写真:鍋 潤太郎
取材協力:Visual Effects Society

4月23日(火)、ハリウッドのW Hotel Hollywoodにおいて、VES(ビジュアルエフェクツ・ソサエティ/米視覚効果協会)主催による「VFXキャリア・フェア&ワークショップ」が開催された。会場には数多くのVFX関連企業がブースを連ね、大盛況であった。今回は、この模様をご紹介する事にしよう。

VFXキャリア・フェア

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今回で3年目の試みとなる、VES主催のVFXキャリア・フェア。昨年までは、アカデミー賞でもお馴染みハリウッド&ハイランドにあるLoews Hollywood Hotelで開催されていたが、今年の会場はW Hotel Hollywood。ここは2010年1月にオープンした、ハリウッドでは比較的新しいホテルで、ミュージカル・シアターとして有名なPantages Theaterのほぼ正面に位置している。このエリアは、最近再開発が進み、ハリウッドの新たな観光スポットとしても注目されているようだ。そのW Hotel Hollywoodで、朝から夕方まで丸1日を費やし、大規模なキャリア・イベントとワークショップが開催された。

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今年ブースを構えていたVFXスタジオ及びポスト・プロダクションは、

  • ArsenalFX
  • GENARTS
  • FOTOKEM
  • Framestore
  • Keep Me Posted
  • LEGEND3D
  • Luma Pictures
  • LOOK Effects
  • Method Studios
  • The Mill LA
  • ReelFX
 Sony Pictures Imageworks
  • Stereo D
  • SPY
  • Stargate Studios
The Third Floor
  • Walt Disney Imagineering
  • Zoic

という、全18社。これらの顔ぶれを見渡してみると、大手VFXスタジオはSony Pictures Imageworksの1社のみである事がわかる。

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昨年ギャロップ・ホース(中国)とリライアンス・メディアワークス(インド)に買収されたデジタル・ドメイン、そして今年3月末にプラナ(米国)に買収されたリズム&ヒューズ、そして昨年ブースを構えていたILMの姿は、いずれも見られなかった。これには、各国の税制優遇制度の影響によるグローバル化の波によって、西海岸のVFX業界における求人数が激減しているという結果が、色濃くにじみ出ていたように思う。出展企業の多くは中堅VFXスタジオか、業界で「ブティック」と呼ばれる小規模のスタジオで、それに混じって地元LAのポスト・プロダクションもブースを構えていた。

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また、小回りの効く手頃なサイズのスタジオ規模をキープしつつも、グローバル化の波に上手く乗った中堅スタジオが目についた。中でもFramestoreやThe Millは、LAにCM仕事中心の小規模スタジオを持ちつつも、積極的な人材募集はLA以外の拠点が中心。ここにもグローバル化の影響が見られる。筆者の友人も、あるブースで「モントリオール(カナダ)に引っ越せるなら、ポジションがあります」と言われたそうである。

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今年のVFXキャリア・フェアの傾向として見逃せないのは、その訪問者数の多さだった。昨年は学生の参加者が多かったが、今年はプロが大半を占めていた。これには、今年に入って西海岸の大手アニメーション・スタジオやVFXスタジオにおいて大規模なレイオフが行われたという事情があり、例年になく非常に多くの人が仕事を求めて会場を訪れていた。

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各企業のブースの前には大行列が出来、「1時間待ちは当たり前」という感じだったようだ。どの企業も、リクルーターを常時2人体制で対応していたが、参加者1人1人と話をしなければならない事もあり、かなりの時間を費していた。各ブースでは、レゾメやデモリールを手にした参加者らが、リクルーターと対談しながら売り込みに熱が入っていた。中には、iPadやスマートフォン等でデモリールを見せる姿も見られた。

ワークショップ

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キャリア・フェアと並行して、今年の協賛企業であるAdobeとThe Foundryによる無料のワークショップも開催された。Adobe商品は、主にモーション・グラフィックスやCM仕事等が中心の、Windowsベースの小規模スタジオで愛用される事が多い。そしてThe Foundry商品は、Linuxベースのパイプラインを採用している、比較的規模が大きなスタジオで使用される傾向が強い。

今回のキャリア・フェアではその両者が一堂に会していた事もあり、各参加者は自分の興味やニーズに合わせて、お好みのワークショップを受講する事が出来た。さて、ワークショップの内容であるが、まずAdobeは、「CINEMA 4DとAfter Effects」「After Effects最新情報」という2種類のコースを用意していた。

一方The Foundryは、流行りのDeep Compositingの概要を紹介するクラス、そしてMari2.0新機能紹介のプレゼンテーションを行っていた。それ以外にも、現場で活躍するアーティストを講師に迎えた「コンポジターの為のCG基礎知識とその理解」、「アート・オブ・ポリスクラプチャーとは」等の実践的なクラスも用意されていた。どのワークショップも盛況で、最後のQ&Aでは多くの質問が飛び交っていた。

以上、駆け足でご紹介したVES主催の「VFXキャリア・フェア」だが、その概要はご理解頂けた事と思う。今後も、VES主催のイベントで興味深いものがあれば、本欄では積極的にレポートしていく予定である。

WRITER PROFILE

鍋潤太郎

鍋潤太郎

ロサンゼルス在住の映像ジャーナリスト。著書に「ハリウッドVFX業界就職の手引き」、「海外で働く日本人クリエイター」等がある。