映像業界をカバーする傾向になった3D&バーチャルリアリティ展

6月22日より24日まで東京ビッグサイトで「第19回 3D&バーチャルリアリティ展」が開催された。設計・製造ソリューション展や機械要素技術展、メディカル テクノロジーEXPOの4展同時開催のイベントで、東1ホールから東6ホールの東展示棟をすべて使って行われるという盛大なイベントだ。「日本最大の専門技術展」をうたうだけあって、今年も来場者は非常に多かった。その内、3D&バーチャルリアリティ展には東1ホールのだいたい半分ぐらいの面積を使って、約50~60社を集めて開催された。

3D&バーチャルリアリティ展は、2年前まで画像解析やバーチャル空間関連を専門とした「産業用バーチャルリアリティ展」という名称で行われて、その名の通り決して映像制作者をカバーする展示会とは言いがたかった。ただし、近年は4Kディスプレイやそれらの関連カメラなど、次世代映像や放送技術の展示も充実してきていて、今年もレッドローバーやナックイメージテクノロジー、ダイキン工業など映像制作でおなじみの会社もいくつか出展していた。4月に行われたNABの新製品も多数展示されていて、見逃せないイベントだと感じた。会場で展示されていた注目の新製品を紹介していこう。

ナックイメージテクノロジー

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デモが始まるとかなりの人を集めていたのがナックイメージテクノロジーのモーションキャプチャシステム「MAC 3D System」だ。特徴は、屋外でキャプチャが可能なところだ。通常の光学式のモーションキャプチャは外の光が入らない密室のスタジオで行われるのが一般的だが、独自のアルゴリズムにより世界で初めて野外でも使用できるようになっている。スタジオを抑える手間を省けたり、従来、屋内スタジオではできなかった”ボールを蹴る”や”ボールを打つ”などのスポーツを実際に実演しながらのキャプチャなど、新しい使い方ができそうだ。


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セットアップ、キャリブレーション、データ収集、ポストプロセス、モデリング、プレゼンテーション作成など全てのキャプチャワークをカバーする基幹ソフト「Cortex 2」。ほかに、筋骨格モデル動作解析ソフトや筋骨格モデル動作解析ソフトなどのオプションの解析ソフトなど幅広ソフトに対応するのも特徴だ。


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今年の春に発表された同社のハイスピードカメラのトップエンドモデル「HX-1」も展示されていた。500万画素の高解像で130万コマの高速撮影対応という、世界最高クラスを実現している。同社のハイスピードカメラ自体は自動車の耐久性など、研究や開発、試験、評価の現場で使われていることが多い。

クレッセント

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昔からバーチャルリアリティ展でヘッドマウントディスプレイを出展しているクレッセントだが、今年もブースで一番目を引いたのは2機のフルHD対応のヘッドマウントディスプレイ「HEWDD-1080」のデモだ。希望すれば体験可能で、多くの人が楽しんでいた。


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ヘッドマウントディスプレイの目の位置には左右独立したディスプレイがセットされていて、頭の動きに合わせて映像も動き、360度の映像を楽しむことができるようになっている。実際にかぶると、部屋の中にいるシーンが体験できるようになっていた。


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ヘッドマウントディスプレイには、映画「河童」や「HINOKIO」で監督を勤めた秋山貴彦氏が制作した「ハートDeバビューンVer2.0」が公開されていた。動き回るだけではなく、銃を持って撃つこともできるようになっていた。

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ロボット遠隔操作デモンストレーションもかなり注目を浴びていた。手指形状推定という技術を使ったデモで、天と横に設置された2台のカメラに自分の手を映すと2台のカメラから輪郭線をとって、パソコン内に入っている輪郭線のデータと関節角度が入ったデータとマッチングを行い、3次元で指一本一本を正確に推定するという技術だ。ロボットの手は、握ったりつまむような細かい動作も可能だという。


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ロボットとカメラの間はネットワークでつながっていて、どんな遠隔地でもほぼリアルタイムにロボットの手をコントロールすることができる。遅延はほとんどなく、ロボットのモーター制御による遅れぐらいだという。将来は遠隔地の医療などに使えるかもしれない。

グローバルウェーブ

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世界初のメガネ不要の3Dシート「Pic3D」が展示されていた。ブースに用意された液晶テレビ、パソコン、スマートフォン、iPadなどの液晶にシートが貼られていて、そのシートを通すと裸眼で3Dが体験できるというものだ。


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このシートはサイドバイサイド方式のコンテンツに対応するもので、横幅が2分の1に圧縮されたコンテンツがシートを通して見た瞬間1つになって3Dに見えるのにはちょっと感動する。シートは簡単にはがすこともできるのも、特徴の1つだ。視野角が120度あるので複数の人数でコンテンツを楽しめたり、ニンテンドー3DSで採用されるパララックスバリア方式よりも明るいという特徴も持つ。アクリルやペット、ポリカーボネートでも注文があればどんな素材でもシートを作ることが可能とのこと。「製品版は硬くて下敷きっぽいものにしたい。ポリカーボネートになるのでは?」と説明してくれた。

ピコハウス

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展示していたのはオーサリングライティングシステム「Easy3D」とNAB 2011で世界初公開されたばかりのオーサリング・編集ソフト「Easy3D BDJ」の2製品だ。Easy3Dは、3DのコンテンツをフルHDのままBlu-rayの規格の「Blu-ray 3D」対応のディスクを作ることができるものだ。もう1つのEasy3D BDJは、3Dコンテンツのディスクを作れるほか、Blu-ray Javaの機能を使い、多彩で動きのあるメニューや動きのあるディスクが作れるというソフトだ。通常、Blu-rayのJavaを使ったオーサリングを行うとなると、Javaの知識が必要でプログラミングするしかなかった。Easy3D BDJは、Blu-ray 3Dの規格やプログラミングの知識が不要でBlu-ray Disc Javaモジュールを自動で生成することが可能というのが特徴だ。


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Easy3D BDJのターゲットは、3Dのコンテンツを使ってデモやプレゼンテーションをしたいという場合だ。例えば、建設業者が3Dでプレゼンをしたいと希望をしても、従来はなかなか実現できなかった。このような場合は、Power Pointの3D版みたいな感じで、Easy3D BDJが使えるのではないかとのことだ。

ダイキン工業

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今度のSIGGRAPHで発表される予定の「Wave3D」が参考出展されていた。VRコンテンツが制作できる統合ソリューションで、韓国から開発の方も来日していた。VRシステムはプログラマが開発をするのが一般的で、コンテンツの開発に携わるには相当なスキルが必要だ。Wave3Dは、アーティスト向けのツールで、「このモデルをクリックしたらこうなる」というような構造をTreeシステムで制作できるようになっている。ブースでは、カメラでマーカーを撮影すると、3Dの恐竜が動くコンテンツが表示される絵本のデモを見せてくれた。このCGのデータやアニメーションは別の3D CGソフトで制作したもので、それをWave3Dに読み込んでオーサリングを行って作られたコンテンツだという。


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Autodesk CG製品の最新バージョンも展示されていた。MotionBuilderがワンクリックで行き来できるようになったことや、Creation Suiteになってデータ連携ができるようになってきていることをアピールしていた。例えば、SoftImageにはICEという機能があるが、SoftImageで作ったデータをMayaに持ってきて、MayaのPartcleにすることができるようにするようなことも可能になっている。また、すでに3ds Max 2012のユーザーでSoftimage 2012を使ってみたいという人はメーカー希望小売価格22万円でCreation SuiteのPremiumエディションにアップグレードすることができるという。3ds Max またはMaya、Softimage、MotionBuilderがついてくるという非常にお手ごろなパッケージがあることもアピールしていた。

レッドローバージャパン

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レッドローバーのブースでは、3Dコンテンツのカメラ収録から素材編集、プレビューまでをカバーするワークフローが展示されていた。4Kの3Dの収録・記録/再生・表示が一堂に公開されるのは国内初めてだという。今年4月のNAB 2011で発表された新製品がいち早く多数展示されていて、かなり見所が多いブースとなっていた。カメラリグシステムの新製品が多数展示されていた。

まず目を引いたのはハーフミラー型の中型リグ「M-500N」だ。マニュアルとモータ駆動ができるようになっているほか、レンズ間の距離、輻輳角、コンバージェンスをプリセットできて自動で調整できる。セットアップが簡単で、軽くて価格は安く、作業的な工程が短くて済むというのが特徴。搭載されているポータブルな8インチ3D対応ビューファインダーは別売りのもので、バッテリー駆動に対応しフィールドで使うことも可能だ。


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こちらは小型ミラーのリグ「M-500S」だ。M-500Nと同じマニュアル駆動とモーター駆動ができるのが特徴で、かつコンパクトにしたモデルだ。重さも10キロぐらいで、ショルダーで持つことも可能だ。


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平行小型リグ「S-100N」も新製品だ。東芝のIK-HD1Hが搭載されていた。狭いところやクレーン、ステディーカムなどで撮影するには最適であろうとのこと。こちらもマニュアル駆動とモーター駆動の両方に対応する。


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12インチのポータブルな3D対応ビューファインダーも新製品だ。バッテリー駆動が可能で、撮影した映像のプレビューができる。


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レッドローバーのブースでもっとも注目を浴びていたのは計測技術研究所と共同開発をした世界初の27.8インチの4K 3D LCDモニタだ。国内の展示会に初めて出展されたこともあり、話題になっていた。ハーフミラーを使用して、LCDパネルを2枚使用して右目と左目それぞれに解像度を落とさずにハイクオリティな4K映像を見られるというのが特徴だ。実際に見てみると、当然フリッカーもない、スムーズな映像が確認できた。解像度落ちが生じないので、オリジナルに忠実な3D編集にこだわりたい現場に重宝されるのではないか。リリースは今年の年末を予定している。


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4K 3D LCDモニタと組み合わせて展示されていたのが、計測技術研究所の4K-3D対応DVI-D入出力レコーダー「UDR-40S-DV」だ。4または8チャンネルDVI入出力を装備した2機種のラインナップがリリースされている。


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3次元を使ったプレゼンテーションが行えるソフトウェア「True3DPT」のデモも行われていた。PowerPointの3D版のようなソフトだ。


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TooのシステムでMacとWindowsに対応した3D編集環境も展示されていた。MacはKONA 3G、WindowsにはDeckLinkがインストールされて展示が行われていた。


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収録機として、計測技術研究所のポータブルレコーダー「UDR-D100」が展示されていた。2Kの非圧縮で3Dが撮れるのが特徴だ。非圧縮なのでハイレゾリューションのデータ加工や映画などに最適であろう。ほかに、LCD画面で撮影映像をプレビュー機能したり、もちろんバッテリー駆動によるフィールドワークでの使用も可能だ。


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もう1つのポータブルディスクレコーダー「Cinedeck」も展示されていた。従来、2台のカメラを使った3D収録した映像をプレビューしようとしても同期再生できなく確認をするのが大変だったが、Cinedeckで3D収録をすれば、現場でステレオ再生が可能になる。また、Neo3Dに対応しているので、収録した後の編集工程まで非常に楽ができるのも特徴だ。記録メディアはSSDでカートリッジのように取り外しが可能で、PCやMacにドックをつなげてソフトウェアでデータを吸い上げて、編集にもっていけるのも特徴だ。

日本ビクター

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ビクターブースでは、4K2Kプロジェクター「DLA-SH7NL」を右目と左目の2台使用して4K-3D映像を150型の大画面で視聴できるというデモが行われていた。


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3D対応モニタも2機種参考出展されていた。24インチの3D液晶マルチフォーマットモニター「DT-3D24G1」 は近日中に発売。32型の3D液晶モニタは来年1月ぐらいの発売を予定している。ともに制作業者がターゲットの業務用で、円偏光方式を採用している。


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リアルタイムで2Dのハイビジョン映像を3Dに変換するプロセッサ「IF-2D3D1」をバージョンアップするソフト「TS-2D3D1V3」が展示されていた。実際にバージョンアップを適用した映像がデモされていた。今まで画面から奥行き方向に3Dを作っていたが、今回は画面より手前のほうに飛び出し感のある映像も作れるようになった。

レッツコーポレーション

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光学12倍ズーム、フルHDカメラを2台搭載した2眼式3Dカメラが展示されていた。カメラは、HD-SDI×2(左右)映像出力で、内部同期のほかにブラックバースト信号による外部同期にも対応する。一体型なので、撮影のセッティングが簡単というのも特徴だ。ブースでは、デモで稼動していた3Dカメラに自分が写ると配布されているメガネを通して自分自身が飛び出して見えるということで、カメラに向けて手の伸ばして自身の立体視を楽しんでいる人が大勢いた。


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3D酔いや3Dを長時間見ると疲れるといった原因となる視差の問題をリアルタイムに評価するシステム「DepthChecker」も展示されていた。視差が離れすぎている場合や奥行きが出すぎている場合を赤や青で警告してくれるというシステムだ。

リーダー電子

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ブースに展示されていたのは立体視効果を測定、シミュレーションするソフトウエア「3D アシストスタジオFS 3090」だ。昨年のInter BEEでも出展したが、そこからさらに進化していた。どのぐらい視差がオーバーしているのか?ということを確認することができるシステムだ。


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基本的には、3D映像の左目用映像と右目用映像の視差を測定して、設定したしきい値からヒストグラムを作り、そこからオーバーしたものを色付けして警告してくれる。奥にいくほどグリーンで、手前ほど赤という形でオーバーしたのが画面上のどこなのかがわかるようになっている。測定したデータは全部ログに記録できるというのも特徴で、Excelなどに取り込んで分析したり、あとはプリントアウトしてコンテンツに添付して収めるといった使い方も可能だという。ターゲットは制作側やテレビ局、プロダクションといった制作側だが、最近は展示会でデモをしていると、いろいろ表示機器メーカーからも引き合いがあるという。

ジオ技術研究所

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3D&バーチャルリアリティ展に合わせて初めて参考出展されたのが3D地図データの「Pegasus eye Map」だ。ジオ技術研究所が持っている3次元デジタル地図をあらかじめレンダリングしたもののみを表示させたもので、スマートフォンやタブレット端末のような低スペックの機器でも三次元デジタル地図が使えるというのが特徴だ。ブースではPegasus eye MapとYahoo!のサービスを連動させたもデモが行われていた。2Dの地図と違って、Pegasus eye Mapになるとビルの高さや街の密度が一目瞭然になるのがよくわかる。


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スマートフォン上のような非力なデバイスで高速なレンダリングをアピールしていたのが、高精細3次元デジタル地図のリアルタイムレンダリングを可能とするソフトウェア「GAREM」だ。ナビゲーションシステムのような三次元デジタルデータを使ってリアルタイムに描画させたいという場合に、3D地図データを高速に描画するためのミドルウェアだ。3Dを描画するための必要な関数などを用意しているので、少ないコーディング量で3次元描画ができる。OpenGLと比べてコーディング量を1/500程度に減らせるという。また、3DやOpenGLの知識が必要ないので、開発のコストも抑えられるのが特徴とのこと。

サカタインクス

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サカタインクス自体は元来、新聞用インキや商業印刷用インキ、包装印刷用インキを扱うインキメーカーだが、3DとARは今後新しい技術として絶対に必要ということで開発にも積極的に力を入れている。デジタルカメラで撮った写真だけで完全な間取り向けの3Dデータを作るという技術「3Dプランナー(仮)」のコンセプトや開発サンプルが展示されていた。15~20枚の写真から3Dオブジェクトを作成するというサービスだ。クラウドにある3Dプランナーのサーバに画像を送信すると、自動的に変換が開始される仕組みになっている。


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もう1つは名刺レベルから使える”AR制作サーバ”のサービスだ。名刺にカメラをかざすと、映像が再生されるというデモが行われていた。このような映像を制作するのに携帯電話で動画撮影をしてAR制作サーバにアップをすれば自動でARコンテンツを生成するというものだ。

ジェイアイズ

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ARiadneと呼ばれるマーカーレスでのAR表示を可能にするソリューションを展示していた。認識マーカーをiPhoneのアプリのほうに登録をしておけば、登録物を撮ると動画が再生されるというものだ。デモでは、ごく普通の印刷物のポスターをiPhoneで撮影をしたら、映像の再生が始まった。このポスターには2次元コートやマーカーもない。すでにあるものを登録すればいいというのが特徴で、AR用に新たしく印刷をする必要はないというのがウリだ。

インターリハ

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注目はアイトラッキングシステムの「DIKABILIS」だ。視野を見るカメラと目を見るカメラを頭部に装着してアイトラッキングを行うというシステムだ。


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応用として、通常のモーションキャプチャと組み合わせて、「動き」と「視線」を同時に記録できるシステムとして使うということも多いという。例えば、車の運転中にどのようなハンドリングをしているか?といったような熟練者と未熟者の違いの検証にも使えるという。また、車内のパネルのデザイニングの際に、なにをどこにどう配置したら最適か?ということを、目線と動きを記録して検証するなど、自動車関係のメーカーに採用されていることも多いという。

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