米アドビ システムズ社のプロダクトマネージャでPremiere Pro担当のアル・ムーニー氏が8月上旬、来日した。ムーニー氏は、サンノゼにあるアドビ本社で、今後どのような機能が要求されているのか、また実装されるべき機能を明確にするなど、製品の仕様や機能からサポートに至るまでの全般を担当しているキーマンだ。Premiere Proを大きく進化させた64ビット化の誕生に至るまでの経緯や、今後の開発の方向性など、東京・大崎のアドビ システムズ株式会社で話を聞くことができた。

Premiere Proの将来性を探る

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Premiere Proのプロダクトマネージャー、アル・ムーニー氏

最近、いろいろな人からPremiere Proの評判の良さを聞く。実際に使ってみるとネイティブで扱えるファイルの多さやパフォーマンスが快適と言う人が多いようだ。この評判のきっかけなっているのが、64ビットネイティブ対応だ。開発をこのように振り返る。

まず、話は2010年に発売したCS5にさかのぼります。CS5を開発するにあたりプロの編集者や放送業界の方に”今どういうものが必要か?””将来どういうものが必要になるのか?”ということをじっくりと聞きました。その結果はパフォーマンス+安定性ということでした。それらを実現するために、私たちはアプリケーションを1から書き直しました。ネイティブで64ビットをサポートして、しかもMacおよびWindowsをサポートできるものを1から作り直したのです。同時に、非常に重要なテクノロジーであるMercury Playback Engineを初めて搭載しました。テープレスのワークフローが増えていることから、変換せずにそのまま再生・編集できる機能も実現しました

最近のノンリニア編集ソフトの話題といえば、今年4月のNABで発表されたApple Final Cut Pro Xだ。Final Cut Pro Xが発表されて以来、Premiere Proに注目をするという話をよく聞く。実際のところ、ムーニー氏もFinal Cut Proユーザーの視線を強烈に感じているという。

NABで行われたFinal Cut Pro Xの発表は、ノンリニア編集の業界を結構震撼させました。他社の商品に対してコメントをするというのは控えますが、少なくてもアドビが行ったプロの編集者を対象としたグループインタビューでは、多くの人たちが”疎外感がある””だいぶ違ってしまった””置き去りにされた感じがする”というふうに言っていました。そういう状況だからこそ、ますますPremiere Proに目が向くのだと思います。

実際のところ、Avidから切り替える人、Final Cut Proから切り替える人が増えてきています。ですので、AvidやFinal Cut Proから移行してくる人を意識した使用感というのも取り入れています。例えば、Avid Xpress DVやFinal Cut Proで慣れた編集者の方がそのままPremiere Proでも操作感が近くなるようなキーボードショートカットのプリセットを搭載しています。

また、AvidやFinal Cut Proを利用しているプロの編集者に対して、Premiere Proを実際に操作してもらった場合の調査も行っています。これにより、Premiere Proでの編集作業における問題点を洗い出し、操作の上で戸惑いがあるように見られた機能を中心に改善しています。この改善によってエディターの方は、わざわざ学習しなくても自然に操作方法が理解できるような仕上がりにしています

北米では7月1日から競合製品のユーザーがPremiere Pro単体やスイートを半額で購入できるSwitchキャンペーンを開始した。キャンペーンは開始から一ヶ月経ったが、反響は凄いという。

価格半額キャンペーンを案内するWebページを訪れる人の数はすごい増えています。Premiere Proの体験版のダウンロードにいたっては1,000パーセントも増えました。売れたパッケージの個数も大変増えています

魅惑の価格半額キャンペーン始まる

このSwitchキャンペーンは日本でも開始され、キャンペーン専用版製品は、ライセンス版は8月8日から、パッケージ版は8月19日からアドビストアならびに量販店で購入が可能だ(http://www.adobe.com/jp/joc/switch/)。日本のキャンペーン対象製品は、Apple Final Cut Proのバージョン1.xから7(FCP Xは対象外)またはAvid Media Composerの全バージョン、Grass Valley(旧Thomson Canopus)のEDIUSの全バージョン(EDIUS Neoは対象外)など、指定の他社製ビデオ編集ソフトウェアのユーザーはCreative Suite 5.5 Production PremiumまたはPremiere Pro CS5.5単体を約50%オフで購入できるというものだ。期間は9月30日までだ。

昨年も同様のスイッチキャンペーンが行われたが、それよりも手続きは簡単なものになっている。先にSwitch!キャンペーン専用版製品を購入後、キャンペーン専用のWebページで申請書をダウンロードして、必要事項を記入してオンラインで申し込むと完了確認通知が事務局から届く。ただし、申請の完了確認通知の前でもキャンペーン専用版を使用することは可能だ。

最後に、ムーニー氏は今後のPremiere Proの方向についてこう語ってくれた。

Apple Final Cut Pro Xの登場によってより多くの方の目がPremiere Proに向くということはありがたいことなのですが、それとは関係なく私たちはもともと持っている”NLEの快適さ””楽しさ”そして”生産性の高さ”を追求していく戦略にまったく変更はありません。Final Cut Proの動きに左右して商品を開発してきたわけではまったくありませんし、今後もアドビとして”Final Cut Pro 8″のような製品を実現すればいいと思っているわけではありません。状況の変化というものもありますが、現在のPremiere Proの評価はリッチでパワフルなものを作ろうという戦略によって成功したものです。もちろん、他社から移行してくる人にとっては 移行しやすい、移行しても 馴染みのあるようなものをつくっていきたいと思うのですが、私たち自身の革新を続けることが大事だと思っています。

これからさらに快適で、驚くようなパワフルで革新てきなものを作ることによって、切り替えてきた人を含め、多くの人が今後Premiere Proの永久的なユーザーになってくれると信じています

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