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[Shureマイキングセミナー]Vol.01 今さら聞けない、サウンド・収録の基礎の基礎

2013-07-02 掲載

去る6月6日、「Shureマイキングセミナー Vol.1 マリモレコーズ江夏正晃氏presents! 〜今さら聞けない、サウンド・収録の基礎の基礎」が東京・半蔵門にて開催された。シュア・ジャパン・リミテッドとヒビノインターサウンド株式会社が主催したこのセミナーでは、マイクの種類と特徴のわかりやすい解説や、音質や音量がどのように異なるのかといった実演が行われ、教科書などでは得られない体験ができた。

130614_shure_enatsu.jpg 講師を務めた株式会社マリモレコーズ代表取締役 江夏正晃氏

今回のセミナー講師は、株式会社マリモレコーズの代表取締役、江夏正晃氏。トラックメーカー、DJ、音楽家として活動する江夏氏は、楽曲制作はもちろんのこと、レコーディング、収録、ミックス、マスタリングまで、トータルプロデュースを得意とするサウンドのプロだ。また、関西学院大学の非常勤講師、IMI/グローバル映像大学、デジタルサウンド講座の専任講師も勤めており、わかりやすく詳しい解説には定評がある。今回は「基礎の基礎」をテーマに、軽快なトークで2時間半におよぶ講義が行われた。

江夏氏:マイクの基本的構造は長い間大きく変わっていませんが、マイクの性能やレコーダーなどサウンドの機器が進歩し、それにつれて収録方法や後処理も変貌を遂げています。音楽で使うマイクと収録に使うマイクは異なりますが、共通点もあります。音楽家から見たマイキング、今までに聞いたことのないマイキングについて解説していきたいと思います。

適度な音質、音量で収録することはとても大切ですが、最近はワンマンオペレーションすることが増え、音声収録に気を遣うことが難しくなってきているのが現状です。そうしたことを踏まえて音をいかにキャッチするか。実際にここにある色々なマイクを実際に使って、その音を聞きながら進めていきたいと思います。

ピンマイク、ガンマイク、音声収録用マイクなど違いや使い方について使い方や音質の差、音とマイクの関係などを説明していきましょう。

マイクの種類と特徴

Shure_miking01_01.jpg 今回のセミナーで使用したマイクロホン

江夏氏:まず、音は振動です。それが鼓膜に届いて人は音を知覚します。マイクも同じように、人間の鼓膜に相当する振動版に音声が届くことで、それを電気信号に変えるものです。

マイクの種類には、ダイナミックマイク、コンデンサーマイク、リボンマイクなど沢山ありますが、ダイナミックマイクは最も普及したマイクの基本ともいえるものなので、最初にダイナミックについてお話しましょう。

ダイナミックマイクは振動板が音声を受けて振動し、コイルが動くことによって音声信号を得ます。機構上丈夫なので、インタビューやボーカルなど多くの場面で使用されているマイクです。ただ、「堅牢だが、コンデンサーマイクに比べると高域が苦手」という側面があります。一方、コンデンサーマイクは以前は大変高価で扱いにくいものでしたが、最近では価格も安くなり入手も容易になってきています。

コンデンサーマイクは非常に繊細で収録する音声も微細な音から高域までキャッチできますが、反面ハンドリングノイズなどを拾いやすいので、サスペンションなどで保持することが必要な場合が多いです。電源も必要で、一般に48Vファンタム電源を利用して供給します。なお、コンデンサーマイクの仲間で、バックエレクトレットコンデンサーマイクというのがあります。構造が簡単で安価なものが多く、電源はファンタムよりも小さい電源「プラグインパワー」と呼ばれるカメラなどについている電源で駆動させます。

あまり一般的ではありませんが、リボンマイクは最近脚光を浴びています。吹かれに弱いなど扱いにくかったリボンマイクですが、近年は新たな素材や技術を活用し欠点が克服された製品が各社から発売されています。最近は音楽のレコーディングに使用されることが多く、コンデンサーマイクとは違った個性があり、いろいろな現場で見かけるようになりました。

セミナーでは江夏氏が「コンデンサーマイクやリボンマイクも以前に比べて丈夫になり、吹かれにも強くなって新たな使い方もできる」と解説。江夏氏はリボンマイクKSM313を最近使用する機会があり、その温かみのある音と、過大な音圧にも負けないマージンの広さに驚いたそうである。実際に音の比較を行なっても他のダイナミックマイクやコンデンサーマイクとは異なるソフトな音が印象的だった。江夏氏は今後、実際の現場でKSM313を和太鼓などの高い音圧の収音に使って行く予定との事だった。

Shure_miking01_ksm313.jpg リボンマイク KSM313

音の違いを聞き比べる

Shure_miking01_04.jpg インタビューマイクとして非常に良く使われるSM63

江夏氏:まず、ボーカルマイクとしてワールドスタンダードといわれるSM58と楽器収録用SM57、インタビューマイクSM63、ピンマイクを実際に使って音質比較をしてみましょう。

SM58はとSM57は世界でもっとも使われている不朽の名作となっており、世界のスタンダードとなっているマイクです。SM63はもともとは広い用途で使われるように設計されていましたが、その性質から今ではインタビューマイクの定番となりました。実はこのSM63は、他のマイクに比べて感度が低く設計されているのです。それにはちゃんと理由があって、音声がきちんと収録できる距離まで持ってくれば周囲の雑音が他のマイクに比べて小さくなるという特徴があります。つまり雑踏の中などで音声収録しても目的の音声を明瞭に収録できるのです。

それではSM58を使ってみましょう。非常に明瞭な音声で僕なんかは58の音だっていうなんか安心感のある音質ですね。これを口元に近づけていくと低音の強調された重厚な感じの音質になります。これは近接効果といって、マイク特有の性質となっています。

SM57はどうでしょう。SM58とは違った音質ですね。これもやはりマイクの距離で音質は変わってきます。マイクによって音質にずいぶん差があるのがお分かりいただけると思います。

さて、インタビューマイクとして定番のSM63はどうでしょうか。ほかのマイクと違って40〜50cm離すとかなり音声が小さいですよね。これがSM63の大きな特徴で、近くの音は明瞭に、離れた音は小さく、雑踏のなかでも目的の音がきちんと収録できるのです。SM63は全指向性(無指向性)マイクですが、方向によって音質は異なります。ほかのマイクでもそうですが、指向性の範囲内でもマイクを向ける角度によって音質が変化することがあるので要注意です。

このようにマイクごとの特色や性質を知ることで、その場その場にあったマイク選びをしてください。

セミナーで江夏氏が「これは58の音だ!っていう安心感がある」と語っていたが、やはり定番といわれるだけのことはあるマイクならではの感覚だ。SM57はSM58ライクの音質ながらもう少しすっきり感がある印象で、自分もその兄弟分のBETA57Aを愛用している。

そのほかにも、江夏氏からは「漫才とかに使われているリボンマイクはダミーで、ほとんどがピンマイク収録」という話も紹介された。今後はマイク映りという面でも多様なマイクが登場してきそうだ。

マイクと上手に付き合うためには

Shure_miking01_05.jpg ガンマイクを使用しての指向性実験

江夏氏:近接効果、吹かれ、風などの問題は、ダイナミック、コンデンサー、リボンといったマイクの種類に関わらず発生します。風の吹かれノイズを防ぐには、風防を付ける、ファーを付ける、ローカットする、という対策によってだいぶノイズを防ぐことができますが、こうした余計なものを付けると音質は変化するので、必要ない時には外すことも必要になります。屋内など吹かれノイズの心配のない場合はなるべく使わないようにしましょう。

狙った音をしっかりキャッチするには、まず話している人にマイクの指向性を向けることが基本です。指向性が鋭いガンマイクは、きちんと狙った音だけをとらえるには向いていますが、たとえば話している人の口にぴったりと照準を合わせることができないと逆効果になりかねません。必ずヘッドホンなどで、モニターしながら集音することが大切です。ただ、熟練を要するので必然的に扱いは難しくなる傾向にあります。

ガンマイクにも種類があり指向性や音質の違いもあるので、状況に応じた使い分けが必要になるでしょう。

セミナーでは実際にガンマイクを使用した指向性実験が行われた。口元までの距離や角度により収音レベルや音色が劇的に変わることが非常に興味深かった。

「良い音を収録する」とは何か?

セミナーでは江夏氏の実演だけでなく、マイキングの違いによって音がどのように変化するか、マリモレコーズのスタッフと予め撮影した動画を上映しながらの解説も行われた。

江夏氏:さて、良い音を収録するとは何でしょう。ダイナミックレンジを生かした収録、適正なレベル範囲で可能な限り大きくとることです。高い音から低い音までバランスよく収録することが肝心です。狙った音をしっかり収録するにはマイキングが重要ですが、今回はピンマイク、インタビューマイクを使って実際に収録した動画で説明しましょう。

まずは、ピンマイクです。付ける位置での音質の差がどのようにでるのか、WL183を使って15cmと30cm、しゃべっている方向と同じ、反対側でテストしたものです。今回使用したピンマイクは無指向性ですが、映像をみてのとおり、口との距離、方向によって音質、音量が大きく変化することがお分かりいただけたと思います。演者がどちらの方向に向かってしゃべるかわからないときは、体のセンタ-にピンマイクをつけるようにしましょう。ピンマイクの種類にもよりますが、口から15cm~20cm程度目安として、吹かれや周りのノイズを確認しながら慎重につけるようにしてください。

ラベリアマイクロホンWL183を使用したマイクテスト
Shure_miking01_mictest15.jpg口元から15cmの位置での収音
Shure_miking01_mictest30.jpg口元から30cmの位置での収音

Shure_miking01_mictesthantai.jpg 顔の向きと反対に配置した場合の収音

江夏氏:次はガンマイクで音声を収録したビデオです。VP83とDSLRカメラ内蔵マイクの比較です。ガンマイクは狙った音を収録する目的で作られているので、スイートスポットに入れると明確な音声が得られます。それにくらべて内蔵マイクはボディの操作音、周りの雑音なども拾ってしまいますね。これはカメラマイクが悪いというより、無指向性マイクが本体に内蔵されていることに起因します。内蔵マイクを使った収録をする時にはそういったことを知っておくことが大切です。

デジタルカメラの内蔵マイクからの収音とDSLR用小型ガンマイクVP83での収音の違い
Shure_miking01_mictest_vp83fon.jpgVP83Fを使用して収音
Shure_miking01_mictest_vp83foff.jpgデジタルカメラの内蔵マイクによる収音

これらの実演ビデオを観ることで、マイクのタイプや装着方法、角度、距離によって相当音色が変わることを実感。使用環境によって適切なマイクを選択すること、最適なマイキングを行うことの重要性を理解できた。特に新製品の小型ガンマイクVP83はデジタル一眼レフカメラで動画を撮影するシチュエーションが増えている近年、非常に重宝する製品ではないだろうか?江夏氏もVP83のマイク性能やショックマウント性能などを高く評価しており、発売が待ち遠しい一品だ。

Shure_miking01_vp83.jpg VP83 カメラマウント用小型ガンマイク(画像上:VP83Fはフラッシュメモリーによるレコーディング機能も搭載)。近日発売予定

メーターと仲良くなろう

Shure_miking01_03.jpg 収録時の音声は密閉型のヘッドホンやイヤホンを使ってモニタリングすることが必須

江夏氏:ビデオカメラについている音声レベルメーターは具体的な数値を示してあるものは少ないので、適正な音声の収録レベルがどの程度なのが、カメラごとに知っておくことが必要です。

映像編集ソフトなどを利用して、収録した音声レベルとカメラのメーターとの関係を知ることが重要です。どのくらいの入力で音が歪み出すのか、イヤホンやヘッドホンでモニタリングして、適正レベルの調整をするクセをつけることで良い音声収録につながると思うのです。

実際にカメラのレベルメーターのクリップは少し余裕、マージンを持って設計してあることが多く、実際にはクリップランプが点灯しても、データ上はクリップしていないことが多いです。ちょっとしたクリップランプを恐れるのではなく、連続してクリップランプが点灯し、音が実際に歪みだすポイントを知っておけば、しっかりとした音量感を持った音声収録ができるようになります。

しっかりと音量感をもたせた音声を編集時に下げることは、同時にノイズも下げることになるので、結果的に聞きやすくなります。そういった収録をするためにはモニターは絶対に必要で、ヘッドホン、イヤホンでしっかりモニターしながら収録するクセをつけてください。遮蔽性の高いヘッドホンやイヤホンがこういった現場に適していることは言うまでもありません。

また、なるべく広い周波数帯を意識して収録しておくことも心がけてください。ローカットなどは後処理でも行えるので、さほど低域のノイズを感じない現場などではローカットなどは無理にしないことを勧めます。

失敗しない音声収録とは

江夏氏:失敗しない音声収録とはずばり、バックアップをとることです。断線や接触不良などに備えて、カメラへの収録以外に記録しておきましょう。最近はミキサーとレコーダーが一体になった製品や、マイクとレコーダーが一体になった製品がありますので、こうした機材を利用するのが便利ですね。

「どんなマイクをどんなシチュエーションでどう使うか」は、「どんなカメラをどんなレンズでどういう照明で」と同じくらい気を配ってほしいものです。音声収録は映像収録と同じくらい重要だと考えています。そして、現場できちんと収録した音声は後処理も楽になります。マイクの高い安いではなく現場に適した使い方が重要です。すなわち、音源に対して的確にマイクを向けることです。内蔵マイクでも、使い方や条件が合えばよい音は収録できます。そして、ガンマイクやピンマイクを上手に使いこなすことで更に良い収録ができるでしょう。

音声収録は奥が深いですが、今回のセミナーを第一歩に色々工夫や試行錯誤をしていただきたいと思います。映像と同様音声にも気を配っていただきたいと思います。

Shure_miking01_06.jpg 会場の参加者からも積極的な質問が飛び交う

今回のセミナーはマイクの基礎知識を中心に、江夏氏の実際の現場で行なっている様々なノウハウが詰まった非常に有意義な内容であった。セミナーの中でかなりの部分をマイクの聴き比べや収音実験に費やしていたため、時間の限られた実際の現場では試すことのできない同一空間で異なる機材による音の変化を体感できたことはセミナーに参加した方々も興味深かったのではないだろうか?

今後もShureのマイキングセミナーは順次開催予定なので、興味のある方は是非とも自分の耳で聞いて体験していただきたい。

「Shureマイキングセミナー」開催予定

7月26日:Shureマイキングセミナー vol.2
フィールド・レコーディスト土方裕雄氏presents! ~ENG取材の収音テクニック~
詳しくはこちら

9月6日(予定):フォーリーサウンド(映画やテレビの効果音)制作講座(講師:染谷和孝氏)
今後のセミナーに関しては詳細日程が決まり次第、案内ページにて参加申込受付を開始する予定。


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[ Writer : オーディオ稲田出 ]
[ DATE : 2013-07-02 ]
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