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[オタク社長の世界映像紀行]Vol.16 一番日本に近い中国、大連

2011-11-11 掲載

成長著しい中国の中でも、古くから日本と関係の深い街がある。それが、中国東北部遼寧省の副省都、大連だ。大連は、古来、貿易港として日本と関係を深め、戦前は日本の関係国家である満州国中心地として栄え、終戦時には日本帰国への要の港となり、戦後は再び対日貿易の中心地として活躍をしてきた。今回と次回、2回連続でこの街についてご紹介したいと思う。

英語よりも日本語の方が通じる街、大連

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大連の街並み。大連はここ数年で近代的な大都会に生まれ変わった

およそ、映像業界に関わる者であれば、既に日本に限らず世界のアニメ産業やCG制作が中国制作部隊抜きには語れないようになっていることは理解している。好むと好まざるとに関わらず、中国は優れた人材と安い人件費、そして何よりも凄まじく多人数のクリエイターを抱える一大映像制作国家であり、また、近未来の巨大映像消費地として期待される存在でもあるのだ。その中でも、日本において大連という街はかなり知られている存在だ。何しろ、歴史的・地理的関係もあって、英語よりも日本語の方が良く通じる街なのだ。当然、日本人によるビジネスも楽で、アニメの世界でも比較的早くから日本企業が進出していた街でもある。

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大連駅前。アメリカンなビル群と旧日本軍が作った古い駅舎とのコントラストが特徴だ

人口600万人強と、日本人の目から見ると大阪と名古屋と京都を足した人数に匹敵する大都会ではあるが、中国の中ではかなり人数の少ないこぢんまりとした街で、遼寧省のなかでも瀋陽市に次いで二番目に大きい、という微妙な規模にあたる。中国は統計調査が不十分なので正確なところは誰にもわからないが、中国全土でも、30~40位くらいの人口規模の市区であるようだ(ちなみに、日本では、大連より規模の大きい街は東京23区くらいしかない)。大連は、その地理的重要性からロシアその他列強の支配を受けてきた歴史を持つが、中でも、かつて日本の大企業の建物が並んだ中山広場や日本の上野駅をそのままの設計で設置した大連駅、旧帝国海軍基地だった大連空港など、旧日本軍が開発した施設が多い。いずれにしても、日本との関係はかなり複雑で、単に日本語が通じるから親日の街であると理解して関わることは、若干誤解を含む行為であるとも言える。

発達を続ける巨大地下街と、ショッピングモール

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オタク系ショップでは、日本でもおなじみの巨大ガンダムが。地元民向けの店で、日本語は通じない

中国では、核戦争対策で、主要な商店の多くが地下街に収められている街が多い。いざ核戦争ともなれば、地下商店街がそのまま核シェルター兼倉庫になる仕組みだ。それだけでなく、地下街は冷暖房効率も良いので、厳しい環境の多い中国では快適なショッピングモールとして人気を集める傾向がある。なかでも、大連駅南側の勝利広場地下街はその巨大さで有名で、複数の地下ショッピングモールと連結し、2000年の大改装の結果、地下4階、14.7万平方メートルもの広大な面積を誇る近代ショッピングモールとして生まれ変わった。若干高級路線ではあるが、そのお洒落さから多くの若者を集め、学生たちが普段住んでいる郊外の大学街からわざわざ高速バスを使ってこのショッピングモールに買い物に来ることも多い。

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国営の中国移動通信社系のiPhone専門店も。こんな高額なものも売れる時代になった。ただし店のロゴは明らかに偽物

大連では、地上にも高級デパート群が建ちはじめているが、デパート間の移動の際の寒さ対策が無く、駐車場スペースも不十分なうえ、デパートの物価は日本以上の高額物価ということもあり、一般市民の足はまだまだ地下街中心だ。勝利広場地下街は、ショッピングモール特有のファッションフロアだけでなく、電化製品やオタク向けグッズ、巨大ゲームセンターなどの設備も充実し、レストランも、日本よりも高額な超高級店から一食10元代のフードコート、終いには、吐き捨てた骨が椅子に転がる野趣溢れすぎる一杯数元のチープな麺屋まで、生活に関わるありとあらゆるものが揃っている。オタク系ショップでは、巨大な等身大ガンダムが展示され、その様子は日本のそうしたホビーショップと何ら変わらない。価格帯も日本の半額程度で、中には日本から輸入した本物(当然値段は日本よりも高い)も多く、平均物価が日本の5分の1程度の大連からみると、非常に高級な路線であると言える。

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ゲームセンターの商品は、とにかく巨大なのがトレンド。狭い高速バスで、これをどうやって持って帰るのだろう?

こうしたショップで面白いのは、何もかもが巨大なこと。例えば、ゲームセンターのぬいぐるみなどのプライズも、1メートルを超える巨大なぬいぐるみばかりが並ぶ。先ほどの等身大ガンダムも、日本では単なる展示物だが、その横には展示モデルよりも若干小さいサイズの巨大プラモデルが買えるようになっている。このあたり、大きいことはいいことだ、という国民性が垣間見え、非常に面白い。

旧地下街には地元の魅力

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凱旋広場。レトロ感溢れる昔ながらの地下街だ

大連駅の旧来のショッピングエリアは、駅周辺である。なかでも、先ほどの勝利広場と駅を挟んで反対側、駅北部の凱旋広場は完全に地元のショッピングモールだ。価格帯も勝利広場よりもぐっと低い。すっかり近代化した大連で昔ながらの中国に触れたい人は、こちらに来ると良いだろう。

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凱旋広場内。懐かしの中国ショップが建ち並ぶ。現地価格で値段が安い

凱旋広場では、価格帯が安い分、電化製品やブランド物の本物は少ない。おもちゃ店も並ぶが、ここでは絶対に撮影をさせてくれない。それもそのはず。細長い顔のドラえもんや鋭い目のキティちゃんは、どう見ても日本のライセンスを受けているものとは思いにくい。その代わり、中国茶や漢方などは中国現地価格で購入が出来、中国特有の価格交渉もさほど険しくない。外国人慣れもしていないので、いわゆる日本人価格(日本人向けぼったくり)もあまり無い。中国の大都市の例に漏れず、大連にも中国茶城(お茶専門の業販デパート)が存在しているが、私は大連ではこの凱旋広場でお茶を買うことにしている。業者向きの中国茶城と異なり、一般人向けの凱旋広場の店ではちゃんと客として扱われる。凱旋広場にある茶葉店には、工場と契約して中国東北各地への卸しもやっている店もあるので、価格帯も茶城とさほど変わらない。なにより、ちゃんと包装をしてくれるので持ち帰りやすい。

大連が見せる、近未来の中国のコンテンツ産業

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DVDショップには本物、もしくは本物に近いパッケージが並ぶ。昔ながらのカラーコピーの紙に包まれた偽物は、ワゴンに入れられて数元の捨て値で売られているが見向きもされない。一昔前の中国では考えられなかった光景だ

このように、駅を挟んで両側に、新旧両方の中国が見られるのが大連の街の面白いところだ。では、安価な凱旋広場のおもちゃ屋の方が高価な本物を売っている勝利広場のおもちゃ屋よりも流行っているのかと言えば、実はそんな事はない。むしろ、おもちゃ屋に限らず高価でありながら本物志向の勝利広場には人が集まり、昔ながらの安価な品物が並ぶ凱旋広場はやや人が少ない傾向が見られる。中国でも、経済的に豊かな沿岸部を中心に、本物志向が高まっているのだ。

映像産業に特化して見てみると、この傾向はさらに際立つ。違法コピー映像や違法コピーゲームは簡単にネットでダウンロードできるため、商店では本物を買う傾向が高まり、昔のように偽物が堂々と売られる店が次第に減っているのだ。店売りの商品がたとえ偽物だとしても、パッケージをちゃんと作り、本物同様のおまけまで封入したスタイルになっている。こうした気合いの入った偽物はコストもかかるので、値段もそれなりにするものだ。

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昔ながらの安価なコピーを看板にしたショップもまだ残るが、日本のドラマなどネットで入手が難しい物に特化している

こうした本物志向は、特に大連の駅前だけにみられるものではない。例えば大連空港の国内線エリアには、ディズニーの公式ショップが出来、人気を博している。日本のコンテンツでも、例えばハローキティの公式ショップも中国沿岸都市のあちこちに出来はじめている。先ほどの勝利広場のオタク系グッズショップの等身大ガンダムも、日本のバンダイの許可を公式に得て展示してあるという注釈が誇らしげに飾られていた。こうした商売が成立する時点で、中国の本物志向は明らかになってきていると言っていいだろう。

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空港には、ディズニーの公式ショップも。この店があるのは国内線エリアなので、中国国内向けのショップだ

つまり、近い将来、中国にも、日本や欧米同様の著作権ビジネスが成立する可能性が高いのだ。この事実は巨大市場中国の魅力をますます高め、ニーズに合った映像を作る体制作りという点から見ても、各種映像の中国制作の必要性をもさらに高めている。今、中国の人件費が跳ね上がってきていることで、映像等各種コンテンツの中国制作が廃れると見る向きもあるが、こうした本物志向の高まりを見る限り、私はむしろ今後、各種コンテンツの中国制作がますます重要になってくると思っている。無論、制作作業そのものは、まだまだ人件費の安い内陸部へと移ってゆくものと思われる。しかし、近い将来の著作権市場発生を考えると、大連など沿岸部の重要性が下がるわけではない。むしろ、日本と親和性が高く、日本語が通じやすい街である大連は、今後も重要な地位を占め続けるのではないかと思える。

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大連の夜の天津街、路上には日の丸を着けた日本兵のおもちゃが。一時の急激な反日が薄まっているのがわかる

次回は、中国アニメ戦略の要、巨大動漫基地について。


WRITER PROFILE

手塚一佳 CGムービー制作、ネットワークゲーム制作を得意とするデジタルデザイン会社アイラ・ラボラトリの代表取締役。


[ Writer : 手塚一佳 ]
[ DATE : 2011-11-11 ]
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