マンフロットの動きに注目!

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ここ近年マンフロットは飛躍的に色々な事にチャレンジをしている。最近ではツインブリッジのビデオヘッドである504HDや509HDという新デザインの三脚を市場に投入させている。この三脚も最初はチョット癖があるが、慣らし運転が終われば抜群のパフォーマンスを出してくれる。そして今回はRIGシステムとしてSYMPLAシリーズが登場した。この製品は4月にラスベガスで開催されたNABshowのマンフロットブースに出展されていた。今までのカメラサポートメーカーと違う作りに、ガジェット好きの筆者には実に興味深く感じる。デモ機をお借りすることが出来たのでここで紹介しよう。

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頑丈、しかも3方向に微調整が出来るカメラマウント

魅惑のRIGシステムとは?

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マットボックスはフラップの代わりにジャバラ部分を動かす。中々使い勝手はよい

三脚メーカー製だからといって特に突飛な作りはしていない。NABの会場ではそのメーカー専用のRIGシステムがあったが、SYMPLAは汎用規格のロッドを組み合わせて使うオーソドックスなスタイル。しかしその一つ一つのパーツが実に合理的に良くできている。

まずはカメラをマウントするベース部分。この部分のパーツが他メーカーでは結構簡単に作られていて細かいセッティングが出来ない物が多いが、SYMPLAはここの部分だけでも前後左右高低かなり自由度が高くセッティングが出来る。しかも特に器具を使うことなくダイヤルで微調整可能だ。そのベースマウントは他の三脚システムと共通プレート(今回は509HD)の為にRIGから取り外してカメラだけ三脚に取り付けると言う事も問題なく出来る。もちろん従来の様にRIGベースにプレートを付けて三脚へのアクセスも可能だ。この時に一番感じることが出来るのはそのベースの剛性感。流石にこの辺の作りは良い。

またマンフロットの三脚と組み合わせるとそのデザインの一貫性も良い感じになる。ロッド自体の大きさやロッド間の距離は一般的なサイズなので既にフォローフォーカス等を持っているならシステムに組み込む事も可能だ。その他の接合部分のベースは基本的に同じ形のもを使用している。各々に1/4inchと3/8inchネジが同じ位置に開けられているので例えばマットボックスとハンドルを同時にセットすることも可能になる。つまり同じ撮影セットで使うなら、これらを効率よく合体することによりコンパクト化することも出来る。

セッティング/運用方法

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左:ショルダーセットはオフセット運用できるためにDSLR系ならモニター部分にフード (スコープ)を付ける事により、ピンを掴みやすく出来る
右:EVFを付ければ更にコンパクトに運用が出来る。その際にハンドルを後ろに水平方向にセットすることにより三脚での運用が更に良くなる
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SYMPLAデラックスリモコン。やや高価だが機能を簡易化したフォーカスリモコンもあるので出来ればどちらかをシステムの組み込みたい

SYMPLAシステムはパーツ単体で揃える事も出来るが、在る程度のセットでパッケージをしてあるセットもある。一つはマットボックスを含んだ三脚での運用をメインにした物と肩パットとハンドルをセットにした、ショルダーでの運用の2セットがある。今回はこの二つをお借りしているわけだが、実際購入するならこの2セットを揃える必要はない。かなりのパーツを共有している為に複数のガジェットを共有したいなら別だが、単純に1台のカメラを運用するならショルダーセットにマットボックスを単品で購入して組み合わせるのが得策だ。それと同時にカウンターバランスを付加することでRIG全体の前後バランスが良くなる。また全てのマウントやブラケットは特殊工具を使うことなく右脇のレバーで調整が出来る。勿論その角度は自由に調節できるのでカメラ本体が当たって廻せないと言う事はない。

このシステムで一番疑問に思う事は、この手のRIGには必須のフォローフォーカスがシステムに組み込まれていないという事だ。最初は単純に他社メーカー製品を組み込めという事かと思ったが、オプションで電子フォローフォーカスが用意されている。写真はチョット見づらいがこれはDSLRに特化されたフォーカスコントローラーで、見かけは通常のズームリモコンに見えるが、レバー部分でフォーカスをコントロールする。更に今回お借りしたリモコンはその最上位機種であり、フォーカスは元より、アイリス・ISO・WB(ケルビンでも変更可能)等が手元のレバーで出来る。

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左:標準ではオフセットされているのでこの様なスタイル
右:EVFとリモコンレバーを組み合わせる事により完全にENGスタイルで出来る

ハンディカメラでの運用

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最後にハンディカメラとの相性を試してみた。通常この手のRIGはDSLR等との組み合わせが一般だが、最近のハンディ業務機と組み合わせるのもアリだ。幾らハンディカメラと言えども業務機程度の大きさだと流石に片手で長時間支えるのは辛い。簡単にでもショルダーで担げるなら加重も分散するので明らかにハンディで動くときに画が安定する。ならENGカメラを使えば?と言う話もあるがやはり絶対的な大きさと手振れ防止は重要なファクターになる。しかし一般的なRIGではこれらを載せるには少々工夫が要る上に上手く運用できるとは限らない。

しかしSYMPLAなら前記したとおりベースプレートがマンフロットの三脚と同じ為に、三脚から外して直ぐにRIGに載せ替える事も出来る。更に剛性が高いSYMPLAならPMW-200等のカメラまで十分に対応が出来る。この時のポイントはズームリモコンをハンドルに仕込む事だろう。通常この手のズームリモコンはパン棒に付けるのでグリップ等の太さの物には装着が難しいが、このハンドルキットにはこの様なリモコンを付けるための延長ハンドルが標準で用意されている。勿論そのパーツもアルミ削り出しなので全く操作に不満はない。

総評

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先日の「Canon Logで撮影するCM制作実践セミナー」ではXF305を載せ、約4時間のセミナーをこのスタイルで撮る事が出来た。

流石に三脚メーカーが作ったRIGだけあって、セッティングもその運用も迷うことなく使用する事が出来る。何よりもRIGを組むと三脚にアクセスするときに一苦労する物だが、同じメーカー同士で部品を共有することによりその部分が改善されている。元々RIGの正しい使い方はシネマ等で仕事をしている方がフィルターワーク等の恩恵を受けるのは解っているが、その一方で対クライアントという意味で多少の演出が必要な部分でもある。単純にDSLRや業務用ハンディカメラを使うより、これらのガジェットを付ける事により多少なりとも見栄えも良い。

まぁこの様な現場は余りないが、少なくともカメラを扱う際にSYMPLAを組み合わせる事によって肉体的な負担が減るならドンドン導入すべきだ。そう言う意味でも、見た目よりコストパフォーマンスが高いSYMPLAは中々お勧めのRIGだと言える。出来れば筆者も予算の工面をして入手しようと算段中である。

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。