「Game Developers Choice Awards」

例年、開催三日目に「Game Developers Choice Awards(GDCA)」が開催された。このイベントはIGDA(国際ゲーム開発者協会)メンバーのゲーム開発者達の投票によって、昨年度に発売されたゲームを表彰するもので、今年で9年目。グランプリの「Game of the Year」を含めた10カテゴリのアワードと、個人に贈られる3つのスペシャルアワードが用意されている。 会場は基調講演が行われるホールと同じくサウスのEsplanade Room。ちょうどその日のセッションが終了した6時30分から始まった。会場にはノミネート者たちと関係者がアリーナ席、そして応援団のような参加者たちが後列に座り、会場はフル満席で収まった。

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IGFのホストのAndy Schatz氏。 彼が設立したPocketwatch Games社の最初のタイトル「Wildlife Tycoon:Venture Africa」は、最も期待のシミュレーションゲーム」の上位ランクインを保持している。

GDCAはインディーズ(大手制作/販売会社などに所属していない人/団体/会社)系製作のアワード「Independent Games Festival(IGF)」との併催で、まずは賞金2万ドルも出るIGFから始まった。 11年目を迎えるIGFのホストはPocketwatch Games社のAndy Schatz氏。 Schatz氏は、2006年のIGFグランドプライズの保持者であり、初めてのXBOX Live対応タイトル” Whacked!™(ワックド!)”や、エレクトリックアーツのオンラインコンソール対応として初めてのタイトル” Golden Eye: Rogue Agent”に携わった一人。

最高賞に当たる「Seumas McNally Grand Prize」に輝いたのは、Erik Svedang氏のエコ系アートなおとぎ話アドベンチャー” Blueberry Garden”。 


Blueberry Garden (sneak peak trailer) from Erik Svedäng on Vimeo

その他の受賞者のスピーチやアワードの模様はIGFサイトから動画で見ることができる。ちなみに今年のIGFコンペティションには、世界中から450以上のエントリがあったという。また余談ではあるが、なぜグラプリにシーマス・マクナリー(Seumas McNally)がついているのだろうか? これは第1回のIGF賞で大賞に輝いたLongbow Digital Arts社のプログラマーの名前にちなんで名付けられたものだ。実は、当時彼は難病に冒されており、受賞から数日後に弱冠21歳という若さでこの世を去ってしまった。 

「Game Developers Choice Awards」ははたして?

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Fallout 3 より

さて、GDCAはというと、今年のホストは、元ルーカス・アーツのTim Schafer氏。 ”Full Throttle”、”Psychonauts”や、この秋EAからリリースされる”Brutal Legend”のゲームデザイナーで、業界レジェンド的存在の人物だ。 ノミネート者たちの所属するプロダクションのスタッフもこの会場に駆けつけているため、賞を受賞すると歓声の声が一層大きく盛り上がる。

今年の「Game of the Year」には、Bethesda Softworkの核戦争後の世界を舞台に繰り広げられるサバイバルワールドRPG、”Fallout 3“に決まった。


Fallout 3, Teaser Trailer from AZC4PLAY on Vimeo.

*現在動画は、エンベッド禁止になっているためにリンクにて確認していただきたい。

*現在動画は、エンベッド禁止になっているためにリンクにて確認していただきたい。


Fallout の始まりは1997年。Interplayからリリースされ、同年度のRPG・オブ・ザ・イヤーに輝いた、ターンベースRPGの名作。Fallout3は今回このほかにも「Best Writing(脚本)」賞を獲得している。印象に残ったのは、4つの賞を総なめにした、Media Molecule の”LittleBigPlanet”。ユーザークリエーション・セントリックゲームというサブキャッチを持った、世界観のかわいい誰でも楽しめるゲームだ。 地球上の人々のイマジネーションや夢から生まれた”リビッツ”たちが惑星でアイテムを取得しながら冒険をするもの。Best Game Design、Best Technology、Best Debut Game とInnovation 賞というどれをとっても彼らなら、とうなずける名誉ある受賞だ。また昨年2カテゴリを受賞した2D Boyの”World of Goo” は、今年はBest Downloadable game賞に輝いた。その他には、Best Visual Arts賞 にUbisoftの”Prince of Persia”、Ready at Dawnのポータブルアクション・アドベンチャーゲーム”God of War: Chains of Olympus”がBest Handheld Game、そしてEAの”Dead Space”がBest Audio賞を獲得した。 

また、スペシャルアワードの1つに、ゲーム開発における革新的で多大な業績を残したゲーム開発者に贈られる「Lifetime Achievement」賞がある。 過去2002年にセガ(ソニックチーム)の代表取締役社長 中裕司氏が受賞したものだ。 今年は、基調講演者の1人でもあり、メタルギアシリーズの製作に20年も関わってきた小島プロダクション 監督の小島秀夫氏に贈られた。 ステージ上で小島氏は、受賞の感謝を家族とサポーターにおくり、また生涯ゲームを作り続けたいと語った。 毎年なんらか日本発のタイトルの受賞があるのだが、今年はアワード始まって以来初めてゼロの年となった。 日本のゲームが海外開発者の興味を失ってきつつある感がある。

今年のGDCAの結果は次のとおり。
  • – Game of the YearFallout 3 (Bethesda Softworks)
  • -Best Game DesignLittleBigPlanet (Media Molecule)
  • -Best Writing:Fallout 3 (Bethesda Softworks)
  • -Best Technology:LittleBigPlanet (Media Molecule)
  • -Best Visual Arts: Prince of Persia (Ubisoft Montreal)
  • -Best Debut Game:LittleBigPlanet (Media Molecule)
  • -Best Handheld Game:God Of War: Chains Of Olympus (Ready at Dawn)
  • -Innovation AwardLittleBigPlanet (Media Molecule)
  • -Best Audio:Dead Space (EA Redwood Shores)
  • -Best Downloadable Game:World Of Goo (2D Boy)
  • – Lifetime Achievement AwardHideo Kojima
  • -Pioneer AwardAlex Rigopulos and Eran Egozy
  • -Ambassador AwardTommy Tallarico

WRITER PROFILE

山下香欧

山下香欧

米国ベンチャー企業のコンサルタントやフリーランスライターとして、業界出版雑誌に市場動向やイベントのレポートを投稿。