今年のクリスマスデーは12月25日が金曜日となりましたのでクリスマスイブの12月24日(木)から12月27日(日)迄の連休となっています。

デンバー国際空港では年間で最も混雑する時期の一つのクリスマス前後のこの期間について、100万人を少し越える乗客を扱う事となると予測して、その対応に追われています。

デンバー空港に乗り入れている各航空会社からの予約乗客数についての推計から12月22日から28日迄の間では、その乗客総数は104万6063人となっており、昨年の同じ期間に比べて3200名の増加となるとしています。

デンバー空港での1日の平均乗客数は、14万人程なのですが、このクリスマスウィークでは特に12月23日(水)が最も混み合う日となるとしており、調査では15万8276人を扱うとしています。また、12月28日(日)がこの時期2番目の混雑日で15万6475名を扱う事となるとしています。

ちょうど日本での年末年始の帰省ラッシュとその戻りによる混雑と同じで、正月の代わりにアメリカではクリスマスとなっています。

アメリカ中東部での大雪で航空便のキャンセルや遅れで大変でしたが、デンバー空港では降雪量もそれほどではなく、たいした混乱も無く比較的スムースな年末ラッシュ期を終える事が出来そうです。

本物となるか?3D映画「Avatar」

クリスマス前の12月18日(金)映画「Avatar」が世界の106カ国で一斉に封切りされました。日本でも公開されたと思いますので既に皆さん多くの方がご承知の事と思います。

オローラ市内の映画館
私の住んでいるオローラ市内のTown Center ショッピングモールに隣接している敷地にある「Century Theatres」系のCineMark映画館の前面の全景です。 「Aurora Town Center Stadium 16」という名称で、16スクリーンを持つスタジアム形式の傾斜した観覧席を備えたシネマコンプレックススタイルの映画館となっています。

この映画は特に3D、いわゆる立体画像のバージョンが制作されており、今迄3D映画に関しては何度かいくつかの作品で市場へ現れましたが、今ひとつ観客から受け入れられず本物となっていませんが、最近特に3Dの映画が多く製作される様になって、そのチケットの売り上げでも実績を上げて来ています。

上映する映画館の方でもそろそろ本格的なビジネスとして取り組もう、と言った雰囲気になって来たところで「Avatar」のデビューとなり、今迄の3D映画がその立体性を極端に「飛び出す画面」で強調するあまり、観客が見るのに疲れてしまいとても鑑賞する雰囲気では無かったのに対して、今回の「Avatar」では控えめな立体表現で、よりその映画のストーリーを引き立たせる構成となっていると言う事です。


映画館の入り口
正面入り口の様子です。CENTURY 16のサインが目立っています。入り口のガラスドアーの右側の突き出たところがチケットの販売場で、ここでどのスクリーンで上映する映画かを選んで入場券を買うか、あらかじめ市内のBoxOfficeで購入したチケットを示して中へ入ります。内部は16の各スクリーン毎に仕切られた部屋となっていて開演時間に合わせて係員が所定のスクリーンの部屋へ観客を誘導します。また、内部にはポップコーンや飲み物などの販売コーナーなどもあります。

また、今回この「Avatar」では3Dの技術としてコロラドのボールダーの町にあるRealD社のR&D Centerで開発された技術に基ずくバージョンがいくつかのスクリーンで上映されており、現在最も有力な3D映画技術として注目されていますので、その市場での今後の反響が大変注目されています。

RealD社のR&D Centerは以前ColorLinkと言う社名でやっていたベンチャー会社ですが、ロサンゼルス郊外のBeverly Hillsに本社を持つ2003年に創業のRealD社に2007年に買収されて今日に至っており、ボールダーの事業所では約60名の技術者が現在働いています。

ColorLink社はカリフォルニアのSan Diego生まれのGary Sharpさんがコロラド大学のボールダー本校で学んだあと1995年に創業しており、1996年にNational Institute of Standard and Technologyから200万ドルの基金を受けており、その後500万ドルに同社の資金を増やしています。

同社では映画のほかに本命としてTV受像機やモニターでの3Dの応用を検討しており、既にソニー、日本ビクターの2社がその技術のライセンス契約を行っています。

RealD社の最初の3D映画は、「Chicken Little」で2005年に制作されており、その後4年間に84の作品が制作されました。 今回の「Avatar」はそのうちの1作品です。RealD社ではTVが白黒からカラーへ、そしてHDへと変化した様に、次は3Dへと移行するだろう、と言っています。


掲示板に掲示されていたAVATARのポスター
正面入り口の左側に上映している映画のポスターが掲示されています。その中の一つに「Avatar」のポスターがありました。英和辞典で調べてみますと、AVATARとは「(インドの神話で)太陽神の化身」となっています。

一方、「Avatar」の方は、10年程前に映画「Titanic」で大ヒットとなったプロデューサーJames Cameronさん、今年55才の制作によるもので、その映画会社である20世紀FOX社では、Titanicの大ヒットの後直ぐにこのAvatarの制作にかかる様に希望しましたが、Cameronさんは技術的な環境が整っておらず時期尚早としてこれ迄暖めて来ましたが、その間3D専用のカメラの制作に注力して、人間の目で見た立体感を再現するデユアルカメラシステムの撮影装置を開発しました。
さらに3D製作に必要ないろいろなスタジオの装置の準備も行って今回のAvatarの制作となったとしています。

今回の「Avatar」の総制作費用は2億3000万ドルと言われており、配給会社のNew’s Corp社傘下の20世紀FOX社とその協力会社Dune Entertainment社及びIngenious Film Partners社とがその制作費及びマーケテイング費用総計3億8000万ドルを準備したと言われています。

この金額は今迄の各ヒット映画の中でもトップランクの高額となっていて、アメリカ及びカナダでの各映画館での興行収入として2億1700万ドルを上げれば採算ベースに載ると言われています。

オローラ市内の飲食しながら観る映画館
同じオローラ市内にある「CinemaGrill」という名称の映画館です。 小さいながらも7スクリーンを備えていて、内部で映画を見ながら夕食などの食事を楽しめる様になっています。いわばレストランと映画館とが合体した様な形態です。

スポーツバーの映画館版という事ですが、どちらかに専念せい!といいたくなる様な仕組みですが、パーティー代わりにグループでの利用をする観客が多いようです。

12月18日(金)にはアメリカ、カナダの合計3457カ所の映画館で一斉に封切りされましたが、今後の興行成績が注目されます。

ところで、今迄の3D映画では奥行き方向の情報を伝達するのに画像の色の違いを利用しており、観客は赤と青のフィルターが左右に入った眼鏡をかけて観ると言う様になっていましたが、今回のRealD社の3Dでは映画館のビデオプロジェクターの投光レンズの前に偏光フィルターを挿入して投光される画像に円偏光をかけて発して特殊な銀色のスクリーンから反射してくる画像を観客は左の目が反時計回り、右の目が時計回りの偏光動作をする眼鏡を通して観ると言う仕組みとなっています。

そして、右から見える画像が全体のイメージを見ている時には左側では暗くなっていて、左から見える画像が全体のイメージを見ている時には右側では暗くなっているといった動作で、その切り替え周波数は144Hzという速度で行っています。今迄のフィルム式の映画が24コマ/秒でしたから、画面のフリッカーを無視するのに十分な速度と言えそうです。

デンバー地区には商用の映画館が全部で35カ所ありますが、そのほとんどがいわゆるシネマコンプレックスで1カ所に複数のマルチスクリーンを有しています。スクリーンの数にして全体で334スクリーンとなっています。

今回の「Avatar」の上映をしている映画館数は22カ所でスクリーン数にして38スクリーンで行われています。

映画Avatarは通常のスクリーンで上映される2Dのものと、Digital-3Dで上映されているもの、RealD 3Dで上映されるもの、そしてIMAX 3Dで上映するものと今回4つのフォーマットで配給されています。


以下にデンバー地区での各シネマコンプレックスのリストアップをしてみました。

シネマコンプレックス名 スクリーン数 Digital
Projection 3D
通常2D IMAX
3D
Denver Pavilion
Stadium
15 上映中 上映中  ― 
Colorado Center
Stadium
9 上映中 上映中  ― 
Colorado Center
IMAX
1  ―   ―  上映中
Continental Stadium 10 上映中 上映中
(Giant Screen)
 ― 
North Field 18 上映中 上映中
(Colorado Largest
Screen)
 ― 
Aurora Town Center
Stadium
16 上映中
(RealD 3D)
上映中  ― 
Cinebarre 9  ―  上映中  ― 
Brighton Pavilion
Stadium
12  ―  上映中  ― 
Colony Square
Stadium
12 上映中 上映中  ― 
Olde Town 14 上映中 上映中  ― 
Southglenn Stadium 14 上映中
(Sony 4k/RealD 3D)
 ―   ― 
Greenwood Plaza
Stadium
12 上映中 上映中  ― 
Catle Rock Stadium 12 上映中 上映中  ― 
Chinese Theater 16 上映中 上映中  ― 
Southland Stadium 16 上映中 上映中  ― 
Meadow Stadium 12  ―  上映中  ― 
Movie Tavern 9 上映中  ―   ― 
20 Mile Village 10  ―  上映中  ― 
Bowles Crossing
Stadium
12 上映中 上映中  ― 
River Point Stadium 14 上映中 上映中  ― 
Colorado Mills
Stadium
16 上映中
(Digital Big Screen)
上映中  ― 
Century/Belmar
in Lakewood
16 上映中
(RealD 3D)
上映中  ― 

上表の通り、3Dでないバージョンと3Dのバージョンとを両方上映しているところが多く、3Dの場合は通常の入場料金のほかに2ドルの「3D Experience Surcharge」と称して追加料金を徴収しており、この料金はそのうち50セントがRealD社へ入り、残りがこの映画「Avatar」の制作会社へ入る事となっています。

今後家庭でのTVやパソコンモニターなどでの3Dビデオの商品化に興味が持たれますが、2010年は「3D-TV」の年となるでしょうか?

信仰にあまり熱心でない方のコロラド州

調査会社のPew Research Centerが行った「全米50州に於ける宗教に対する重要性の認識、信仰に対する熱心さについての調査」によると、アメリカではミシシッピー州の人々が最も多く宗教が大切で信仰に熱心な州となっているとしています。

ミシシッピーでは82%の人々が自分の生活において宗教は重要な部分を占めているとしており、60%の人々が毎週1回は教会へ行っており、77%の人々が毎日祈りを捧げているとしています。そして、91%の人は神を絶対的なものとして信じていると言う事です。

この様な信仰心の強い人々は特に南部の州に多く、調査結果ではアラバマ州、アーカンソー州、ルイジアナ州、テネシー州、サウスカロライナ州はいずれも70 %以上を占めており、ノースカロライナ州は7位で69%、ジョージア州は8位で68%、ケンタッキー州が9位で67%、そしてテキサス州が10位で67%となっています。

一方、ニューハンプシャー州とバーモント州は36%で最も少なく、アラスカ州は37%でそれに続いています。そして、コロラド州は50州中41位の44%となっており、全米での平均値は56%となっています。

調査ではコロラド州では29%の人が毎週教会へ行っており、49%の人々が一日1回はお祈りを捧げているとしています。しかしながら、63%の人々は神を絶対的なものとして信じているとしており、ちなみに神を信じているとする人々の全米平均値は71%となっています。

調査の結果として、コロラド州は信仰に熱心な人の率は全米でも低い方に属していますが、それでも神を信じている人々の比率は6割以上となっており、アメリカ全体の多くの人々は神の存在を信じているのだ、と言う事が分かります。

昔も今も移民の人々で成り立っているアメリカですので、住み慣れた故国を後にして移り住んだ国で神を信じて生きて行くという気持ちは理解出来る様な気がします。

あとがき

クリスマスは12月25日にイエス キリストが誕生したのを祝う日となっていますが、望月ひろみさんの資料「アメリカの主要行事」によりますと、歴史的にはこの日にキリストが誕生したという確証は残っていないと言う事で、キリストの降誕を祝う様になったのはキリストの死後300年以上も経ってからの事で、12月に定められた理由は、当時勢力の強かったローマ人が太陽神の誕生を祝う祭事を12月に行っており、キリスト教会としてはそれに対抗する為に民衆の目をそらせる為に同じ12月としたとされています。

すなわち、対抗する強い勢力の宗教と競合する為に12月が選ばれた、と言う事で、キリストの誕生が12月25日に公式に決められたのは西暦337年で、この年にはローマ皇帝Constantineがキリスト教の洗礼を受けており、皇帝の統治権力とキリスト教会とが一体となった年といえる、としています。

また、現在行われているクリスマスのいろいろな習慣はその頃から行われていたわけではなく、各地で12月にいろいろな行事が行われていたのが次第にクリスマスの名の下に行われる様になった、と言う事です。

いずれにしても、クリスマスはアメリカでは一年の締めくくりの最大祭事であり、日本が正月を祝うのに匹敵する年中行事であることには年月を経ても変わりありません。

この「コロラド紀行」(その48)が2009年最後の皆さんへお届け出来る号となると思いますが、2010年は景気回復とともに皆さんの元気なご活躍の年となる事をコロラドより祈っております。どうぞ良いお年をお迎え下さい。

本年はご覧頂き大変有り難うございました。また、2010年も相変わらず皆さんのご高覧の程お願い致します。

WRITER PROFILE

萩原正喜

萩原正喜

米国コロラド州から、米国のデジタル放送事情からコロラドの日常まで多岐に渡るコラムをお届けします。