JVCケンウッドにびっくり!

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昨年のInterBEEで結構びっくりしたのがJVCの出展。JVCはここ最近この手のプロ機材系展示会にはさっぱりで、折角の隠れた名機と一部で言われているGY-HMシリーズがユーザーに全くプロモーションされていないので少々がっかりしていたのだ。しかし昨年のInterBEEでは4K収録することが出来る小型カメラをメインに出し本当に嬉しく思っている。今回はこの4Kカメラの話題では無く、既に販売されてはいるが目立たない業務用3Dカメラにフォーカスを当ててみた。

GY-HMZ1

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昨年CP+やNABでも展示され業務機としてのコストパフォーマンスに優れた3DカメラであるGY-HMZ1、2眼1ボディ式のハンディカムとしては既に民生機でGS-TD1と言う機種があるが、本機はTD1をベースにキャノン入力が出来るキャリングハンドル兼マイクホルダーを付加したモデルという認識で良い。

「なんだ、特筆するブラッシュアップも無いのか?」…と思われるが、逆に民生機で作られているとは言えその心臓部には新世代映像エンジン「FALCONBRID(ファルコンブリッド)」が搭載されているのだ。このエンジンは民生機用に開発された訳ではなく、純然たる次世代エンジンとして開発されたと聞く。この基本エンジンだけで3Dから4Kまでカバー出来るとの事。つまり民生機として出ているTD1が順番的にはおかしいと考えて良いかもしれない。

JVC業務用カメラと言えばCCDをかたくなに使用しているイメージが大きく、そう言う意味でもCMOSを使っている本機は若干異質かも知れないが、その分CMOSの特性を上手く利用し新設計のレンズと共にF1.2と言う明るさを確保出来ている。他メーカーの同クラスハンドヘルド3Dカメラが大体F1.8程度であることから、その明るさは想像出来るだろう。実際に夜間に某所にてテストを行ったが、この手のカメラとしては十分過ぎるパフォーマンスを見せてもらえた。

使用感

収録方式も独自規格であるMPEG-4 MVC/H.264と情報の共有が簡単なMPEG-4 AVCHD/H.264(サイド・バイ・サイド方式)の2種類のフォーマットを積んでいる。特にAVCHD記録ならファイルをダイレクトにYouTubeにアップすることにより簡単に3D映像の共有が出来る。例えばロケハンでGY-HMZ1を使用しそのまま素材を制限公開(又は非公開)でYouTubeにアップすることにより、3Dモニターが無い環境でもロケハンとしての雰囲気を掴む事ができる。それを元にロケの進行台本等を速やかに作成できれば全体的な3D制作時間の短縮やコスト削減にも繋がる可能性が出てくるのではないだろうか。

今や標準装備が当たり前となった裸眼3Dモニターは、やや視線をLCDの30cm位奥に向ける感じがシックリと来る。もちろん、液晶面に対して正対するのは基本だろう。光学5倍ズームは若干寄りが足らない感じもあるが、その分画質や破綻を防ぐ方向に振ったように感じた。

3D視差調整は基本オートで問題ないだろう。無茶な距離や扱い方をしても自然に見えるようにオートで動く様は中々面白く、これにより編集時の使い部分が解りやすく感じた。もちろんマニュアルでの視差調整も出来るが、調整ポイントはメートル単位ではなく±での数字なので、これは慣れるしかない(自分的には+1程度が破綻少なく立体視を感じる事が出来た)。その他のフォーカスやアイリス、シャッター速度もマニュアル操作ができるが、特に照度的に厳しい現場では無い限りオートで問題ない。一つだけ挙げるならシャッターはマニュアル運用(1/60・1/100)の方がすっきりするかも知れない。

サンプル3D

今回はサンプルとして2種類を用意してみたが、MTBを使った映像は基本的にフルオートで手ぶれ補正は通常モードを使っている。動きの速い被写体に対してどの位破綻してしまうのか?をメインに考えていたのだが特に気になるほどの物ではなく、雑然とした林の感じと相まって遠景のワイドショットでもかなりの立体感が得られたと思っている。

もう一つは低照度(夜間)での噴水等のモニュメントを撮ってみた。手ぶれ補正のモードはアクティブモードを使っている。本来なら三脚を使ってしっかり撮りたい所だが、諸々の制約があり三脚が使えないために手持ちで撮影。思った以上に手ぶれ補正の効きが良いために少々動きすぎてしまったが、出来ればカメラスタビライザーと組み合わせたい所だ。ちなみにカメラ自体のホールドは本体グリップはもとよりどこを握ってもしっかりホールドすることが出来る。

注意点?

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残念な事に+48Vのファンタム給電は無い。次期モデルでは是非改善を!

GY-HMZ1には民生機とは異なり外見上でも特徴あるマイクホルダーがあるが、ここでチョット注意が必要だ。このグリップ兼マイクホルダー。考え方としてはあくまでも本体のマイク入力(ミニステレオピン)にキャノン入力をスプリットさせている物なので、+48Vのファンタム給電には対応していない。このためガンマイク等を取り付けるときにはファンタム不要のダイナミックマイク以外を選ばなければならない(メーカーHPにはアツデンSGM-100が掲載されている)。

総評

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左:SONY HXR-NX3D1J 右:JVC GY-HMZ1。大きさの違いは太く短くか、薄く長くか?※GY-HMZ1のバッテリーは内蔵式

JVCと言うメーカーは良い物を作るのに何故か宣伝が苦手なようである(2012年はこの部分を是非頑張って頂きたいです)。今回のカメラも業務用という位置づけでしかも3Dカメラだが、一般的な売価で20万円以下のプライスで買えてしまう。使用感や性能に致命的な問題があるならともかくGY-HMシリーズ以降の製品を使ってみてその様なことは全く無かった。実際知人のカメラマンに実機を使ってみてもらうと「えっ、こんな良いカメラが発売されてたの?」と言う回答を得ることが多い。確かにVHS時代の後期にサービス等での諸問題があったのも事実かも知れないが、それ以降食わず嫌いで来てしまっているユーザーも多い。社名変更して心機一転、今年は是非プロモーションをしっかりして、良いカメラをもっと製品化して欲しく思う。

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。