NAB Show 2012で発表されたノンリニア系のホットなニュースを挙げるならば、機能の刷新や大幅な価格改定を行ったオートデスクのSmoke 2013であろう。FlameやSmokeというと、ポストプロダクションを始めとした一部のプロしか利用することができないフィニッシングソフトウェアだが、それが50万円台でリリースされるというのだから驚かないはずがない。そんな今話題のSmoke 2013の特徴や優位性について、Autodesk After NAB 2012に合わせて来日した米国オートデスク社のマーカス・ショーラー氏とマーク・ハマカー氏に話を聞いてみた。

注目のSmoke 2013更なる話を訊いてみる!

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米国オートデスク社のメディア&エンターテインメント部門テクニカルプロダクトマネージャーのマーカス・ショーラー氏(左)と、米国オートデスク社メディア&エンターテインメント クリエイティブフィニッシングプロダクトマーケティング シニアマネージャーのマーク・ハマカー氏(右)

NABでSmokeを発表されましたが、反響はいかがだったでしょうか?

マーク・ハマカー氏:非常に好評です。Smokeは皆さんにとってはいい意味で驚きだったようで、とても話題になりました。ブースに来られた方の中では、今までオートデスクのブースに来られなかったような方々も多数いらっしゃいました。たぶんSmokeのアナウンスメントで来られた方たちなのではないかと思います。どれぐらい皆さんが新しいSmokeを歓迎してくださっているか、1つの指標になる数字もご紹介しましょう。NABで6月4日からダウンロードが可能なプレリリーストライアルの登録を呼びかけました。これは事前登録が可能です。そうしたら、NAB期間中で3,500人が登録をされて、その後の1週間で1,000人の方が登録しました。現在の登録総数は7,000人で、最終的には1万人ぐらいになるのではないかと思っています。それぐらい皆さん、Smokeを楽しみにしてくださっています。

Smoke 2013は前バージョンより大幅な刷新が行われましたが、どのような特徴がありますか?

マーク・ハマカー氏:3つの大きな特徴があります。1つ目はユーザーインタフェースのデザインを完全に設計し直したことです。Final CutやMedia Composerなど基本的な編集をされている人たちにはすぐに使いこなせるようなユーザーインタフェースを搭載しています。

2つ目は、システム要件がより低くなりました。なるべく汎用性を持たせるためにMac Proでなくても使いこなせる様になっています。NABでは、MacBook ProやiMacにThunderbolt対応のストレージを組ませて、実際にデモを行いました。今まででしたらば、編集用のスイーツを揃えないと使えなかったような効果が、敷居の低いプラットフォームでも使えるようになったわけです。

3つ目は、ConnectFXと呼ばれるノードベースのコンポジティング機能の搭載です。従来までノードベースのコンポジティングというと、アップルのShakeやFlameといったハイエンドのエフェクトツールのみに搭載しているというイメージでした。しかし、Smoke 2013はConnectFXを搭載をすることで、コンポジティングを編集環境のまま実現することもできます。合成の際にわざわざ別のアプリケーションへ書き出したり読み込み直す必要はありません。よく、手の届く価格改定に注目していただくことがありますが、Smoke 2013の一番のウリはConnectFXです。また、Smokeだけで編集からカラーコレクション、レタッチまでいろんなことができますし、クリエイティブ性の高い3Dエフェクトもビジュアルエフェクトもできます。たぶん、本当にクライアント向けに対して、極限までクリエイティブなものを作っていただけるような初めてのアプリケーションかなと思っています。

Smoke 2013を導入することにより、ワークフローがいろいろ変わりそうです。どのような人に、どのようなワークフローで使ってほしいですか?

マーク・ハマカー氏:これまで私たちのツールというとコマーシャルや長編映画を作るようなハイエンドのユーザーを想定していました。Smoke 2013は企業用のビデオ、自主映画、テレビ番組といったもっと広範なターゲットを対象としています。その人たちをいろいろリサーチしてみると、仕事に対してのアプローチはエディタ的な色彩が強いけれどもエフェクトも使いたいというニーズを抱えていらっしゃっいました。今までそういう人たちはFinal Cut ProやAfter Effects、DaVinci Resolveなどいろんなものをちょっとずつ使ってワークフローを構成していました。しかし、Smokeであれば、1つのアプリケーションで全部できます。これがわれわれのソリューションの特徴です。

従来のSmokeはライセンス料で250万円弱でした。新しいSmoke 2013はスタンドアローンが53万5,500円となり、価格は1/4以下になりました。この価格はどのようにして決められたのでしょうか?

マーク・ハマカー氏:価格を決めるにあたり、Final Cut Proやアビッドなどを使われているさまざまな製品のユーザーをリサーチしました。そして、まずSmokeを検討範囲にしてもらうような価格になるように考えました。実は多くの人たちはコンポジティング、編集、3Dテキスト、グラフィック、カラーコレクションなど、いろいろな製品を購入していることが多く、総額で考えてみると結構出費しているのです。しかし、Smokeは単体の価格で見てみるとどうしても高いという印象を与えてしまって、検討に上がらなかったという問題がありました。とにかく、ドアを開けていただくための価格帯にする。そして実際に使っていただくと完全に作り直している。そして、「やっぱりぜんぜん違う。1本で全部いけるじゃないか」と説得できるきっかけとなれるような価格を目指しました。

マーカス・ショーラー氏:あと、ソフトウェアの価格というのはそのソフトを使って生み出せる利益とのバランスの中で考える必要があります。というのも、企業ビデオなどを制作されている方々は、長編映画のような予算をお客さんに請求できるわけがありません。だけれども実際には多数のツールが必要で、いろいろな個別のアプリケーションを購入して対応しているわけです。Smoke 2013の価格はビジネスモデルとツールの価格のバランスというのも考えて、これぐらいの値段だったら手が届くということでも考えました。

今年のNABではアドビのビデオスイートのCS6もSpeedGradeを搭載して話題になりました。競合製品として意識するようなことはありますか?

マーク・ハマカー氏:アドビもカラーグレーディングの重要性というのを注目されていると感じています。しかし、この業界は、Smokeをリリースしたからアドビのツールを使うのを辞めるということはありません。今後もFinal Cut Proやアビッド、その他のクリエイティブツールとSmokeを連携して使っていくでしょう。また、われわれのSmokeというのは効率の良いワークフローの中で使えます。生産性、効率性アップのほかに、高いクオリティを両立できます。アプローチはちょっと違うということです。

Smoke 2013は、6月中旬からトライアル版のダウンロードがスタートします。そこで新しいSmokeを体験していただきまして、「Smokeの中でこれができるんだ」と思うことも出てくるかもしれませんし、あるいは「Smokeでここの部分は連携して、ほかと組み合わせて使いたい」というニーズが出てくるかもしれません。実際にSmokeを体験していただいて、皆様の使い方や希望があれば聞かせていただければと思います。

Smoke 2013のトライアルバージョンは、6月中旬から配布がスタートする。9月の発売日まで制限なしで使用することが可能だ。興味のある方は、Autodeskのサイトにアクセスをしてほしい。ダウンロード開始は6月中旬からだが、事前登録が可能となっている。

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