コロラドで一番ノッポな17th Street Plazaビル

昨年後半から目立って来た経済不況は全米だけでなく世界の経済を揺るがす大きな影響を与えていますが、コロラドは全米各州の中では比較的その影響が少なくその回復も全米では最も早くなるのではないか、と専門家筋の予測がなされています。

しかしながら、特に全米規模のチェーンを形成している多くの支店や店舗を抱える企業では経済不況を乗り切る対策として特にその売り上げ金額や利益率の低い店から順番に削減してスリムな体質にする方法がとられています。

その経営方策の対象としてコロラドでも私の住んでいるデンバー地区での店舗閉鎖が現実の事となって目立って来ていますが、その中でも身近で現実となって来ている店の様子を今回のレポートで以下に紹介します。

こうした今まで優勢にやっていた店が閉鎖となって、その後に入るクライアントが見つからない状況で、その店の建物が空になったままでいる状況を「Ghost Box」と呼んでいますが、これらが新しい企業で再開して埋まってくれるようになると始めて景気回復と言えるのだと思います。

不景気な話は聞きたくもない、と言う最近の状況ですが、日本でも最近は日常的に見られる様になっている、経済の順調な時には事業を伸ばせるだけ伸ばして規模拡大を計り、一旦経済不調となるといち早く従業員解雇やその店舗数の削減を行って拡大しすぎた体質の改善を計ると言った方策がアメリカの各企業では露骨にとられています。

17th Street Plazaビルの売買契約が成立

コロラド州内で最も高層ビルはデンバーのダウンタウンの17番通りに在る17th Street Plazaビルです。地上の階数が32階建てで、その30階には日本総領事館が在ります。

また、入居している主要な企業としては、電力とガスをコロラド全般に供給しているXcel Energy社、アメリカでトップのビール醸造会社のMolson Coors社などが入っています。

このビルのオーナーは金融の大手会社のJ.P. Morgan社が所有していますが、今回マサチューセッツ州の大手不動産投資信託会社のHRPT Properties Trust社が1億3500万ドルで買収する事となったと報じられています。

この売買取引は今年に入ってから全米のビル不動産取引金額では5番目に大きな取引で買収価格としてはやや高めの金額ですが、新たに類似規模のビルを建設するのに比べれば大変良い買い物であると見られています。

昨年4月から今年の3月末迄の会計年度では全米でこうした大きなビルの取引総金額は1年前の2007年4月から2008年3月迄の実績を比べると経済不調を反映して70%に低下をしており、デンバー地区のみでの同期比としては75%に低下しています。

不動産取引が大幅に減少して来ている中にあって今回のデンバーでの大口取引の成立は経済への刺激として歓迎されています。

Blockbuster店が店数を大幅削減

レンタルビデオの最大の全米チェーン店のブロックバスター店ではVHSからDVDへのメディア移行の流れに乗り切れず、またNetflixの様な新しい郵便を利用するDVDレンタルシステム、そしてオンラインでのビデオ視聴システムなどとの競合で徐々にその売り上げ低下を継続してきていましたが、今年に入ってから業績の低い店から多くのブロックバスター店が閉鎖となっています。

写真は我が家から近くに在るオローラ市内のMississippi通りとPeoria通りの交差点の一角のブロックバスター店の閉鎖された現状で、地の利の大変良い場所にありますが、時代の流れで業績が低迷したままで推移してきており、閉鎖されました。 新しいこの建物に入るクライアントが見つからないままで空になったままで数ヶ月が経過しています。

店じまいしたCircuit City店

閉鎖されたCircuit Cityのオローラ店の様子です。 家電商品の全米チェーンのCircuit Cityはその業績の悪化から全ての店を閉店して業務停止をする事となりましたが、その後3月末迄の間各店の在庫商品の特別価格販売(Going Out Business Sale)を展開して来ましたが、遂に完全閉鎖となりました。

Circuit City店はデンバー地区では14店、全米では576店舗を有して営業していましたがその全店が閉鎖されていますので、今まで各店で働いていた総従業員約3万名も解雇となっています。

デンバー地区では今までの同店の顧客はBest Buy店とUltimate Electoronics店へ流れたものと推定されていますが、その全米でトップのBest Buy店の3月で締めた売上げが発表され前年比で12%のアップとなって総額101億ドルと伸ばしましたが、利益金額の方は1億5300万ドルで、前年が1億7900万ドルでしたので、14.5%の減少となっています。

スーパーマーケットチェーンのAlbertsons店が店舗数を削減

生鮮食品や多くの食料品の販売を主体としているスーパーマーケットチェーンのアルバートソンズ店では販売業績の低い店を閉鎖してその総店舗数を昨年中旬に大幅削減しました。

写真は同店のオローラ市内のMississippi通りとPeoria通りの交差点の一角に在る店ですが、広大な駐車場が店舗前にあり建物も平屋で非常に広く、かつてはこの駐車場を買い物客の自動車で埋まっていたとは信じられない現状です。

既に閉店してから1年が経過していますが、建物は閉鎖されたままで、新たなクライアントが見つからない様です。

閉鎖されたままのパソコンショップのチェーン店CompUSA

オローラ市の中心に在るAurora City PlaceはデパートのSuper Target店を中心とした最近出来た一大ショッピングセンターで、その中の店としてCompUSAのオローラ店はかつてはパソコンショップのトップチェーン店として大変繁盛していましたが、経営不振からこの店の閉鎖の閉鎖が昨年末に公表され、その在庫の特別価格販売を行っていましたが、閉鎖となってその後同店舗のクライアントが付かないままになっています。

典型的なGhost Boxとなっていますが、このCompUSA店はこのショッピングセンターの新しく開業されたときに、それまで市街地の外れにあった店を閉じてここへ引っ越してきたのですが、販売を伸ばせないままに推移して遂に今回の全米店舗から営業不振の店の一つとして店じまいしています。

Wells Fargo銀行に吸収されたWachovia銀行

我が家の近くに在るWachovia銀行のDayton通り支店です。 テレフォンバンキングやインターネットバンキングを特長として事業展開して来たWachovia銀行はその業績不振から昨年の12月31日をもってコロラドでUS Bankと首位を争う駅馬車のマークでお馴染みのWells Fargo銀行に吸収合併されました。

その後その各支店はWachoviaの看板を継続して営業を続けて来ましたが、いよいよ近日その看板をWells Fargoに変更する事となりました。

コロラド州内には同行は33カ所の支店を持っていますが、その内の19店は全てWells Fargoの看板となって、完全にその支店として営業をする事となって、残る14店は閉鎖されて近くに在るWells Farogo銀行の支店にその預金口座を含む全てが移管されます。

これまでそのユニークな名称で全米本土のコロラドより南に在る各州にそのFinancial Centerと言う呼称で支店を展開して来ましたが、今回の名称を含む全ての業務がWells Fargoに吸収されるのはコロラド州が全米でも最初の州となります。

あとがき

The International Council of Shopping Centerの報告によりますと、2008年でのこうした閉鎖となっている店舗数は全米で6913店。前年の2007年が4603店でしたので、かなり増加していると言えそうです。

2009年に入ってもそれらが新しい店として埋まらずにいる状況だ、としています。

アメリカ政府は新オバマ大統領のもとで経済不調を乗り切る多額の予算と緊急政策がとられていますが、まだまだ先の光明が見られない状況でその効果が現れるのが待たれる状況です。

WRITER PROFILE

萩原正喜

萩原正喜

米国コロラド州から、米国のデジタル放送事情からコロラドの日常まで多岐に渡るコラムをお届けします。