東京オフラインセンターは、7月15日よりAdobe Creative Suite 6(以下CS6) Production Premiumをインストールしたアドビ公認のノートPCのレンタルを開始する。アドビ公認のソフトをインストールしたPCレンタルは東京オフラインセンターでしか行われていない世界初のサービスだ。概要や魅力について、東京オフラインセンターで営業を担当する山下馨平氏と技術統括の山下大輔氏に話を聞いてみた。

テレビ業界で知らない人はいないと言われる総合VTRスタジオ

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東京オフラインセンターの技術統括 山下大輔氏(左)と営業 山下馨平氏(右)

東京オフラインセンターは、都内キー局に隣接する6ヶ所で撮影機材のレンタルやオフラインの編集室を運営する総合VTRスタジオ。特にオフラインの編集室はVHSの時代からリーディングカンパニーと言われるほど、テレビ業界では老舗の存在だ。東京オフラインセンターの設立は1996年。現在代表を務める眞田博之氏がディレクターとして活躍をしていた経験を生かして、VHSデッキの2台貸しに毛布やトイレ付きで泊り込んで作品を作り上げられるオフライン専門の編集室を開設。これが非常に好評で、その後編集室を拡大して伸びていったという。VHSの収束後の現在では、Avid Xpress PRO編集室やAvid Xpress DV編集室、Final Cut Pro編集室を1日9,800円で提供中。料金形態が1時間貸しではなく一日貸しにすることによって、サービス利用者にコストのプレッシャーを与えない形になっているのも特徴だ。

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東京オフラインセンター本社1階。レンタルの機材の受付などが行われている

編集室以外のサービスでは、カメラに収録したデータをデジタイズしてくれるサービスや、カメラなどの撮影機材から編集機材のレンタルサービスなどが行われている。カメラの手配、デジタイズ、編集機材のレンタル、テープへの書き出しといった一連のワークフローを東京オフラインセンターだけで完結可能で、まるでDTPの出力センターのように、テレビ局の近所で24時間トータルにサポートをする「映像制作の便利屋さん」といった感じの総合スタジオだ。

CS6をインストールした世界初の公式レンタルサービスがまもなくスタート

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ノートPCなどレンタルされる編集機材。並べてメンテナンスが行われている

東京オフラインセンターのサービスの中でも人気なのが、ノンリニア編集ソフトをインストールしたノートPCのレンタルだ。編集ソフトはAvid Xpress DVからはじまり、Final CutをインストールしたノートPCのレンタルサービスでも好評を得た。しかし、Final Cutのレンタルサービスは中止せざるを得なくなり、一方ではPremiere Proの需要は伸びてきている。そこで、昨年秋からPremiere ProやAfter Effects、Photoshop、Auditionなどの映像編集ソフトをまとめたAdobe Creative Suite 5.5 Production PremiumをインストールしたノートPCのレンタルをスタート。そして7月15日からはさらにSpeedGrade、Preludeを追加したCS6 Production Premiumをインストールしたレンタルを開始予定だ。

インストールされているPremiere ProCS6 インターフェース

Production Premiumといえば、特にPremiere Proに搭載されている映像再生処理エンジンの「Mercury Playback Engine」が有名だが、この機能を実現するにはサポート対象のGPUを搭載している必要がある。レンタルノートPCには対応のGPUを搭載しており、快適な編集が可能だ。SSDのストレージを搭載して読み書きを高速化させたり、USB3.0やeSATAのポートも搭載しているほか、外部出力でHDMIを搭載しているので簡単なプレゼンテーションもできる。ノートPCといっても液晶モニタは17インチで、CPUはCore i7、搭載メモリは16GBのワークステーションで、高画質のHD編集にも十分耐えうる仕様だ。

Adobeフォントは商業放送に使用できる許諾も入っていますので、YouTubeに配信したり本編に持っていくということも可能です(山下馨平氏)

残念ながらFinal Cutのレンタルサービスは終わってしまったが、Premiere Proはその代わりになるのではないかと山下大輔氏は言う。

Premiere Proのインタフェースの刷新によって、既存のFinal Cutユーザーを取り込めるのではないかということを感じています。Premiere ProやFinal Cut Proでは直感的に操作ができます。非常に類似をしていますので、2〜3年の間にユーザー様は動いていくとは思います(山下大輔氏)

魅力は安心して使える環境

CS6 Production PremiumをインストールしたノートPCのレンタル料金は1日4,800円。23万8,000円のCS6 Production Premium単体を購入したり、月単位または年単位で利用できるCreative Cloudから借りたほうが安いことは間違いない。しかし、Adobe Creative CloudとノートPCのレンタルは競合するものではない。

東京オフラインセンターのレンタルサービスのメリットは、借りた機材にトラブルが起きたときに電話で問い合わせることができるサポート窓口を24時間開設していることだ。サポートには、デジタイズした素材を使って編集をしたり出力する際の設定や、エラーがでたときの質問が多いという。アップルやアビッドといったメーカーのサポートでは、夜中に電話をして対応してくれたり個々の機材やデータに沿った細かいアドバイスをすることには不可能だったり限界がある。メーカーの手の届かないきめ細かいサポートという部分で、安心して使える環境ができるというところがもっとも大きなメリットだろう。

また、CS6は5月18日にリリース済みにも関わらず、CS6対応のレンタルサービスの開始は7月15日からだ。なぜ2ヶ月もの間があるのかというと、東京オフラインセンターには、サポートをしたり、新規機材の導入に関して放送関連の方で最低限必要であろう検証を行う技術開発推進室と呼ばれる部署があり、そこでハードディスクやいろいろな機材との相性などが確認されたうえでレンタルがスタートする。技術開発推進室が構成を確認してその準備ができるのが7月15日だということだ。

アドビさんと契約させてもらって、十分な検証をしていますので、Premiere Proも自信をもって出せるというわけです(山下馨平氏)

単純にソフトがリリースされたからインストールしてすぐにサービスを開始するわけではないというわけだ。

現場レベルのヘルプサポートというところがすごく重要だと思っています。一番困るのってテレビ業界に入って初めてパソコンを触るけれども、ディレクターからこれをやっておけといわれても方法論が分からない。そういったところをしっかりとサポートができればと思っています(山下大輔氏)

PCやノンリニア編集ソフトに詳しくない人にとって、トラブルが起きたときになにが原因なのか分からなくて難しくて不安がある。ハードとソフトだけではなく、サポートという部分が東京オフラインセンターのレンタルノートPCのメリットと言えるだろう。

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