回もワークショップに参加しています。佐光さんが参加しているときのビデオを見せてもらったりして、羨ましいのと、本場で習うのはやはり大事だなと思っていました。

海外のワークショップを選んだ理由は、一から教えてくれるということがありました。ステディカムを作った人たちが教えることはホンモノじゃないですか。その人達から教わるのが一番早いですし、ハリウッドで働く人たちのレベルはやはり高いので、そこで学びたいと思いました。

作った人たちから直接教わるのと、その人達から教わった人に教わるのでは、違うのではないかなと思いました。あとは、当時、日本で求めるワークショップが開催されていなかったというのもあります。

渡航するまでに大変だったことは、そんなになかったですね。なんでも楽しんでしまうタイプなので、ノンストレスでした。逆にその後ニューヨークに行ってみようとか、そういう計画も立てて、散財するつもりで行きました(笑)。

現地で大変だったことは、言語の問題が一番でしょうか。人によっては英語がわからないのになんで来てるの?なんて言われることもあり。その時はスペイン人の参加者が助けてくれました。座学も多いですしね…。

ただ、細かいニュアンスがわからないにしても、オペレーターの悩みは世界共通なので、だいたいどんなことを言っているかわかりました。座学も全然退屈しないですし、全くわからないこともなかったです。撮影という行為が世界共通だからだと思います。

言葉がわからないなりに一生懸命聞くと、向こうも答えてくれる感じがありました。言葉が伝わらなくても、質問すれば、相手もちゃんと答えてくれます。日本人は推し量るみたいなのも得意なので、言語的に不足なところがあっても、補完もできたと思います。

今思えば言葉(英語)が話せないのにどうしてだろう?と思いますが、ボールがあればボールで一緒に遊ぶ、みたいな自然な感じでした。たとえばワークショップの休み時間とかでも、ひとりでいるのは寂しいので、作品の話をしてみたり、なんとなくコミュニケーションをとっていました。

言葉が伝わらなくても作品が共通言語でした。そういう意味では大変なことはなかったですね。毎日が楽しくて幸せだったし、言葉が通じないこともそこまでストレスでもなかったです。

ワークショップ参加で得たものとは

一番大きいのは、何が正しいのか、何を目指すべきなのかが明確になったことです。日本ではそのあたりがふわっとしているというか、揺れてもいいし、人物についていけばいいみたいな印象でした。アメリカでは、ステディカムは移動車に代わるもので、Fixを撮らないといけない、と言われました。

今までも、止めようとはしていたけど、若干ふわっとしてしまう。みたいなところがありましたが、それをちゃんと突き詰めていくべきだったというのが明確になりました。やはりハリウッド映画のステディカムのショットをみても、かっちりしていて、Fixがちゃんと出てるんですよね。そこが目指すべきところだと思います。

それから、ある程度経験がある人のほうが、圧倒的に成長しているように見えました。僕自身もそうです。細かい技術をものすごく教えてくれる場所でした。自分の現場でも使える"技"をたくさん知ることができました。しかし、0出発の人はほかのことを覚えるのでいっぱいになってしまい、もしかしたら細かいところはもう忘れてしまっているかもしれないので、ある程度経験がある人のほうが、いざ自分の現場になったときに、思い出せると思いました。

かかった費用

ワークショップが約35万円、宿泊費が約10万円、交通費全部約25万だったと思います…。ワークショップのあとにニューヨークに寄ったりもしたのでプラス10万円程度かかってると思います。トータル約100万円だったと思います。ニューヨークですごくいいホテルに宿泊し、ブロードウェイでお芝居見たりと…豪遊しました(笑)。

筆者:そういえばロッキーのところ(Philadelphia Museum of Art)には行きましたか?

行きました。ロッキーステップやりにいきました。工事中でしたけど…(笑)。あとギャレットの別荘が本当に素晴らしかったです。最後の卒業のときに行きましたが、その場の流れてる雰囲気というか、すごく良かったです。

国内と外国のワークショップの違い

フィラデルフィアは環境がものすごく良いところでした。気候、ロケーション、食事も良かったです。日本という普段自分が生活していない環境に行くことで、ものすごく感覚が刺激され、クリエイティブな気持ちになれました。

家から学びに行って終わったら帰るというルーティンの中でやるのか、自分の身ひとつで行って全部を吸収するという違いでしょうか。日本にいると普通に電話がかかってきたりして、仕事のことも考えてしまいます…。そういうのをなくし、ステディカムのことだけを考えられるというのは大きいと思います。日本映画を見るか、海外映画を見るかの違いに近いかもしれません。何かを刺激されるような…。

ひとつ思うのは、ステディカム自体を開発した人たちから直接話を聞くのと、それを伝え聞いた人たちから聞く話は、凝縮度が違うと思います。実際にモノを作ったギャレットがいて、ジェリー(Jerry Holway/ステディカム共同開発者)がいて、クリス(Chris Fawcett/Exovest開発者)がいて、というのは、やはりものすごく聞いてても入ってきました。その差かなと感じました。ギャレットに会えるだけで、感動できちゃうので。

どういう人に外国のワークショップを勧めるか

行きたかったら行けばいいと思います。学びたかったら早いも遅いもないと。どんなタイミングでもいいと思います。ただ、ある程度経験があったほうが伸びしろはあると思います。柏原さん(筆者)も仰ってましたが、もう1回行きたいってなると思うんです。佐光さんも何回も行ってて、僕ももう1回行きたいと思っています。

遅い早いというよりは、行きたいとき・行けるときに行けばいいと思います。そうすれば、行きたいとなったら何度でも行けばいい。行って損することなんて何一つないです。学ぶことしかなかったです。

あとは、その時の同窓の生徒と今もFacebookなどで繋がっていて、たまに連絡をとりあったり、こんな作品やったよなんていうのも見れて嬉しいです。そういうつながりも含めてワークショップだったなって思えますね。

まとめ

4回に渡って、海外のステディカムワークショップに参加された経験を、それぞれの立場から4名の方にお話いただきました。筆者はTiffen社主催のステディカムワークショップを主催してきましたが、一番のフォーカスポイントは、世界中、どこで受けても同じ「雰囲気づくり」をできることです。

我々は技術はもちろん"文化を伝えている"ということ。そのためには、本場アメリカで受けても、ヨーロッパで受けても、日本で受けても、ワークショップが修了したときに、世界中の卒業生が同じ輪の中に入れる状態をつくっています。そしてその輪はギャレットがステディカムを発明してから40年以上継続している、大きな輪です。

この4回で、「違い」について色々と書かれていますが、どこで受けても楽しい、これは間違いありません。この記事を読んでワークショップに参加したくなったあなた、日本のワークショップでお会いできれば嬉しいですし、海外のワークショップを受けてみたいんだけど不安。ということがあれば、いつでもご相談ください。

ステディカムオペレーターの世界は、広くて、深くて、でも狭い、居心地のいい場所です。

WRITER PROFILE

柏原一仁

リリーヒルワークス代表。銀一株式会社にて映像機器・写真用品のセールス・マーケティングを経て独立。好きな食べ物はからあげ。