テレビ番組の企画制作を行っている幸喜(東京都中央区)は、作品の制作にアドビ システムズのProduction Premiumとブラックマジックデザインの入出力カードDeckLink HD Extremeを活用している。幸喜は、バラエティ番組の収録編集や、ニュース番組素材の取材編集を行っている。海外取材作品も多数扱っており、特に中国・青島市に現地法人を持っていることから中国関連取材も得意としている。制作部ディレクターの田川ひろぶみ氏はDeckLink HD Extremeの導入について次のように話した。

「現在のカメラは、さまざまなメディアが入り乱れており、何を中心にして収録すればいいのか分からない状態です。ハイビジョン放送は1440×1080解像度のMPEG 2-TSで、地上デジタル放送で15Mbps、BC・CSデジタルで23Mbpsです。ということはHDVの品質でも充分な画質が望めます。しっかりとしたレンズで収録できさえすれば、あとはコーデック品質の問題ということになります。当社で行う制作は、PAL素材やSD素材もあります。さまざまな素材をキャプチャするときに、ブラックマジック製品はコーデック品質がしっかりとしていたことから、2006年に導入しました」

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幸喜では、HDCAMやP2 HDで収録して欲しいという要望がなければ、HDVを中心にした収録を行っている。ドキュメンタリー作品などでは、45分番組でHDVテープ30本にも及ぶことも普通なのだという。これらの収録素材は、DeckLink HD Extremeを使用し、HD-SDI経由でキャプチャを行って内部4台・外部4台のRAIDディスクに記録。非圧縮データでは取り扱いがしにくいことから、ビデオキャプチャ後に1440×1080解像度のMPEG2素材に変換して、Production Premiumを使用して制作をしている。使用しているPC環境は、インテルXeonプロセッサをデュアル搭載するデル製64bitワークステーションPrecision T7400だ。

「現在、メモリは16GBを搭載して制作を行っています。約3GBまでしか認識できない32bit環境では、アプリケーションを切り替えながら長尺ものの編集を行うと、メモリを使い切って不安定になってしまいます。DeckLink HD Extremeは、64bit環境にいち早く対応したPCI Expressカードであったということも、導入した理由の1つです」(田川氏)

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データ納品用のRAIDディスクを収めたコンテナボックス。前後のフタを外せば、ディスク本体を取り出さずにPCに接続できる。

放送局への納品は、HDVテープに白完パケの状態で記録して放送局でテロップを入れるケースもあるが、データ納品をすることが増えてきている。データ納品では、ハードディスク単体で持ち込むほか、大容量データの場合は納品用のRAIDディスクに記録して収めている。この納品用RAIDディスクは制作用PCの外部RAIDディスクと同じ構成になっており、データ搬送用のコンテナボックスを製作して収め、移動時の振動などの対策をしている。

「RAIDカードは、安定性を重視して、ディスクトラブルの少ないAreca Technologyのカードを使用しています。RAID方式はRAID 0です。RAID 0+1で2つのRAIDディスクに書き込んでいく方式にもできるんですが、経験上、複雑な書き込み方式を使用するよりもRAID 0を使用して、ディスク間をコピーした方がディスクトラブルが少なかったんです。放送局のシステムでも同じRAIDカードを使用しているので、ディスク部だけを持ち運んで、放送局のシステムにマルチレーンコードを繋げば認識できます」(田川氏)

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幸喜ではDeckLink HD Extremeの最初のモデルを使い続けているが、最初のモデルから3年近く経つ現在のDeckLink HD Extremeは、HDMI入出力やデュアルストリームSDI、3Gb SDIにも対応している。

さまざまなフォーマットを1つのタイムライン上に混在できるようになってきたが、素材のクオリティを考えると、あらかじめ素材をHDサイズへとリサイズしたりフレームレートを60iに統一してから作業していると田川氏は言う。サイズやフレームレートの変更を、タイムライン上で自動で行うには、まだまだ品質が足りないと見ている。

「SDからHD/HDからSDというサイズ変更や、PALの50iからNTSCの60iへというようなフレームレート変換は、きっちり設定を行わないと最適な映像が得られないことが多いんです。画質を重視しながら、非圧縮HDからHDVやAVCHDといった圧縮フォーマットにしてくれるエンコーダーもなかなかありません。ビデオキャプチャの段階で、こうした変換をきれいに行えるアルゴリズムが組み込まれたエンコーダーが搭載されたカードは、今後の制作環境においては必要不可欠になっていきそうです。ブラックマジックから、こうしたカードが出てくれることを期待しています」(田川氏)

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