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今夏の東京パラリンピックの閉会式では、バーチャルヒューマンがプロジェクションの映像演出に登場し、大きな話題となりました。このような実在しない架空の人物「バーチャルヒューマン」は、2010年代後半頃から既に広告キャンペーン等に登場しましたが、近年ではリアルな人間と見分ける事が難しい程にそのクオリティが大きく向上しています。

さらに今ではスマホやオンラインゲームのプラットホームにて、誰しもが簡単に自分の理想の姿のアバターを生み出す事も可能になっています。そんなバーチャルヒューマンの台頭によって、映像コンテンツの表現方法がどのように変化していくのか予報したいと思います。

予報①歳をとらないバーチャルヒューマンのアイドル Virtual Human Project /Saya by TELLYUKA

3DCG制作を行うアーティストユニット"TELLYUKA"が生み出したバーチャルヒューマンのSayaは17歳の女子高校生という設定。これまで複数の企業プロモーションやイベント等のイメージキャラクターを務めています。以前、SXSWにも出展されました。彼女はアイドルオーディション「ミスID2018」にも出場し、特別賞を受賞しています。

もちろん歳をとる事はなく、いつまでも変わらない永遠のアイドルを応援するという、現実では不可能な願いも可能になります。今やVTuberなどオンラインでのみ活動するアイドルが既に人気を集めていますが、将来的にはリアルな人間と見分けがつかない程のクオリティで、背後に人間が存在しない完全なバーチャルヒューマンのアイドルが登場するでしょう。

予報②メタバースで活動するもう一人の自分はリアルの生き写し Unreal Engine / MetaHuman Creator

Fortniteで知られるアメリカのゲーム制作会社Epic Gamesが開発するゲームエンジンUnreal Engineに、新しくMetaHuman Creatorが搭載されました。この機能を使用すると、誰もが簡単に非常にリアルな3DCGのオリジナルキャラクターを作成する事ができます。これまで精巧な3DCGの作り込みには数日~数週間とかかっていたものが、自宅のPCで1時間以内にできるようになるというから驚きです。

現状オンラインゲームの世界で使用するアバターは、用意されたいくつかのモデルから選択し、プレイヤーそれぞれが髪型や衣装をカスタマイズしていくといったものが一般的ですが、今後はそれぞれのプレイヤーにそっくりな生き写しのアバターが使用できるようになるかもしれません。将来訪れるであろうと言われているメタバース世界では、現実の個人を認識するために、生き写しのアバターしか使用できないといった決まりができるかもしれません。

予報③どんな洋服でも着こなすバーチャルモデルによるファッションショー Brud / Lil Miquela

米国のスタートアップ企業Brudによって作られた架空のインスタグラマーLil Miquelaは、300万人以上のフォロワーを持つインフルエンサーとして、様々なブランドとコラボレーションを行っています。過去にはPradaやDior等の世界的ハイブランドの広告にも起用されました。

新型コロナウイルスの影響により、多くのファッションショーがオンライン開催に切り替わり、これまでとは異なる新たな表現方法が数多く生まれています。オンラインであれば、バーチャルヒューマンをモデルにする事で、現実では不可能なシチュエーションや洋服の見せ方も可能です。起用されるファッションモデルが現実の人間である必要性が無くなってきているのかもしれません。

予報④スマホ内の音声アシスタント機能が擬人化されたパートナーSAMSUNG NEON

SAMSUNGが開発しているバーチャルヒューマンのNEONは、店舗で接客をしたり、街中で道案内をしたり、子供の面倒を見たりと、生活の様々な場面で人間をサポートする事を目的としています。スマホやスマートスピーカーの音声アシスタントが、よりリアルな姿で擬人化され、私達ひとりひとりに合わせて接してくるといった未来の生活のイメージが、もうすぐ現実のものになりそうです。

リアルな見た目はもちろんの事、私達の態度によって個々の性格や口調までもがパーソナライズされていくと、より愛着のわく存在になるでしょう。バーチャルヒューマンと一緒の世界で暮らすために、生活の大部分を現実よりもメタバース世界で過ごすという人も増えるかもしれません。

まとめ

人間の姿を模したAIとのコミュニケーションでは、外見の向上と共に、中身となるAIの機能もどんどん発達し、画面越しの相手が本当の人間かどうか区別が付かないという事は、近い将来当たり前に起こり得るでしょう。相手の姿がリアルになればなるほど、また受け答えが自然になればなるほど、接する人間側の態度も変化してくるはずです。未来の映像コンテンツ制作では、人間とAIの新たなコミュニケーションデザインについても模索していく必要がありそうです。

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WRITER PROFILE

VISIONGRAPH Inc. / 未来予報株式会社

イノベーションリサーチとコンセプトデザインが強みの未来像をつくる専門会社。SXSW Japan Officeとしても活動中。