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[鍋潤太郎のハリウッドVFX最前線]Vol.03 伝説のアニメーター&アートディレクター宮本貞雄氏の講演会がLAにて開催される

2010-10-15 掲載

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取材協力: 塩田 哲 / AnimeJungle

芸術の秋である。ここ、明るく”脳”天気で平和で大袈裟な街ロサンゼルスでは、映画のメッカに相応しく、映像に関する講演会やセミナーが頻繁に開催されている。9月17日夜、ロサンゼルス・ダウンタウンにある、日本のアニメ&特撮ショップ「アニメ・ジャングル」(Anime Jungle)において、伝説のアニメーター&アートディレクターの宮本貞雄 氏の講演会が開催された。会場にはアメリカ人のアニメファン、ハリウッドで活躍するVFXアーティストらが集まり、盛況であった。宮本氏がガッチャマンの原画を取り出し解説を始めると、アメリカ人ファンの口からは「Oh–!!」という溜息が漏れたのが印象的だった。参加者達は宮本氏の冗談を交えてのユニークで巧妙なトークに聞き入っていた。この日の講演は非常に興味深い内容であったので、是非読者のみなさんにもご紹介したいと思う。そこで今回は趣向を変えて、その模様をご紹介する事にしよう。

頭角を現した大阪時代

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僕が日本でアニメーションを作っていたのは53年前、鉄腕アトムが始まった頃です。その前は、大阪で7年程、テレビCMのアニメーションを作っていました。その頃は20代の後半でした。CMの仕事が指名で沢山来るようになり、日々それを消化していく中で、CMの仕事について自問自答した時期がありました。ここらで東京へ行って、もっと勉強をしてみたいと考えたのです。そこで、28歳の時に東京に出て来ました。

当時、東京にある大きなアニメーション会社は3つありました。虫プロ、東映動画、TCJです。この3箇所を回って、もしどこも雇ってくれなかったら、誰か良い先生をみつけて弟子入りしようと思っていました。地図を片手に、まず訪れたのが虫プロでした。すぐに入社する事が出来ました。最初は床拭きや掃除などをしながら仕事を覚えるつもりでしたが、「すぐに原画を書いて欲しい」と言われ、下働きをする事なくキー・アニメーターとして働く事になりました。最も、僕はアトムを描いた事がありませんでしたので、「鉄腕アトム全集」を買ってきて、アパートで夜な夜な描いて練習しました。

僕は大阪時代、1日に3つの異なる仕事を掛け持ちしていました。撮影や背景等の流れも常に考慮しつつ、作画に関わるほぼ全ての工程を1人で担当し、仕事の流れを学ぶ事が出来たのですが、虫プロでは一転して、1日中座ってアトムだけを描いていれば良い。”こんな楽な仕事をしてお給料を頂いて良いんだろうか?”と思いました(笑)仕事を始める時は、最初のうちは大変な思いをして、多少苦労しておいた方が、後々齢を重ねてから良い結果を生む事になる、という事を学んだのも、この頃でした。

手塚治虫の仕事ぶりを目の当たりに

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手塚治虫さんと初めてお会いした頃です。当時、虫プロはスタッフがどんどん増えて4つスタジオがありました。僕は第1スタジオにいたのですが、ここは手塚先生の仕事場と同じでした。我々は朝9時から夕方6時までという勤務時間で仕事をしていました。午後3時頃、手塚先生がやって来られて、スタジオの中に空いているデスクがあると、”すみません、ここを使っても良いですか?”と聞かれるのです。”ここは、貴方の会社じゃないですか。どうぞ好きな場所を使ってください”とお答えしましたが、手塚先生はそのような謙虚な方でした。

私は夕方6時に帰りますが、手塚先生はいつも遅くまで残っておられた。”先生が残っているのだから、自分も”と2時間ばかり残業してみましたが、先生はなかなかお帰りになられません。そこで僕は、「先生、お先に失礼します」と帰宅し、お風呂に入って、晩御飯を食べ、睡眠を取り、翌朝9時にスタジオへ行ってみると、手塚先生は同じ机でそのまま仕事をしておられました。

当時の手塚先生は、漫画連載、アニメーション制作、取材、そしてラジオ等、非常に多くの仕事量をこなしておられました。下のフロアでは、常に3人位の雑誌編集担当が控えているような状況でした。マネージャーはそんな先生を気遣って、仕事を減らそうと試みるのですが、1つ減らすと、先生が新しい仕事をご自分で取ってきてしまう。僕は、手塚先生の才能を見て「あんな風になりたい」と憧れましたが、そのハードなお仕事ぶりを見て「手塚先生にはなりたくない」と思った程です(笑)

虫プロは手塚先生の原作に沿って作っていくというスタイルがあり、アトムも手塚先生と同じスタイルで描いていきます。虫プロのスタッフは、手塚先生の作品が好きで入った人が多い。でも僕はCMのアニメ畑から入りましたから、異なるバックグラウンドを持っていました。そこで、スタッフの皆さんに”もっとアカデミックなアートの勉強をした方が良いですよ”と啓蒙した事がありました。そういう意味で、タツノコ・プロダクションはリアルなスタイルを得意としていたので、その後に移籍する事にしました。

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WRITER PROFILE

鍋潤太郎 ロサンゼルスを拠点とするVFXジャーナリスト。


[ Writer : 鍋潤太郎 ]
[ DATE : 2010-10-15 ]
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