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[オタク社長が見たAsianimationの世界]Vol.18 世界のオタクたち、2010年前半を振り返って

#オタク社長が見たAsianimationの世界

2010-07-02 掲載

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フランスのHD対応状況を例に

teduka1801.jpg fnac外観。お洒落な看板は、さすがパリ

さて、視点を視点を広げてみようと思う。諸外国でも、日本同様に立体視ブームとHD化の波は押し寄せてきている。ただし、米国以外では立体視の方はまだまだこれからで、先にとにかく地デジの普及とHDサイズへの対応を、というのが現実だ。

ここで参考例として、前回に引き続き、フランス・パリのオタク事情から紹介する。フランスでは、TNT(Télévision Numérique Terrestre 地上波多チャンネル)と称して、2011年11月30日に地上波アナログ放送の停波を控えており、日本よりも一年遅れのペースで地デジ化が進んでいる。日本に比べて平地が多いためデジタル電波のカバー率が高いのが幸いだが、実はフランスの地デジ化はHD化よりも多チャンネル化の方が重視され、そのためSDでも視聴可能な地デジチューナーは売れ、ケーブルTVネットプロバイダへの参加は増えていても、家庭へのHD受信機材の普及率はまだまだである。

とはいえ、もちろん、多チャンネル化やケーブルテレビ普及によってHD放送コンテンツも一気に増えたので、映像画質にうるさいオタクたちは俄然HD映像に注目している。そのため、HD対応機材のオタク層への売り込みが大きく扱われている状況だ。映像コンテンツやオタク向けショップといえば、日本でもTUTAYAやGEOなどのオタク向け複合ブックショップが長らく流行っているが、フランスパリでこれに変わる店舗といえば、fnacなどの複合型AVソフトウェア大規模店舗が有名だ。

fnacなどにはオタク向けの本なども充実しているが、これらの店舗が日本と明らかに違うのは、カメラコーナーなどAV機器が充実していることと、閉店時間が午後8時とやや早いこと、そして決して万引きなど考えたくなくなるようなごっつい軍人上がりのガードマンが各階で数名ずつ、厳重な警備をしていること、だ。そもそもfnacは特に日本製品を扱う店というコンセプトではなく、アニメや映画などの映像関連製品を扱う総合チェーン店というコンセプトのようだが、その方針がフランスのオタクたちにバカ受けし、結果的に店内には日本製品が圧倒的に多くなっている。

teduka1802.jpg パリのオタクショップ内部。ヨドバシカメラとまんがの森の中間のような、日本には無い店内だ

パリのこの店では、ゲームより何よりも、とにもかくにも多チャンネル化コンテンツ視聴のためのHD映像対応ということで、ビデオカメラとHD対応デジカメは大量に置いてあった。デジタル一眼コーナーもとにかくHD動画対応ということで動画機能をプッシュしてあった。ただし、先般の事情により、フランスでは必ずしもフルHDの必要性は感じられていないようで、機材的にも720Pの方が多く見られた。

teduka1803.jpg パリでは、展示もお洒落。PentaxのK-xのカラフルさが自然になじむのはさすがパリ。これも720P動画だ

政府主導の放送ルール先行のため、パリのオタク世界においても日本以上にやはり機材先行で、まだまだHD対応コンテンツは出そろっていない。まあ、こうした店では日本からの輸入コンテンツが多いので、日本で揃ってないものがこちらで揃っているわけもないのではあるが…

実際問題として、日本のオタク向けコンテンツは去年以前に作られた作品が多く、特に海外版ではそのHD対応率はまだまだ高くない。そのため、パリでもHD向けの新作が明らかに不足している状況であった。フランスオタクから繰り返し異口同音に聞いた言葉に「ガンダムは古い」というのがある。てっきり単純にガンダムのストーリーなどがフランス受けしていないのかと思ったら、さにあらず。つまり、ガンダムに限らず、日本のロボットアニメの映像が全体に古く、ロボット自体も似たようなデザインで使い回され、そして何よりHD対応も遅れている、という意味のようだ。ロボットアニメを何もかも「ガンダム」と呼んでしまうあたりに異国を感じるが、フランスオタクたちも新しい和製ロボットアニメが見たいのだが、それが提供されないことに不満を持っている、という事らしい。ここには、大きな商機を感じる。

また、オタクたちにはiPhoneの普及率も非常に高いので、スマートフォン向けコンテンツ市場も、まだまだ可能性があると見ていいだろう。こうしたフランスの状況は、日米以外の先進国の平均的状況と言え、また、そのすぐ後を追う中国などBRICs諸国の市場を占う上でも非常に参考になるものと言えるだろう。

今回はフランスの店舗を例に取ったが、オタクたちの手元にHD機材やスマートフォンが揃いつつある今、どこの国のオタクたちも、リメイクでもなんても良いからHDコンテンツが欲しい、という状況のようだ。不況にあえぐ日本オタクコンテンツ産業にとって、何となく希望が持てる話ではないか。また、例えば「ヱヴァンゲリヲン」等の劇場向けHD以上サイズへのリメイクが日本でも話題になりはじめているが、こうした動きは極めて正確に世界のオタク市場を捉えていると言えるだろう。

今年の後半は、とにかくHD対応の映像コンテンツ制作に地道に軸足に置き、もう片足でスマートフォンや3D立体視ゲームなどの成長中のジャンルを探りながら進む、という形になるのでは無かろうか。

さて、アジアとアニメに特化して始まったこのコラムも、早1年半。まさかここまで長期にわたって続くとは思わなかったのが正直なところで、読者諸賢のご愛読を大変ありがたく感じている。連載開始当初は物珍しかった中国市場の話題もすっかり日本でもおなじみとなりつつあり、自然、この連載もアジアの枠を出ることが多くなってきた。ひょっとすると、次回あたりから、もう少し大きな視点でリニューアルしたコラム展開が……できたらいいなあ、等と夢想している昨今である。

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WRITER PROFILE

手塚一佳 CGムービー制作、ネットワークゲーム制作を得意とするデジタルデザイン会社アイラ・ラボラトリの代表取締役。修士(芸術) 博士課程芸術専攻


[ Writer : 手塚一佳 ]
[ DATE : 2010-07-02 ]
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