Eマウントレンズ交換式の採用、数々のレンズとの組み合わせによる多彩な画づくり

大判撮像素子カメラの世界は、今まで主流だった2/3インチや1/3インチビデオカメラより浅い被写界深度を生かした撮影が可能となり、今までビデオの世界では不可能だった「表現力」を生かした映像作品を作る事が出来るようになった。今回取り上げるSONYのNEX-EA50JH(EA50)は、APS-Cサイズの大判イメージセンサーを搭載し被写界深度の浅い画を撮影できるNXCAMカムコーダーだ。Eマウントレンズ交換式の採用により数々のレンズとの組み合わせによる多彩な画づくりが可能となった。

NEX-EA50のフォルムは、ENGカメラを彷彿とさせる肩乗せタイプ。中身は高画質で定評のあるNEX-VG20に、HXR-NX5Jの操作系を加えた様なオペレーションがしやすい形状となって登場した。普段からHVR-Z5JやNX5Jなどを使用している方なら、操作はほぼ迷うことは無いだろう。

付属レンズはVG20のレンズに電動ズームを加えたバージョンと言っていい。このレンズは18-200mmとおよそ11倍であり35mm換算のワイド端は29mmと、29.5mmのNX5とほぼ同じである。F値はF3.5-6.3と数値的には暗いイメージなのだが、このカメラの高S/N比によりISO(ゲイン)を上げてもかなり使える画質を保ってくれる。

また、AFと連続可変絞り、アクティブモードの付いた光学手ブレ補正が採用されているので、かなりカメラマンの負担を軽減してくれる。この付属レンズとの組み合わせでは光学11倍+デジタル2倍ズーム(後述)なので都合22倍もの倍率を獲得できた。倍率に関しては、ほぼどんな現場でも不満なく撮影できると思う。

このカメラの特徴的な所はいくつかあるが、中でもデジタルズームが面白い。グリップ部にあるズームレバーを操作することによって、デジタル2倍ズームができるのだ。実際に使ってみての印象だが、思ったより画質の荒れが無いのには驚かされた。ちょうど2倍という荒れ始める手前で止めているのが良いのかも知れない。このデジタルズームは何よりも、単焦点レンズを使用している時に威力を発揮する。たった2倍なのだが、この効果は絶大である。ズームスピードの設定はメニュー上から変更でき、1倍から最大2倍までを60秒かけて動かすことも可能。人間がズームレバーを操作することでは不可能な超スローズームを行うことが出来る。

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左:11倍光学ズームと2倍デジタルズームを併用 右:付属レンズ最広角
様々な画角での撮影がレンズ一本で行える

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左:EA50のデジタル2倍ズーム 右:撮影後にEDIUSで2倍に拡大したもの
デジタル2倍ズームは撮影後にEDIUSで2倍に拡大するよりもジャギーが目立たず高画質

単焦点レンズを使用した撮影では被写界深度を意識した撮影が重要になってくる。電子接点を持ったレンズであればこのダイアルでレンズ内のアイリスをマニュアル制御出来る。本体側面にある大型化されたアイリス調整ダイアルはとても使いやすく、ダイアルの横にはオートアイリスボタンとプッシュオートボタンも装備されているので、普段はマニュアルで使いながらいざという時にワンプッシュオートという使い方もできる。

Speed BoosterとEFレンズ群との組み合わせでさらにパワーアップ!

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NEX-EA50で使用するレンズはEマウントだが、サードパーティーから35mmスチールレンズをEマウントに変換するアダプター類が販売されている。中でもMetabones社のCanon EFレンズ対応製品などは電子接点を有しており、アイリスリングを持っていないレンズでもしっかりとアイリスコントロールが出来るようになる。

今回は、Metabones社製のEマウント→EFマウントアダプターSpeed Boosterを使って、Canon EF50mm F1.2L USMレンズを使用した。Speed Boosterとは天体望遠鏡をご存知の方なら分かると思うが、レデューサーと呼ばれるレンズと同じ機能を有している。このレンズを通すことにより焦点距離を短くし、F値を下げる事が可能となる。

EA50の場合撮像素子サイズはAPS-C相当なので、仮に50mmのEFレンズを使用した場合およそ1.6倍の80mm相当に拡大されてしまう。そこにこのSpeed Boosterを付ける事により、0.71倍 80*0.71=56.8mmと、ほぼ元の50mmレンズに近い焦点距離に戻すことが出来る。おまけに絞り値も1段明るくなる。まさにいい事ずくめのアイテムである。

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このSpeed BoosterとCanonEFレンズ群との組み合わせは、このカメラにとって非常に大きな武器となる。今まで35mmレンズと、APS-Cのサイズのカメラとでは1.5倍の焦点距離換算を行わないと、おおよその画角のイメージが掴めなかったが、このSpeed Boosterの登場により35mmEFレンズのミリ数に相応した画角で撮影できるということは今までスチールカメラ(デジタルカメラ)に使い慣れた人たちにも受け入れやすいのではないだろうか。またLCD表示にはちゃんとF値が換算された数値が表示される。今回使用したCanon F1.2LレンズはLCD画面表示ではF1.0と表示された。仕様上F1.0以下の表示には現在対応できていないようである。

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このSpeed Boosterを使うことによりF値が一段明るくなると言う事で、室内などの撮影では現場明かりのみでの撮影も可能となる。しかし、晴天時の屋外などでの撮影では、このEA50はNDフィルターを内蔵していないので、明るいレンズとの組み合わせではレンズ前球に付けるNDフィルターがほしいところ。現在は各社から可変NDフィルターなども多数発売されているので、これらの製品と組み合わせる事によって表現力を上げた撮影を行うことが可能となる。

NEX-EA50はベース感度がISO 160、FS100シリーズはベース感度ISO 500と、スペック的には確かに差がある。しかし実際に撮影してみるとEA50のS/Nの良さに感心させられる。少し暗く感じる室内でISO 3200まで上げてもノイズ感がとても少ない。十分実用範囲内であると実感した。

記録メディアにはメモリースティック PROデュオ、SD/SDHC/SDXCメモリーカードの他、NXCAMではおなじみのフラッシュメモリーユニット(HXR-FMU128)での収録が可能だ。メモリーステックとSDカードは同スロットでの対応。フラッシュメモリーユニットは本体後部側面に取り付けて使用する。このメモリーユニットを取り付ける事によりバックアップ収録が可能となり、より安心確実な運用が可能となる。

記録に関してはメモリーカードとメモリーユニットの記録は同期したものを収録している。現在はメモリーユニットへはRecトリガーに関係なく回しっ放しで収録し続け、メモリーカードに必要な部分だけカット収録するという事が出来ないが、2013年7月に予定されているファームウエアのVerUPにて、ハンドルとグリップのRecボタンにそれぞれのメディアへのRecトリガーを個別にアサイン出来るようになる機能の追加が決まったようだ。

NEX-EA50を運用する上でのポイントとは?

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本機を運用する上でのポイントはいかに「オートとマニュアルをうまく使いこなすか」に尽きる。ENGタイプのカメラと違いすべてマニュアル操作という事は当然難しい。筆者のお勧めはシャッタースピードとアイリスをマニュアル固定し、ゲインをオートという設定がお勧めである。何故ゲインかというと、レンズのアイリスは被写界深度を決定する大きな要素であるため、被写界深度を生かす場合、なるべく開放に近い数値にする。またシャッタースピードは動画の場合24P収録の場合は48/s 30Pの場合は60/sという関係があるのであまりいじる事が出来ない。静止画撮影の場合にはシャッター速度で適正露出を決定するが、動画の場合には当てはまらない。そうなると残された部分はゲインでの明るさ調整である。このカメラのマニュアルゲインはH,M,Lと三段階。メニューからそれぞれ任意の数値を設定する。マニュアルゲインでは切り替えた時の急な変化はこのカメラでも付いて回る。しかしオートゲインであれば非常に滑らかな変化をし続けることが可能である。

総括

このNEX-EA50というカメラは、DSLRカメラをより操作性の良いビデオカメラライクにしたという表現が自分的には合っているような気がする。レンズの操作という作業は、ENGレンズをよく使う人間からするとなかなか馴染めない部分かもしれない。しかしDSLR方向からのアプローチであるならば、すぐに受け入れられる魅力があると思う。積極的にレンズを交換し、またSpeed BoosterとEFレンズとの併用で、今までにない表現力を身につける事が可能な本機はよりクリエイティブな現場での活躍が見込める。

WRITER PROFILE

猿田守一

猿田守一

企業、CM、スポーツ配信など広範囲な撮影を行っている。PRONEWSではInterBEE、NAB、IBCなどの展示会レポートを行った経験を持つ。