アスク(東京都千代田区)が、In2Core(スロバキア)製のHDビデオアシストソフトウェアQTAKE HDの取り扱いを開始した。このソフトウェアに、AJA Video Systemsのビデオ入出力製品であるKONA3やIoHDと、素材を記録するRAIDシステムを組み合わせ、ターンキーシステムとして提供していくという。「HDビデオアシスト」とは聞き慣れない言葉だが、どうやら入出力製品というよりは収録をサポートする製品のようだ。アスクで詳しく聞いてみた。

QTAKEHD.jpg

アスクが取り扱う収録サポート製品としては、AJA Video SystemsのKiPROがある。これは、各種ビデオカメラからの出力を使用して、Final Cut Studio制作用のProResコーデックに変換・記録する製品だ。このようにKiPROが制作ワークフローの効率化をサポートする製品であるのに対し、QTAKE HDは収録作業自体をサポートする製品となっている。

QTAKEHD_touchpanelKB.jpg

タッチパネルディスプレイに対応しているので、文字は画面上のキーボードで入力できる。
 

QTAKEHD_metadata.jpg
フレームスピード、Fストップなどカメラ情報をメタ情報として整理することも可能だ。

皆さんは作品を制作する時に、新しいビデオカメラのテスト撮影をしながらLUT(ルックアップテーブル)を設定したり、シーンの収録時に全体のルックを設定したいと思ったことはないだろうか。あるいは、ブルー/グリーンバックを使用してクロマキー素材を収録する時に、収録素材と背景の位置を素早く確認したいということはないだろうか。複数の収録素材を即プレイバックして比べたい時もあるだろう。QTAKE HDは、こうした収録段階の作業効率を改善するためのソリューションなのだ。

「どの撮影現場でも、マスターモニタで収録時に確認したり、PC上でAfter Effectsなどを使用してカラーコレクションやコンポジットを仮編集したりして確認をしていると思います。QTAKE HDはこうした収録や素材確認の作業を効率化することに特化したソフトウェアなんです」こう話すのは、アスクで営業技術を担当する木下啓氏だ。「3D DVEのコンポジット確認やカラーコレクションをしたり、素材のイン点/アウト点を設定してEDLを書き出す機能もあります。またメタデータの作成や管理をすることで、収録を効率化することで、素材の確認済みでメタデータも揃ったデータをノンリニア編集システムに移行することで、作業をスムースに行いやすくなります」

現場で簡単に使用することを考慮して、タッチパネルディスプレイにも対応しているほか、撮影時のカメラセッティングや、露出やアイリスといったシーンデータなどのメタ情報をFinal Cut Pro用のXMLファイルとして書き出す機能もある。

RED ONE収録ワークフローにも対応

ファイルベース収録を効率化するQTAKE HDだが、もちろんRED ONEを使用した収録にも配慮している。RED ONEを使用する際に、バリアブルフレームレートを使用しなければ、4Kまたは2Kで23.98fpsまたは24fpsで収録することが多いが、RED ONEのSDI出力は720/60pになってしまう。QTAKE HDはリバースプルダウン機能を搭載することで、本来の収録フレームレートの23.98pまたは24pでビデオキャプチャできるようにしている。

QTAKEHD_reverspulldownRED.jpg

RED ONE出力を生かすためにリバースプルダウン機能を搭載。

「RED ONEの素材を使用してオフライン編集をしようとする場合に、もっとも効率的なソリューションになると考えています。リバースプルダウン機能に加えて、Red Mag Synchronization機能を持っています。RED ONEのR3Dファイルは英数字が連なったもので内容を判別しにくく、オフライン編集素材とコンフォームする作業の課題となっています。Red Mag Synchronizationにより、オフライン素材と、REDが生成したファイル名とメタデータを一致させることができ、作業を円滑に進めることが可能になります」(木下氏)

最近のノンリニア編集は大容量のR3Dファイルをネイティブに読み込んで編集することも可能になってきているが、より軽い720/24p素材を利用してオフライン編集をした上で、Red Mag SynchronizationでR3Dファイルのコンフォームをすることにより、ノンリニア編集システムの負荷を軽減させることも可能になりそうだ。

収録素材ごとに3D LUTを適用可能

QTAKEHD_LUTpreview.jpg

3D LUTsファイルを読み込んで、収録現場でシーンのルックを確認できる。残念ながら、現場で修正したルックを新しい3D LUTsとして書き出すことはできない。

テスト収録素材を使用して仮編集を行い、あらかじめベースとなる3D LUTsを作成してシーンの色味を決めておくようなケースもあるだろう。本収録の現場で、作成した3D LUTsファイルを読み込み、収録素材に適用することでプリグレーディングを行い、編集段階のルックを確認することもできる。

カラー処理やエフェクト処理はGPU処理を行っていることもあり、非常にスムースだった。変更したパラメータ設定はリアルタイムに適用され、プレビューが行われる。この処理は、RED ONEのR3Dファイルを使用しても同様だ。収録直後に、現像パラメータを変更しながら、ルックを決めていく作業もストレスなく行えるのには驚かされた。

ステレオスコピック3D収録の現場確認にも対応

今年のトレンドとして注目が集まっている映像表現に、ステレオスコピック3Dがある。Blu-ray Discの規格化次第では、来年にも3D対応ハイビジョンテレビや3D対応Blu-ray録再機も発売されそうな勢いだ。こうなってくると、問題となるのはコンテンツ制作だ。一歩先を行くのはアニメーションコンテンツとなるだろうが、実写コンテンツも欲しくなってくるはずだ。現時点で、9月のVFX特集でも触れているが、ステレオスコピック3D収録の課題は大きい。収録時や編集時に3Dの視差調整や確認をするための機材が高価であり、誰もが気軽に取り組めるというものではなかった。

QTAKEHD_Stereoscopic3D.jpg

ステレオスコピック3Dの各方式に対応したプレビューが可能だ。

QTAKE HDは、ビデオ入出力カードのKONA3を使用すると2系統のSDI入力が可能になることを生かし、ステレオスコピック3D収録の確認も可能だ。ラインbyライン、サイドbyサイド、アナグリフの各方式に対応しており、収録時にライブプレビューをしながら視差調整をすることができる。高価な機材を導入/レンタルすることなく、視差調整を追い込めるようになったことは朗報だ。

────

QTAKE HDは、「ビデオアシスト」という地味な存在だけに、使い勝手が命とも言えるソフトウェアだ。各ノンリニア編集システムで扱える汎用的な書き出しファイルはEDLであったり、設定したルックを3D LUTsファイルとして書き出す機能がないなど、まだまだ荒削りな部分は多い。しかし、コンポジット素材の確認作業やステレオスコピック3D用の視差確認など、現場で時間をかけなければならなかった作業の簡略化は進められそうだ。今後のバージョンアップを大いに期待したいソリューションだ。

WRITER PROFILE

編集部

編集部

PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。