AG-HPX600は、すでに今年のNABで発表され、先月(8月22~25日)開催された中国国際展覧センター(CIEC)ではNAB時ではモックだったものが、実機として出展された。今回、国内でも実機の披露とメーカー担当者からのお話をお伺いできたので、すでに発表された内容の続編としてレポートしよう。

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2009年のNABでさり気なくパネル展示されていたAVC-ULTRA。この時点では1080・50pと60pや12ビット444、3Dへの対応といった大まかな仕様しかなく、AVC-Intraの上位コーデックという位置付けだった

パナソニックではAVC-Intraとしていくつかのファミリーを開発し、製品に実装してきたが、それらを更に発展させたAVC-ULTRAを発表(正式発表は2011年11月だが2009年のNABではすでにパネル展示されていた)。AG-HPX600ではこのAVC-ULTRAをオプションで実装できるようになっている。AG-HPX600はAVC-ULTRAに対応したカメラとして初ということになるが、AG-HPX600発売時にこのオプションは間に合わないそうで、後日メーカーで実装するスタイルになるという。これは、AVC-ULTRAに対応するためにはファームのアップだけでなくコーデックのチップを含めた実装が必要なためで、仕様の細部の詰めなどを含めて来年度に供給を開始する予定となっている。

AVC-ULTRAのファミリーにはAVC-IntraとAVC LongG、AVC Proxyがあるが、基本的にコーデックのチップはそれぞれ別々のものではなく、全てを処理することが可能で、実装される製品によってファームなどで選択するようになっているようだ。

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AVC-ULTRAコーデックのファミリーとして最近発表となった相関図。2009年のNAB時点とはAVC-ULTRAのロゴデザインなどが微妙に異なっている

2/3インチのレンズに対応しているほか、10ビット422、感度F12、SN比59dBといったこのクラスのカメラとして高性能であることが特徴となっているほか、本体質量2.7kgと軽量化されているので取り回しも楽に行える。ショルダータイプのカメラは従来ニュース取材用やブライダルなどで使われており、高性能かつ取り回しの良いカメラが望まれていた。

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ショルダータイプのカメラとしてオーソドックスな作りのAG-HPX600

また、スチール撮影のクルーと同じ現場で撮影する機会も多くあり、CMOSを撮像素子に採用したカメラの場合ストロボの閃光によるフラッシュバンドの問題があったが、AG-HPX600では素子からの読み出し速度の高速化により大幅な低減が図られている。これらは撮像素子の性能や光学系に依存するところが大きいが、AG-HPX600は単板の新センサーの採用によりこうした問題を解決している。単板式を採用することで3板式のようにプリズム光学系が不要になり軽量化に寄与しているほか、撮像素子の中央部分のみを使うことで、エリア内の高速読み出しが可能となり、フラッシュバンドの低減やローリングシャッターの影響を最小限に抑えている。

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タイムコードや音声レベルなどが表示されるLCD。右下はメニュー設定などを行う十字キーでメニューはビューファインダーに表示される

HPX600_1433.jpgゲインやオーディオレベルなど比較的頻繁に操作するスイッチ類も従来からのショルダータイプのカメラと同様なので、この手のカメラに慣れ親しんだカメラマンには取り扱いが容易だ


他にも、AVC Proxyへの対応やメタデータ、プロキシプレーバック、ストリーミングなどが行えるワイヤレスコントロール、バリアブルフレームレート(720p:1~60/50fps、1080p:1~30/25fps)などがオプションとして用意され、従来のショルダータイプのENGカメラの領域を超えた新時代のカメラとなっている。

この手のENGカメラの守備範囲は非常に広く、スタジオカメラとして使ったり、高倍率のズームレンズを装着して中継カメラとして使用したり、CCUやRCUなどを接続してマルチカメラ対応としたり、肩に載せてスタンドアローンとして使用する以外にも様々に使われる。とうぜん要求される性能や機能なども様々で、高性能多機能化によりユーザーの要求に答えてきた歴史がある。AG-HPX600はファームやカメラ内へ装着するオプション基盤などで様々な用途に適したカメラにカスタマイズできるようになっている。

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Wi-Fi用の通信モジュール。着脱可能なので、将来的にはほかの例えばBluetoothなどにも対応できる

HPX600_1408.jpg後部のコネクター部分。HDMIによるモニターやオーディオ入力などのコネクターが並ぶ。ワイヤレスはカメラ上部にスロットインで装着する


もちろんこうした考え方は従来からある程度あったのだが、AG-HPX600はその可能性をさらに広げたものとなっているといえよう。車で例えるなら、キャブレターやサスペンションを交換するようなものといえるだろう。この考え方をもう少し進めるとショルダータイプの筐体に光学系や記録系などユーザーが自由に組み込めるというスタイルである。筐体が共通なので、基本的な操作や取り回しはそのままにユーザーが必要とする性能や機能を備えたカメラにすることができるというものである。AG-HPX600はこうしたカメラへの先駆けを感じさせる。

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ルーペを跳ね上げたビューファインダー部。このルーペ部分の作りが異なるビューファインダーも用意される

HPX600_1420.jpgルーペ部分にはミラーがあるので、そのままでは画像が反転してしまう。スイッチにより画像反転を行うタイプで自動で画像反転は行われない

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P2スロットを2基備えているが、microP2対応なので一般のクラス10以上のSDメモリーもアダプターにより使用出来るが記録コーデックは制限される

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