アップサイドは、「相棒」や「法医学教室の事件ファイル」(テレビ朝日)、「浅見光彦シリーズ」(フジテレビ)といったテレビ番組のほか、劇場映画版「仮面ライダーシリーズ」(東映)など、テレビドラマ、劇場映画を中心に手がける映像制作プロダクションである。同社では、特撮を含む様々な撮影をこなすために、撮影意図や撮影現場の状況、予算などに応じて最適なシステムを組み合わせて制作に挑んでいる。

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株式会社アップサイド・撮影部VEの佐々木 基成 氏

今回も約1ヶ月にわたるロケーションにおいて、2台のソニーHDW-F900とパナソニックP2カードレコーダーAJ-HPM110Jを組み合わせ、AVC-Intra100収録をするシステムを組んだほか、デイラッシュのためにホテルに簡易の編集・プレビューシステムを設営して撮影したという。

撮影を担当したアップサイド撮影部VEの佐々木基成氏は、仮面ライダーアギト、仮面ライダーG、仮面ライダーキバ(テレビ朝日)などの仮面ライダーシリーズのほか、シリウスの道(WOWOW)や劇場公開映画「ひゃくはち」(ファントム・フィルム)といった作品の撮影・VEを担当したこの道のベテランだが、Blackmagic Design MultiBridgeProを現場に持ち込みデイラッシュのシステムを組んだという。

「その日に撮影したデータをホテルでチェックしたり、バックアップを取るために、FinalCutProをインストールしたMacProにヤノ電器の8TB Trusty RAID EXとBlackmagic Design MultiBridgeProを組み合わせたシステムを設営しました。ファイルベース収録が初めてということもあり、私自身の安心感を得るためと撮影した映像をその日のうちに確認することが主な目的で、カットのつながりなどを確認するためにFinalCutProを、画像確認のために14インチCRTモニターやプロジェクターを持ち込んでいます」

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撮影現場では、リーダー電子LV5750やパナソニック17インチ液晶モニター、ソニーの9インチCRTモニターといった機材が使われた

通常ロケ現場では小型モニターや波形モニターなどで映像の確認を行うものだ。今回の撮影でもリーダーLV5750やパナソニック17インチ液晶モニター、ソニーの9インチCRTモニターといった機材が撮影現場で使われている。カメラマンやVEなど現場の技術スタッフたちは、最近一般家庭にも普及しだした大画面テレビや映画のスクリーンなど、大画面になったときの印象や映像レベルやピント、バックのボケなど技術的な事柄をこうした機材で確認できる経験と技術を持っているが、実際に一般の人たちが視聴する状態で映像を確認することは、プロデューサーやディレクターなど技術系以外の人たちにとってもわかりやすい。ハリウッドなど映画撮影現場では40インチ以上あるディスプレーを撮影現場に持ち込み撮影している例もあるほどだ。

「マスモニとして使った14インチCRTモニターはHD SDIで、プロジェクターはHDMI なんです。MultiBridgeProはHD/SD SDIやHDMI、アナログRGBなど様々な出力が同時に出るので、このような使い方には最適ですね」

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ホテルにMacProにヤノ電器の8TB Trusty RAIDとBlackmagic Design MultiBridgeProを組み合わせたシステムを設営

アナログの時代はコンポジット入出力さえあれば業務用でも民生用でも接続することができた。違いといえばコネクターの形状ぐらいだったので、変換コネクターで簡単に対応することができたのである。

HD時代になり、業務用はHD SDIに民生用はアナログコンポーネントかHDMIが主流になり、簡単に接続することができなくなってしまった。単純に信号を変換するだけなら、Blackmagic Designの各種小型コンバーターがあるので、最適な製品をそこから選べばよいのだが、今回の撮影では、バックアップや撮影ファイル受け渡し用のBlu-rayディスク焼きのためにPCが必要であったことからMultiBridgeProという選択になったのだろう。MultiBridgeProなら、コンバーターとしても機能するので、業務用機材からのHD SDIをHDMIやアナログコンポーネントへ変換することもできる。

「バックアップやカットの確認などスムースに作業を行うことができました。デイラッシュを行った結果、撮影カットの追加がありました」

NGが出て再撮というわけではなく、実際にカットをつないでラッシュを見た結果、新たにカットを追加したそうである。通常なら撮影が終了して編集の段階で気づくようなアイデアも撮影の現場で確認することですぐに対応できるというわけだ。

地上波、BS、CS、インターネットなど映像業界の競争相手は多く、いまや携帯でも動画が撮影でき、インターネットなどで一般に公開できる時代である。HD化により画質のクォリティは格段に上がり、それに伴い作品内容も充実したものが求められる時代になったといえる。高画質にはそれなりの作品の質が必要というわけだ。

Blackmagic Design MultiBridgePro http://www.blackmagic-design.com/jp/

劇場映画「銀色の雨」

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自然豊かな鳥取県を舞台に、高校2年生の陸上選手であり新聞配達員の平井和也と、昼はネイルサロン夜はスナックで働く菊枝、元日本チャンピオンのボクサー岩井章次の3人が織り成す物語。人間の再生や成長をテーマにした心温まる感動作である。2009年秋公開予定。

  • 監督:鈴井貴之 
  • 原作:浅田次郎
  • 出演:賀来賢人、中村獅童、前田亜季、大泉洋、他

*鳥取県の自然の豊かさを十二分に表現するため、カラコレには多くの時間を割いたことでAVC-Intra100 10bit 4:2:2の映像が持つ力を最大限に引き出すことができた。見応えのある芝居も加わり、とてもよい作品に仕上がっている。

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