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[オタク社長の世界映像紀行]Vol.12 香港とマカオでのニッポン

#オタク社長の世界映像紀行

2011-07-15 掲載

311後の香港・マカオにおける日本の評判は?

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「重慶大厦」周辺の日本製カメラ屋は健在。相変わらずぼったくり価格での商売

ニュースなどで繰り返し報道されているので読者諸賢は既にご存じのことと思うが、東日本大震災と福島第一原発事故で先方国に輸入規制されて明らかになったのは、日本の輸出食品の多くが香港へと流れていた、という事実であった。

ニュースで語られたのは、放射能汚染によって日本からの輸出が一気に止まり、香港では無数にある日本料理店がその食材に困り果てていた、ということで、日本食品が香港人の食卓に広く浸透していた事がよくわかるニュースだった。無論、香港やマカオで流行っていたのは、食料品だけではない。前回ご紹介した日系ホテルのマカオカジノ参入など、日本ブームは大きなうねりとなりつつあったのだ。今回は、香港・マカオに根付いていた日本ブームと、その現状を、アニメ制作屋の視点でレポートしたい。

香港・マカオにおける日本ブームの現在

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日本からの食器を扱う店は、開店休業状態。日本政府がろくに検査をしない現在、食器類に日本製品を使うのは、さすがに度胸が必要だ

先述の通り、香港の日本ブームは食を中心に広がり、映像を初めとするサブカルチャーにまでそのブームは広がっていた。そうした動きが、原発事故と、その後の政府の度重なるウソと甘い暫定基準によって水を差されてしまったのは誠に残念でならない。現に香港でも、多くの日本食関連店舗が商売にならない状態となってしまっていた。せめて、海外向けと国内でも乳幼児むけの食品に関しては、チェルノブイリ直後のEU並みの厳しい基準で当たって貰いたいものである。厳しい検査基準とその徹底だけが、日本への信頼を取り戻す唯一の道なのだ。

こうした動きは、オタク製品をはじめとする食品外の製品にまで及びつつある。日本製品の聖域であった電器店でも、震災や原発事故、停電による供給の問題もあり、日本製品よりも韓国・中国本土製品を大きく取り扱う店が増えてしまっていた。私は、毎年香港マカオで日本製品の活躍を見るのが大きな喜びだっただけに、こうした状況が悔しくて仕方がない。なんとか、ひっくり返したいものである。

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「重慶大厦」でも「日本」という宣伝文句が減っていた。早く何とかしないとまずい

香港の買い物の定番、アジアのるつぼと呼ばれる「重慶大厦」でも、日本製品を謳う張り紙はめっきり減ってしまっていた。…いや、実はもともと重慶大厦には日本製品は少なく、日本製を謳う出所の怪しげな製品ばかりだったのだが、定番のカメラ関連以外は、はっきりと中国製を表示するようになっていた、と言うのが正しいだろう。最近、中国本土の信頼度が上がったというのもあるのだろうが、急速に「日本製」という文字が「中国製」という文字に対してあまりアドバンテージを持たなくなってきている。いずれにしても、なるべく早く日本製品の供給を取り戻し、また、放射能汚染検査を徹底して信頼を回復する必要があるだろう。

香港・マカオの2011年オタク事情

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フェリー乗り場の売店にも日本の漫画が並ぶ。もちろん中国語で香港人や中国人向けだ

ちょっと前まで、日本の映像企業が中国と関係すると言えば、ここ、香港が足がかりであった。香港では数多くの映像企業が軒を連ね、ここに来るだけで多くのビジネスの種が拾えたものであった。しかし、そうした言葉は今では全て過去形だ。最近では映像制作自体はすっかり中国本土へとその拠点を移し、香港は、そうした中国本土制作映像への投資の場として、役割を変えつつある。

実際、筆者の率いる会社でも、香港経由での取引はほぼ無くなり、中国本土との直接のやりとりばかりとなってきている。香港資本の会社であっても、上海や杭州で直接現場担当者とやりとりをするだけで全て話がまとまるようになってきているのだ。こうした動きの早さは、実際の物流を伴わない映像の世界ならではといえるだろう。1国2制度のままではあるが、香港の中国本土化は急速に進んでいる、ということなのだろう。

香港のそうした動きの早さは、街の風景にも現れる。気がつけば香港のTVドラマも中国本土のものが多くを占め、香港映画も中国本土撮影ばかり。商品もなにもかもが中国本土のものになりつつある。しかし、やはりそれだけではすまないのが香港。香港ならではの路線として急激に増えてきたのが、前述の日本食や、日本の漫画・アニメなのだ。中国本土では日本製の映像や出版物は大きく制限を受けている。しかし、別の行政区である香港では、全く制限を受けない。特に、恋愛を扱った漫画やアニメは、性表現に厳しい中国本土での制作は考えられないため、香港の恋愛漫画などは、ほとんどが日本からの翻訳作品や輸入作品となっているのだ。

驚くのは、こうした漫画やアニメが、決してオタクだけのものではない点。フェリーや地下鉄の駅にある売店には、必ず日本の漫画が(やはりこれも中国本土では御禁制のきわどいAV雑誌と共に)並んでいる。もちろん、漫画や映像コンテンツはただのデータとして輸出されるので放射能汚染の心配もゼロ。福島事故後の今、香港では、最も身近な日本製品の一つとなっているのだ。

これは、日本国内では肩身の狭いオタク文化だが、海外では広く受け入れられている事を感じる瞬間だ。江戸時代の浮世絵も日本国内ではバカにされていたというから、昔から我々日本人は、国内の本当に良いものには気づけない民族なのかも知れない。

香港と同様の日本ブームは、マカオでも起きていた。

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マカオのカジノ併設の日本グッズ店。有名雑誌直営店と見まがうような、なんとも微妙な名前

マカオでは、定番のラーメン店や牛丼屋、日本風の菓子店だけでなく、前回ご紹介したようについに満を持して日系ホテルの参入まで行われ、日本文化の流入は何者にも止められないように見えた。予想外の原発事故でその勢いは衰えてしまったが、本来であれば、このコラムでも、この日本ブームを新カジノオープンと合わせ、派手にご紹介するつもりだったのだ。マカオでは、その行政区丸ごと一大エンタメ国家というお国柄のため「日本」をエンタメの方向性の一種として捉える傾向が強い。ラスベガスなど、他のエンタメ地域での「日本」も相当に劇画化されて紹介されているが、マカオでのそれもなかなか負けてはいない。

中でも私のオタク心をくすぐるのが、マカオならではの日本グッズ店の数々だ。マカオがエンタメ国家である以上、世界各国から集まったギャンブラーや観光客たちが、マカオからほど近い日本のお土産をマカオで買って帰るのは、ごく当然の事なのだ。

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商品も、日本製を謳っているが…パッケージにすら誤字が多く、どう見ても日本製ではない

しかし、実際の日本-マカオ間の距離は、読者諸賢もご承知置きの通り、決して近いものではない。当たり前だが、観光客の大半を占める中国本土の方が圧倒的にマカオに近いのだ。そこでマカオでは、日本製を名乗るがとてもそうは見えないおもしろグッズやアイディア商品の数々が、大々的に店頭を飾る事になる。例えば、お茶くみ人形機能付きのロボットや、超高性能を謳う機能不明の立体視装置、紙のように薄い電子楽器、有名キャラクターのロボットや、同じく有名キャラの携帯電話などなど、絶対に日本では見られない日本製品(と名乗る製品)が多数見られる。こういう面白いものが本当に日本で売ってたらどうなるんだろう、と思いながらウィンドウショッピングをするのが、また楽しいのだ。

私は、こうした風景を見る度に、日本企業がチャンスを生かし切れていない事を痛感する。そうしたおもしろグッズの数々は、決して技術的には難しいものではない。オリジナルの日本こそ、どんどんそうした商品を作ってどんどん売り込むべきなのに、震災前ですらそれがろくに出来ていなかったからこそ、こうした日本外企業による日本製品もどきが氾濫してしまっているのだ。

繰り返すが、ここには、チャンスがあるのだ。しかも、香港やマカオは日本よりもしっかりとした資本主義国であり、「魔界」とまで呼ばれる中国本土ほど参入は難しくない。市場規模も小規模で、中小企業でも割って入る余地は充分にある。香港・マカオで成功すれば、広大な中国本土市場への足がかりも見えてくる。震災後で注目をされている今こそ、どんどん攻めるときではないかと私は考える。

幸い、ノンビリしたお国柄のため、香港よりも動きが若干遅いマカオでは、まだ、日本製品の汚染に対する反応はさほど始まっていなかった。しかし、このまま日本政府が放射能汚染検査もせず、輸出関連中小企業支援もしないままに放置すれば、香港同様の展開になるのは時間の問題だろう。そうなる前に、政府対応もしっかりとお願いしたいものである。政府が民間の足をこれ以上引っ張ってはならないのだ。


WRITER PROFILE

手塚一佳 CGムービー制作、ネットワークゲーム制作を得意とするデジタルデザイン会社アイラ・ラボラトリの代表取締役。修士(芸術) 博士課程芸術専攻


[ Writer : 手塚一佳 ]
[ DATE : 2011-07-15 ]
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