ハイエンドのクォリティを身近なものに

去る10月7日、東京・千代田区神田の富士ソフト秋葉原ビルAKIBAシアターにおいて、ソニーHDCAM-SR MXFファイルフォーマット”SStP”へのノンリニア編集機対応およびF35最新ソフトウェアV2.0、SRW-5800/5100の新機能などの発表・デモが開催された。このときの発表で解説された項目のうち、いくつかの質問事項を投げかけたのだが、この度、個別インタビューという形で質問に答えて頂いた。

回答して頂いたソニープロフェッショナル・ソリューション事業本部コンテンツクリエーション・ソリューション事業部CCS企画マーケティング部3課シニアビジネスプランナー宮本佳則氏とソニープロフェッショナル・ソリューション事業本部コンテンツクリエーション・ソリューション事業部設計1部統括部長桐山宏志氏

Q: RGB配列のセンサーについて。フィルムに匹敵する色域をカバーしているのは、フィルターの分光や画素の分光感度に工夫があるのでしょうか。また、RGBを1画素として扱うために何か工夫があるのでしょうか。

sonyhdsr02.jpg SRW9000PL/F35のカラースペースはフィルムを上回る広い範囲をカバーしている

A: カラーフィルターの分光の最適化を行っており、フィルムをリファレンスとして、広い色域が取れるようにしています。またRGBストライプ構造のセンサーを採用していますので、HDの1ピクセルにRGBが全て含まれており、3板式と同等なRGBの解像度が得られます。それにより、純度が非常に高い色再現と最高の解像度を実現しています。 ベイヤー配列の場合は周辺の画素を演算して作り出しているので、ある意味本当の画素ではありませんし、Gchに対してR、Bchの画素は半分しかありませんから、基本的にRGBに比べ解像度が落ち、色情報に偏りが発生してしまいます。

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ベイヤー配列とRGB配列のセンサーにおける色情報の違い

HDの1ピクセルの中にRGBが全て含まれている

Q: RGBは3つでスクエアな1つのピクセルになっているのですね。RGBの画素がずれていますが、なにか処理をして1つの画素にしているのでしょうか。またカラースペースの色度図にあったフィルムはネガでしょうか。

A: はい。中心にある画素にあわせるような位相の調整処理をすることで、RGBのフルピクセルの解像度で且つ正しい色の再現ができるようにしています。カラースペースの色度図にあったフィルムはネガです。

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InterBEEのソニーブースに出品されたSRW-9000PLとConverget Design Nano Flash

Q: オフライン同時記録として、Converget Design Nano Flashを採用していましたが、それ以外のレコーダーも使用可能なのでしょうか。そのとき同期して記録することが可能なのでしょうか。

A: 今回のInterBEEでもConverget Design Nano Flashをオフライン用途の組み合わせで出品していますが、当社でもオンライン用レコーダーを開発中です。すでに弊社のInterBEE プレスコンファレンスでもお知らせしましたが、SRメモリーカードを採用し、来年中に発売する予定です。HD-SDI Dual-linkに対応しており、4:4:4の記録ができます。

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SRメモリーカードは映像制作に最適なメモリーコントロールを行うことで5Gbpsの転送レートを実現している

Q: SR-Liteについて。このモードで記録再生できるカメラやレコーダーなど、今後の対応についてお聞かせ下さい。

A: 開発中のSRメモリーレコーダーはSR-Lite記録が可能で、1TBのメモリーで8時間の記録を実現しています。大きさはラージタイプのバッテリーと同じくらいで、お手持ちのカメラに接続してSRフォーマットの記録が可能です。つまり手持ちの資産を最大限に活用しながらSRフォーマットを使って頂くことができます。

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17日午前中に開催されたプレスコンファレンスで公表されたSRメモリーポータブルレコーダー

Q: SRメモリー化について。対応したカメラやVTRが新規に開発されることになると思いますが、従来機種からのアップグレードなどは考えられるのでしょうか。

A: SRW-9000/PLではテープトランスポート部分をSRメモリーにするアップグレードを計画しています。

Q: テープトランスポート部分だけで済むのでしょうか。信号処理系とかゴッソリ入れ替えるような大規模なものになりませんか。

A: すでにこうしたアップグレードを前提にして設計されていますので、最小限の交換部品で済みます。現状では、テープのいいところとメモリーのいいところをお客様が選んで使って頂けるようにシステムやラインナップを構成しています。テープからメモリーへ効率的に橋渡しできるように配慮しています。

Q: SRメモリーは5Gbpsの転送レートと1TBという容量ですが、非圧縮という方向性は将来的に考えているのでしょうか。

A: カメラのところではそこまでやらなくてもいいのではないかと思っています。ただ、DIなど後処理では様々な処理を行いますので、非圧縮というのも重要だと思います。撮影の段階では画質に影響が無い限りコンパクトに収録できる圧縮が求められます。SRは220Mbps、440Mbps、880Mbpsという3つの記録モードを持っていますが、220Mbpsでも単純にカットをつなぐだけとか、オフライン用途では、充分な画質を持っています。後処理でちょっと複雑な処理をするというのであれば、440Mbpsや880Mbpsを選択していただくことをおすすめしております。記録レートは高いに越したことはありませんが、システムやワークフロー、環境などもそれに見合ったものが必要になるわけで、製作される作品の内容やコストなどでお客様に最適なものを選んで頂けるようにすることが重要だと考えています。

Q: 将来4kへの対応は考えているのでしょうか。

A: 開発のターゲットとして見据えています。HDから4kへは、非圧縮HDから圧縮4kというロードマップになるのではないでしょうか。4kの1/4圧縮はHDの非圧縮と同等のデータレートになりますから、SRの圧縮技術が生かせると思います。

カメラから記録フォーマットまでSRはビデオの頂点を行く規格といってよいだろう。そのSRもテープからメモリーへ、さらにリーズナブルなワークフローをも提供しようとしている。SRメモリーポータブルレコーダーが発売されることで、高嶺の花と言われるSRもより身近なフォーマットととなり、それに見合ったカメラなども必要になってくるだろう。近いうちになにか発表される事が予想されるだろう。

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