カラグレ、カラコレ

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DaVinci Resolveは、映像コンテンツの色調整に特化したツールです。映像の色なんて現場できちんとホワイトバランスを取っていれば、ポスト作業での調整なんて要らないはずである。そう考えている方も少なくないでしょう。理論的にはその通りです。しかし、現実に現場で起こっているいろんな事情のために、そうも言っていられない事情があります。現場では時間に追われることが多いので、色調製が不完全な場合が少なくありません。こういったケースはどちらかといえば、ネガティブなケースといえます。不具合を抱えている映像を後処理で修正する、そんな意味合いを持ちます。このような目的の工程をカラーコレクションと呼びます。

これに対して、現場では丹念にカメラの色調製や照明技術とを合わせて、満足のいく結果で撮影できたとしましょう。こんなケースでもDaVinci Resolveのようなツールでは、さらに一歩も二歩も質感を高める効果を加えていけるのです。これをカラーグレーディングと呼びます。例えて言うならば、女性がメイクをするのに似ています。整った顔立ちで肌もきれいな方でも、ここぞという時にはばっちりメイクをするのではないでしょうか。そのままでも十分であっても、さらにもっと良く見せたい。そんなとどまることのない願望があるのではないかと、経験の無い男の憶測ではあります。映像として素材が良くても、さらにグレード感を高めたり、演出意図をより引き立たせるために色の加工をする、これが一歩進んだカラーツールの使い方ではないでしょうか。

今回はDaVinci Resolveの中心の機能、COLORメニューの解説です。前もって素材はタイムラインに並んでいるところからスタートしますので、もしもクリップの取り込みが完全でなければ、第1回目を参考に見直してみてください。取り込みに関しては、DaVinci Resolveではさまざまなシチュエーションを想定したコンフォーム機能を実装しています。編集作業との連携などの解説は後の回で詳しく解説予定ですので、今のところは目的のクリップを手動でタイムラインに並べる方法で試してみてください。

COLORメニュー

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今回は4番目のメニューCOLORに集中して解説します。その中でも操作画面左下の二つのブロックが中心です。PRIMARYのタブが文字通りいわゆるプライマリ調整のパートです。一般的に画面全体に対して適用するのがプライマリー調整です。DaVinci Resolveではこの部分にトランスフォームパラメータのPan、Tilt、Zoom、Rotateが含まれています。

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これに対してその右側にあるタブが集まったグループがセカンダリ調整のパートになります。明確にSECONDARYというタブ名称にはなっていませんが、この中の機能を使うことで画面の中の限定した部分に対してだけ調整を適用することができます。それを最も反映しているのがQUALIFIERタブです。QUALIFIERを辞書で調べると、限定するという意味を持っています。まさにどの色域だけを限定して調整するかを、設定するための機能です。

まずはプライマリパートから詳しく見て行きましょう。PRIMARYタブの中のLift、Gamma、GainでRGBのバランスを調整できますが、それぞれは暗部、中間部、明部と明るさによって適用される対象が分かれています。黒髪や黒い瞳の部分、照明があたっていない暗い影の部分などのルミナンス成分の低い部分がLiftの対象エリアです。Gammaは中間部ですから、日本人のような肌色を中心にRGBのバランスを調整する時にはこの部分を使うことになります。

Gainは明るい部分で、照明が豊富にあたっているところや完全にホワイトに映っている部分のバランスを調整する時に使います。RGBに加えてグレーのバーはそれぞれの明るさ成分だけ調整する時に使います。その下にあるLum Gain、Lum Gamma、Lum Liftと連動しています。Lum MixはそれぞれのLumパラメータのマスターコントロールで、それぞれ3つ合わせた調整を0%から100%の範囲で増減できます。Offsetはプリンタライトと表現する方がフィルムからのエンジニアの方には理解しやすいかもしれません。テレシネ装置の光源のバランスを調整するのをシミュレートできます。

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各カットに対して色調製が少しでも加えられた場合には、タイムラインのサムネイルの中にレインボーのインジケータが現れます。これにより、なんらかの色の設定が加えられていることが判断できます。そのカットに対する調整をすべてクリアするためには、SessionメニューからBase Memory Resetを選択します。キーボードショートカットはCommand+Homeです。これによりサムネイルの中のレインボーインジケータが無くなります。

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カラーグレーディン作業中にはカットを行ったり来たりすることになるでしょう。各カットに切り替わった瞬間の色設定は、自動的にオリジナルメモリに記憶されています。たとえば、1カット目に戻ってきた後に、さらに色の調整を1カット目に加えていったとします。しかし、気が変わって1カット目に切り替えた時の状態に戻したくなったときには、このオリジナルメモリを呼び出すことができます。この時はSessionメニューからOriginal Memoryを選択します。オリジナルメモリは全くの素の状態ではなくて、以前そのカットに加えていた設定を記憶しているメモリです。

次に部分的に限定したエリアに対してだけ調整するためのセカンダリ機能に移ります。CURVESタブの中のサブタブCURVESは、ルミナンスとRGBそれぞれのカーブをポイントを加えることで調整できます。グラフ内をマウスでクリックすると新しくポイントが追加されます。ポイントは複数追加することもできますし、削除することもできます。その場合は消したいポイントを右クリックします。

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各トーンカーブの下にある左右のバーは適用量の調整で右端が100%で中央付近がが0%です。さらに左へ下げると-100%まで下がって効果が反転します。カーブで調整してもこのバーを0%まで絞ると効果はなくなります。見落としがちなのがグラフの右側にあるスライダです。これはYSFXと呼ばれるパラメータで、一番下まで下げると完全にネガティブになります。次にCLIPサブタブは使い方が少し異なります。カーブ部分を直接触るのではなく左右のスライダを調整します。パラメータを調整した印象は、右側がニー調整で左側が暗部のフレア調整に似ています。言い換えればハイライト部分やアンダー部分にに漏れている赤や緑、青の成分を個別に増減させるための調整ができます。

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QUALIFIER

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次はセカンダリ機能の中心であるQUALIFIERです。このタブを選択すると自動的にカーソルがスポイドに変わります。ビューワ内の任意の部分をクリックすると、その色情報を拾って選択範囲に加えられます。被写体の肌色部分を選択したい場合には、その部分をクリックします。

一回のクリックだけでは肌色全体が選択できません。なぜなら肌色とは言っても、たくさんの種類の肌色の近似色で構成されているからです。肌色全体を選択するためには+ボタンを選択し直して、追加の選択を繰り返します。ある程度の指定ができてくると、最後の微妙な追加は+Sボタンの方が効果的です。ソフトネスを利かせての追加ができます。このQUALIFIERはHSL、RGB、LUMの3つのモードがあありますので、色の選択で最も有利なものを選択します。それぞれのタブの下にあるBlurパラメータを使うと、選択範囲がデフォーカスでソフトな輪郭にできます。

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あらかじめ選択したいエリアを図形選択できるのならば、WINDOWタブが効果的です。ワイプ機能と呼ぶ方が直感的かもしれません。丸や楕円、四角や、多角形、またはカーブを含んだ複数ポイントしていなどで選択範囲を指定できます。この中のどれかひとつしか選択できませんが、ノードで分けることで複数の選択も可能です。ノードの使い方は、別の回に解説します。この他Blur機能で映像に対してのデフォーカスやシャープネスを調整したり、KEY機能を使うことでノードを使った時の選択範囲のゲイン調整ができます。

バージョン機能について

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次にバージョンについて解説します。カットに対する色調製は、最終的に方向性を決める前にはいろいろ試行錯誤するでしょう。そんなときにバージョンを使うと、いくつかの設定をメモリ内に仕込んでおいて、それを切り替えて比較することができます。それがバージョン機能です。

DaVinci Resolveではバージョン機能はリモートとローカルに分かれます。これまでに各カットに対して色調製を試してきましたが、この設定情報はどこに記憶されているのでしょうか。Master Session以外ではリモートバージョンが使われているので、色のデータはすべてタイムラインのカットの中ではなくて、Media Pool内のマスタークリップに記憶されています。

Media Poolとは一番最初にクリップを読み込む時に使ったところです。Macの中にあるメディアファイルは、かならずMedia Poolに読み込んでから作業に取り掛かります。タイムラインの各カットは、Media Poolのクリップに対するポインターだったのです。リモートバージョンとはタイムラインから見ればリモートの先にあるMedia Poolの中にバージョン情報を残すことを意味します。これに対してローカルバージョンは、タイムライン上の各クリップごとに情報を記憶します。

わざわざリモートバージョンのMedia Poolなんかに情報を残す必要はないのではないかと感じるかもしれません。しかし、EDLからのタイムラインなどで作業する場合には、EDLの別バージョンが届いて更新していくことがあるかもしれません。そんなときにローカルバージョンで色情報を残していると、新しいEDLへは設定情報が反映できません。そんなときのために、Media Poolに設定を残すリモートバージョンがデフォルトで使われています。

今回はノードの解説をあえて外していますので、常に単一ノードでの作業に終始しました。これでも十分に多機能な色調製は可能なので、まずはシンプルに使ってみてDaVinci Resolveの豊富な機能の一端から使い始めてみてください。

WRITER PROFILE

山本久之

山本久之

テクニカルディレクター。ポストプロダクション技術を中心に、ワークフロー全体の映像技術をカバー。大学での授業など、若手への啓蒙に注力している。