急に秋。季節の変わり目、性格はねじ曲がっているくせに妙に素直に風邪をひいてしまい、現在発熱フェスを独り開催している永子ママです。さて、広告映像の在り方も今年の天候ほど急ではないにしろ、徐々に移り変わり、TVサイズのCMよりもWEBでのインタラクティブかつ実験的な映像が盛んに制作されるようになりました。

例えばこちら。インタラクティブなプロモーションとして一度紹介しましたが、これは何度見ても秀逸。

高橋酒造 米焼酎「白岳しろ」プロモーションムービー / HIRO Cheers System

監督は児玉裕一氏。この作品はWEBで公開され、最後まで見終わるとTwitterへの導入画面が登場、フォロワーや友人にカンパイコメントを送信できる仕組みとなっておりました。もう1つ、児玉監督の愛情がぎゅっとつまった、大人気WEBムービーをご紹介しましょう。子供の頃、実家で、おろしたての靴下を履くなり廊下をガンガン滑って転んでよく叱られたっけ。  

靴下屋「Tabio」/ Tabio Slide Show

ガールと靴下を可愛らしく描いたポップな世界観ながらも、商品をシンプルかつ魅力的にみせる手腕は男らしいという、児玉監督らしいジェンダーフリーっぷりを堪能できます。この作品は、公式サイトで見ると、商品カットをフリック操作できるしかけが成されています。i Pad用のアプリも完備しており、直接購入が可能です。

 一時期、インターネットサービスのTV-CMにて「続きはWEBで」という無駄が流行りましたが、「靴下屋 Tabio」はオンラインショップとあり、スムースなサービスを提供しています。ムービーとしての完成度も高く、商品の購買にも直結する、ダブルスタンダードWEBムービーの成功例です。

お次ぎは児玉監督と同じオフィス「キャビア」に所属する田中裕介監督の作品。

AXE SHOWER- NAVI ドキュメンタリームービー「SANSUKE ~the master of body wash~」

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AXEボディーシャンプのWebプロモーションはTwitterやニコニコ動画などと連動した様々なコンテンツをセレクトできるチャンネル方式。その中でも、お風呂のプロ、三助さんを敢えてドキュメンタリータッチでフィーチャーした「SANSUKE ~the master of body wash~」は大きな話題となりました。ド渋い & なかなか年季の入った殿方たちの裸祭的な内容ですが、秀逸なデザインセンスを持つ田中氏だけに、ユーモアのエッセンスと三助さんへのリスペクトを絶妙なバランスで両立させた、品の良い仕上がりとなっています。

 最後は、先月フィーチャーしたエレクロトニックと長添雅嗣らによるユニット「N・E・W」の作品。

SONY DAY CLIPPER

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ソニー製品で撮影した素材を、CITY(日本国内の10都市)項目と、TAG(色や食べ物、空など、全9種)項目とに分けて掲載し、ユーザーが自由に選択・閲覧できるしかけです。食いしん坊の私のお気に入りは、CITY=ALL + TAG=FOOD。 Jim O’Rourke (hさんのサウンドにも癒されます。現在はベータ版で、今後はユーザーが素材をアップロードし、オリジナル映像を作ることができるとのこと。ということで以下にDAY CLIPPERを実際に張り付けてみたわよ。。画面サイズは、固定なのであしからず…

そして映像の宇宙は、インタラクティブへ

どうだい?映像コンテンツは、今やユーザーとのコミュニケーションというアクティビティを獲得し、インタラクティブな広場へと拡張されています。私がここに紹介したディレクター陣は、ミュージックビデオやCMにおいて、クライアントやアーティストの意向、商品の方向性、ファンの傾向、ユーザーの期待、予算やスケジュールなどなど、多岐に渡る条件に対して真摯に向き合い、尚かつコンテンツとしての完成度を高めることも怠らないという猛者、つまりプロ。意図を汲む翻訳力と表現力によって素晴らしい作品を生み出して来た、そのエンタメサービス精神こそが、インタラクティブな映像表現への活路を導いたのでしょう。嬉しいね。そして今後も楽しみ。

WRITER PROFILE

林永子

林永子

映像ライター、コラムニスト、ラジオパーソナリティ。「スナック永子」やMV監督のストリーミングサイト等にて映像カルチャーを支援。