4月12日、東京都千代田区のUDX Theaterとライブストリーミング中継でオートデスクのCG関連製品に関する2014発表イベント「New Year, New Tools, Come See 2014 UNFOLD ~M&E 2014 発表~」(以下UNFOLD 2014)が行われた。オートデスクの春のイベントというとNABの展示内容を紹介する「Autodesk After NAB」が毎年5月や6月に行われているが、UNFOLD 2014はそれとは違う。4月8日より行われたNABの報告やFlame、Smokeなどの映像関連製品の紹介については触れることなく、4月12日に発売を開始したEntertainment Creation SuiteやMaya、3ds Max、Softimage、MotionBuilder、Mudboxなどの2014バージョンの紹介を行うというCG関連製品のイベントだ。当日紹介された製品の新機能を中心に会場の様子を紹介しよう。

ビューポート表示機能を大幅に改善した3ds Max 2014

まず会場に着いてみると、いつものオートデスクのイベントとは雰囲気が違うことに気が付く。そう感じさせるのは、入り口のイベントサインに掲載されているオートデスクのロゴや製品イメージなどが一新されているからだ。オートデスクの吉崎哲郎氏も開会冒頭の挨拶で「オートデスクの製品がプロフェッショナルな領域以外の方々にお使いいただける製品群というのも増えています。この機会にブランドイメージというのを刷新しました」とリニューアルのきっかけをこう紹介した。明るくやさしいイメージになった印象で、慣れないうちは別の会社のイベントにきているみたいな感じだった。吉崎氏の挨拶の後は一ノ瀬真一郎氏による新しいブランドの紹介、門口洋一郎氏によるEntertainment Creation Suiteの概要紹介と続き、その次に今回のイベントの注目の1つのオートデスクの宋明信氏による3ds Max 2014のデモンストレーションが行われた。

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シンボルを追加して新しくなったオートデスクのロゴや各製品のイメージ。CG製品群はブルーを基調にしたイメージになっている

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UNFOLD 2014が行われた秋葉原のUDX Theater

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3ds Maxのデモを行うオートデスクの宋明信氏

3ds Maxの2014バージョンの最大の特徴はビューポートのパフォーマンスが大幅に向上したことだ。宋氏のデモの最初のハイライトは「ビューポート表示機能の強化」で、その中の「スキニングされたオブジェクトの再生パフォーマンスの向上」の解説では全く同じシーンデータを読み込んだ2014バージョンと2013バージョンの3ds Maxを左右同時に表示して、リアルにスキニングされたアニメーションを同時再生してみせた。結果は2014バージョンのほうが圧倒的に高速で、「アニメーション設定をするとか、スキニングオブジェクトのプレイバックによる壁というものが今まで3ds Maxにはあったのですが、かなりこのへんが改善されたかなというふうに思います」とアピールした。

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スキニングモディファイヤや各種デフォーム系モディファイヤを適用したオブジェクトのアニメーション再生の比較。右が2014バージョンで左が2013バージョンで、2014バージョンはかなり高速化されていることを紹介した

続いて紹介したのは2Dシェープのパフォーマンスの改善だ。AutoCADなどで作った2D図面ファイルを3ds Maxで立ち上げようというときにかなり込み入った作図データを開くと2013バージョンではガクガクな状態になることがあったが、2014バージョンでは圧倒的に早くなっていることを紹介した。この改善は建築関係のみならず、かなりの量のシェープの数になった際のエンターテインメントコンテンツのビューポートのリドローなども非常に楽になっているとのことだ。

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AutoCADのDWGファイルなどで膨大なシェイプデータが存在する場合の表示パフォーマンスの比較。右が2014バージョンで左が2013バージョン。こちらも2014バージョンはかなり高速化されていることを紹介した

ビューポート周りの機能紹介の中で「圧倒的です」といって紹介したのが新しいインスタンスエンジンの搭載だ。デモンストレーションでは、一体のクリーチャーをオブジェクトペイントの機能を使ってシーン中に増やしまくっても問題なく再生できるというところを紹介した。特にインスタンスのエンジンに関しては全面的な見直しが行われていて、山の樹木であるとか、そういったものを大量にやりたいといったステージワークみたいな仕事でもかなりのパフォーマンスが期待できるとアピールした。

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一体のクリーチャーをオブジェクトペイントの機能を使ってここまで増やした

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ポリゴン数は1300万ポリゴンとなったが、それでも問題なく再生できる

2014バージョンで新しく追加された短時間のシンプルな操作で群集キャラクターアニメーションを実現する「Populate」のデモンストレーションも目を引いた。作り方は簡単で、「フロー」と「停滞領域」の2種類の設定方法があり、こちらを設定さえすれば3ds Maxが自動的に作ってくれるというものだ。フローには、人の流れを示す矢印があり、赤が女性で青が男性という形になっていて、オブジェクトに関しては、「スティック図」「カスタムスキン」「群集スキン」「高解像度スキン」から選択が可能となっている。人の密度を上げてさらにデモンストレーションを続けたが、ドロップすることなくみんな動いていた。Populateで使用するスキンは専用に開発されたスキニングシステムをすべてGPUで処理しているので、1,000体とか2,000体とかでもQuadro K5000といった高性能なグラフィックスカードを使っていればほとんどストレスなしで動かすことができるとのことだ。

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短時間かつシンプルな操作だけで作成中のシーンに群衆キャラクターアニメーションを追加することができるPopulateが新しく搭載された

レンダリング関係の解説で注目だったのが「ベクトルマップ」だ。テクスチャ素材にベクターベースの素材を使うことにより、テクスチャ解像度に依存しない作業を実現できるという機能だ。「HDのコンテンツが当たり前になるとテクスチャサイズも4Kや8Kとかを使うことが多くなってきていますが、4Kや8Kのコンテンツをビットマップでやっているとおそらく限界がくる」と宋氏。そういった将来のことも考慮してベクトルマップを新しく搭載したとのことだ。デモンストレーションでは、アドビのIllustrator形式のAutodeskロゴを貼ったロボットを使って、このロボットがカメラの手前にきてロゴが画面いっぱいまで迫ると通常のビットマップならば荒れるが、アウトラインならばどんなに寄ってもマップの解像度が破綻することはないというところを紹介した。さらにロゴに対してIllustratorに搭載されている「ぼかし(放射状)」フィルターをかけた場合に、Illustrator上でラスタライズしなくてもフィルターの内容がそのまま3ds Maxのイメージに適用されるというのも興味深いところだ。

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オブジェクトのテクスチャ素材としてベクターベースのグラフィックス素材を直接使用することができるようになった。画面の例ではアドビのIllustratorのロゴをベクターデータのままロボットに貼り付けている

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ロゴが画面いっぱいになるほど近づいても、荒れることはないことをデモした

また、ベクターデータはページ構成されたPDFにも対応するとのことで、こちらの紹介も続けて行われた。2014バージョンではPDFでページ化されたものをそのまま3ds Maxに取り込むことが可能で、何ページ目を使うかや、ページを切り替えるときにアニメーションをかけることもできる「ページトランジション」という機能を搭載していて、「ブレンド」「スクロール」「ズームイン」「ズームアウト」から選ぶことが可能とのことだ。

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PDFでページ構成されたベクターデータを活用することも可能になった

パーティクルフローの新機能も2014バージョンの大注目だ。新しい2つのキャッシュオペレータやmParticle、Advanced Data Manipulationはすでに昨年、3ds Max 2013 Extensionという形でSubscriptionの契約ユーザー限定で提供が行われているが、2014バージョンではそれが正式機能として標準搭載されるようになったというものだ。mParticlesはパーティクル同士の衝突や他のオブジェクトとの相互干渉等々をシミュレート可能にする従来のパーティクルフローシステムを拡張させたというもので、Advanced Data Manipulationはツールセットを使ってカスタマイズされたパーティクルフローツールを作成できるというものだ。特にAdvanced Data Manipulationに関しては初めて扱う方々向けに極力理解しやすく、チュートリアル的に説明が行われた。宋氏は最後にAdvanced Data ManipulationとSoftimageに搭載されているICEを比較して、「Advanced Data Manipulationはパーティクルの制御しかできません。対して、ICEに関していうとシーン全体のノードにアクセスすることができるので、やれる範囲は桁違いに大きいというのがあります。ただ、3ds Maxの中でパーティクルエフェクトを簡単に高度なものを作れるようになったというのは非常に大きなメリットだと思います」と特徴を紹介した。

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mParticlesやAdvanced Data Manipulationについてはじっくり時間をかけてデモが行われた

続いてペイント用ツールセットのMudboxの2014バージョンのセッションも宋氏がデモンストレーションを行った。2014バージョンではモデルの詳細形状を損なうことなくポリゴンの調整が可能なリメッシング機能を数多く搭載したのが特徴と紹介した。新しく搭載されたリトポロジ化の機能は、きれいな四角形ベースの指定したメッシュに再構築を行うことが可能とのことだ。Mudboxはモデル上にカーブを描き、そのカーブに基づいてリトポロジが可能だが、その際のカーブツールに関して「カーブループ」「境界カーブ」「カーブを消去」といったものを新しく搭載。このほかに、8Kテクスチャのペイントをサポート、ペイントレイヤーの別チャンネルへの移動、クリアと塗りつぶしペイントレイヤーの追加、チャンネル内のレイヤーの結合書き出し機能など改良を行っているのも特徴と紹介した。

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リメッシュ機能を新しく搭載したMudbox

カメラシーケンサーを搭載したSoftimage 2014

続いて行われたセッションはSoftimageの 2014バージョンのデモンストレーションだ。解説を担当するのはオートデスクの渡辺揮之氏。まず最初に紹介したのは2014バージョンのもっとも派手で特徴な機能であるカメラシーケンサーだ。コーエーテクモゲームスの「Ninja Gaiden 3 Razor’s Edge」と「DEAD OR ALIVE 5 PLUS」といったゲームのカットシーンを利用してカメラシーケンサのワークフローをじっくりと紹介した。カメラシーケンサーとは、グローバルの時間軸にはとらわれずにシーケンス時間でいろいろカメラの切り替えや編集ができる面白い機能だ。アニメーションミキサーと同じようにクリップを配置していくイメージの機能で、トラック自体も複数持たせることやリタイムも可能だ。また、かなりの数のキャラが動いてリアルタイムの再生が厳しいような重たいデータを扱う際は、レンダーマネージャーを使ってビューポートのキャプチャを行いリアルタイムに確認するという方法も可能で、その手順も紹介された。

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Softimageのデモをするオートデスクの渡辺揮之氏

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カットシーン制作に便利なカメラシーケンサ機能

続けて紹介されたハイクオリティビューポートの強化も今バージョンの特徴だ。アンビエントオクルージョンの品質が2013バージョンだと品質が低かったのが改善されたりシャドーマップの透明なオブジェクトも2014バージョンでは処理できるように直っているという。また、シーンを保存した状態をキャッシュして、シーンを開くときの効率化を実現しているのも特徴と紹介した。

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ビューポート内でさまざまなシェーディング要素を表示できるハイクオリティビューポートが強化された

FBXサポートの強化については、「当たり前のことが当たり前にできる状態になった」と前置きを置いた上で紹介された。スロープハンドルの長さと角度を変えた状態で前回バージョンのFBXで書き出して、同じ書き出したものを再度読み込んでみるとズレが起こるという問題があった。これはハンドルのスロープが再現されていないのが原因で、2014バージョンではきちんとこの問題が改善されたという。SoftimageとMotionBuilderを使われているユーザーなど、オートデスク製品との連携をしている人にはうれしい修正といえそうだ。

群集シミュレーションを手軽に作成できるCrowdFXの強化も注目だ。以前のバージョンでサポートされたものが中身が少し再構築されていて、管理がしやすくなったというイメージのものとのこと。具体的にはアニメーションブレンディングというツリーとビヘイビアというツリーがサポートされたとのことだ。このほかにも、効率的なシーン管理を実現するICEオーバライドも注目の強化の機能の1つだろう。

続いて行われたのはMotionBuilderの2014バージョンのセッションだが、こちらのデモンストレーションも引き続き渡辺氏が行った。まず最初にモーションキャプチャーのワークフローのところからで、光学マーカーの情報をキャラクタへダイレクトに割り当てが可能になったことから紹介を行った。従来はモーションキャプチャーの光学マーカーの動きを取り込んだ際にMotionBuilderの中ではアクターを返してセットアップをする必要があり、その際にマーカーの情報をアクターに割り当てるというところでいろいろ制限があった。2014バージョンではアクターを使わずに、直接マーカーをスケルトンに割り当てることができるようになり、従来のアクターの方式に比べるとスクリプトの処理やビューポート上でアサインができるなど、より直感的な操作が可能なったという。ジョイント数やキャプチャしたときのサイズに制約を受けないというのも特徴で、柔軟なモーションキャプチャのワークフローが組めるようになったことをアピールした。

アニメーター向けの便利な機能としては、ソルバのストレッチというパラメーターで非常に細かいパラメーター調整ができるようになり、モーションキャプチャーのデータを扱う際に背骨の伸びなどをうまく調整してあげることでより、自然な人間らしい動きが再現できるようになったという。また、ダブルソルブと呼ばれる二重に両手にコンストレインがかかっているような状況だと前回バージョンでは処理がうまくいかなかったものが改善されるなど、このほか50以上のソルバに関連する不具合が修正されているとのことだ。

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ストレッチの細かいパラメーター調整ができるようになった

次世代のビューポート表示とシェーディングを搭載したMaya 2014

最後に紹介が行われたセッションはMayaだ。デモンストレーションを担当したのはオートデスクの長谷川真也氏と加瀬秀雄氏で、前半の機能紹介を担当したのは長谷川氏だ。

まず最初に行ったのは次世代の表示テクノロジーの紹介だ。DirectX 11のシェーダーの話から解説をはじめ、ヘアーの部分を例にしてよりリアルなシミュレーションというものをDirectXで表示することができるようになることを紹介した。また、Viewport 2.0は2014バージョンからさまざまなシェーディングノードが対応して、非常に時間の削減というものを実現したことをデモンストレーションで紹介した。

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Mayaのデモを担当した長谷川真也氏(左)と加瀬秀雄氏(右)

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DirectX 11のシェーダーの解説。異方性反射のスペキュラーの表示をサポートしたことなどが紹介された

続けてシンプルだけれども強力なモデリングツールキットを搭載したことを紹介した。今までMayaのモデリング機能というものを刷新したわけではなく、新しいツールセットがエディタに搭載されたというイメージのものだ。具体的には、非常に高速に選択した部分をプレビューすることができたりなどMayaの弱点だったモデリング機能も大幅に改善している。このほかにも、リトポロジ作業を容易に行うためのクアッド描画ツールや新たなポリゴン削減アルゴリズムが搭載された。ポリゴン削減アルゴリズムに関しては、全体のメッシュに対して適用したり、「フェースを選んで削減」といったコンポーネントレベルでもできるようになっているという。今までMayaのメッシュ削減アルゴリズムだと三角形になってしまっていたが、極力四角形というものを維持して削減してくれるので「非常に便利な機能」といって紹介した。

Paint Effectsの強化も目を引いた。デモでは、トーラスに対して植栽を生成する工程が紹介された。従来バージョンだと枝などがきちんとサーフェスに吸着していないという問題があったが、2014バージョンからは枝のほうをサーフェスに吸着できるようになったり、メッシュにPaint Effectsがめり込んでいる部分がある場合は回避することが可能になったという。メイキングのデモンストレーションではPaint Effectsでエレクトリックのような効果を生成する方法を紹介。「動脈効果とか作れたりしますので、医療のほうでも有効活用できるのではないかなと思います」とさまざまな活用方法があることをアピールした。

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Paint Effectsはサーフェスに対して吸着や衝突方法を外側、内側にするといった設定が可能になった

後半のパートでは加瀬氏が参加して、シーンアセンブリとグリースペンシルの紹介を行った。シーンアセンブリツールとは、膨大なプロダクションデータセットに対応するための新しいタイプのコンテナのテクノロジーのこと。シーンをロードするときに時間がかかるとか、マニュピュレーションができないという問題に対応するためのものだ。3つのリプレゼンテーション(表現方法)というものが搭載されていて、そのうちの1つがGPUキャッシュを用いる方法で、そちらで開くことにより瞬時にロードすることができることが可能であることを紹介した。また、ロード中の待ち時間にホットボックスを開いたり選択といった実作業を行うことも可能なのも特徴だとのことだ。

デモの中でグリースペンシル機能を使った絵コンテが登場して、こちらの機能についての紹介も行われた。注記やメモをシーンデータに直接書き込めるという新規の機能でこちらも便利そうだ。

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新しいデータ管理のワークフローのシーンアセンブリツール

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注記やメモをシーンデータに直接書き込めるグリース・ペンシル機能

2014バージョンの全体の特徴を簡単に説明するならば、Windows 8を正式にサポートして、パフォーマンスの向上や安定性を実現しているところだ。吉崎氏はイベント冒頭の挨拶で「ここ2~3年、コア技術の抜本的な見直しというのを行ってきたが、2014バージョンはその見直しがようやく実現し始めてきた」と紹介したが、まさにこの言葉が今バージョンの特徴をわかりやすく表現していると思う。

MayaやSoftimageに関しては、すでに2014版の体験版が配布(MayaSoftimage)されているので、興味のある方はぜひ使ってみてほしい。

なお、NABの報告やSmokeの最新状況といった映像関連製品の最新情報については、4月25日14時よりWebカンファレンスとして「NAB 2013レポート&Smoke 2013チップス」が開催予定だ。参加は事前登録制なので、興味のある方は「http://www.myautodesk.jp/M_E/webinar/smoke.html」を参照してほしい。

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。