HXR-NX5Jの直系となるHXR-NX3

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2009年のInterBEEで参考出品され、翌年の年明け早々に発売が開始されたNXCAMカムコーダーHXR-NX5J。AVCHDフォーマットを業務用途に投入したNXCAMはHXR-NX5Jをその初代製品と据え、いまやファイルベース収録におけるハンドヘルドカメラの代表格として、取材現場で見ないことはないといえるまでに普及した。

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HXR-NX5J

しかし、HXR-NX5Jは操作性の良さの反面、撮像素子が100万画素クラスとフルHDでないなど当時はそれでも許せたのだが、家庭用ビデオカメラでさえフルHD撮影が可能になった今、わずか4年で陳腐化してしまったといえる。

一方、NXCAMシリーズには大判センサーを使用したものや小型のハンドヘルドタイプのものはラインナップされたが、HXR-NX5Jに代わるいわゆるスタンダードなハンドヘルドカメラがなく、その登場が待たれていた。

インターフェースの見直しと画質向上、最新技術盛りだくさんのHXR-NX3

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HXR-NX3

1月22日より発売されるHXR-NX3。その操作性はHXR-NX5Jとなんら変わらない。これはHDVフォーマットのHVR-Z5Jから一貫して変わっておらず、それだけ優秀なヒューマンインターフェースである自信の表れであろう。それは同時にユーザーも違和感を覚えることなくスムーズにHXR-NX3に移行できるメリットともいえるだろう。

HXR-NX5J HXR-NX3
撮像素子 1/3型 3CMOS 1/3型 3CMOS
動画時有効画素数
(16:9)
約112万画素 約207万画素
ズーム比 光学20倍
デジタルズーム時30倍
光学20倍
デジタルズーム時40倍
35mm換算
(光学ズーム)
29.5mm~590mm 28.8mm~576mm
最低被写体照度 1.5lux
シャッタースピード:1/30
アイリス:F1.6
ゲイン:AUTO
1.2lux
シャッタースピード:1/30
アイリス:F1.6
ゲイン:AUTO
SDI OUT
HDMI OUT
TC LINK
Wi-Fi
GPS
LEDライト
200lux@1m
5,500K

ただ、操作性が変わらぬ一方、出力端子といった外部インターフェースはHXR-NX5Jと大きく異なる。一番大きな点としてはSDI出力を廃しHDMI出力とコンポジット出力としたことだ。SDI端子が無いことで、これまでHXR-NX5Jをスイッチング収録に使用してきたユーザーがHXR-NX3を導入するにはHDMI→SDIコンバーターを用意するなどしなければならない。つまり、HXR-NX3は単体のENG収録に特化したカメラだとメーカーは位置づけているのかもしれない。ただ、そうならばTC LINK端子まで廃することはなかったのだが…。

一方で、HXR-NX3にはHXR-NX5Jにはなかった新たな技術が多く盛りこまれている。それが、全画素超解像ズームやNFCワンタッチリモートなどだ。

圧倒的なズーム比40倍全画素超解像ズームの強み

HXR-NX5J、HXR-NX3ともにズーム比は光学20倍となっている。これ以上の寄りの画がほしい場合、HXR-NX5Jには1.5倍のデジタルズーム、D.EXTENDERがあった。しかし、デジタルズームゆえの画質劣化があり、正直常用することはなかった。

一方のHXR-NX3には最近の同社デジタルカメラにも搭載されている、画像解析処理を利用した全画素超解像ズーム機能(×2倍)を搭載している。これにより、従来のデジタルズームよりも高画質な望遠映像を撮影することができるようになった。

空港のシーンは撮影日が異なるが、HXR-NX5Jのデジタルズームでは輪郭の線が太くなり、拡大によるブロックノイズの増したいかにもデジタルズームといった画になる。一方HXR-NX3の全画素超解像ズームではやや解像感は失われるものの、ブロックノイズのような目立つノイズのない自然な画の仕上がりだ。

ちなみにこれまでも家庭用ビデオカメラでは、超解像技術を利用した高いズーム性能を持ったものが多く製品化されている。偶然筆者が所有していた超解像ズーム機能を搭載した家庭用ビデオカメラで、同じ40倍を撮ってみた。家庭用ビデオカメラが色飽和したのっぺりとした画になっているのに対し、HXR-NX3の画は色崩れがない。メーカーの違いによる技術の違いなど条件は異なるが、HXR-NX3の3CMOSによる効果も大きいのではないだろうか。

 OGRV_vol11_04minsei.jpg家庭用ビデオカメラ
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 OGRV_vol11_04NX-3.jpgHXR-NX3
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対応スマホならさらに便利。Wi-FiリモートとNFCワンタッチリモート

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これも時代に則した機能といえるだろうか。HXR-NX3にはWi-Fiリモート機能を搭載している。やや驚きが薄れているのは、GoProや様々なデジタルカメラで当たり前の機能となっているからかもしれない。ただし、HXR-NX3のWi-Fiリモート機能は一味違う。それがグリップ上部に設けられたNFCタッチ機能だ。

NFCというのは、「おサイフケータイ」や「Suica」に代表されるFeliCaのような近距離無線通信技術の名称だ。FeliCaはあくまでソニーの非接触ICカード技術であり、NFCはその上位の国際規格である。

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このNFCのコミュニケーションポートをレンズグリップ上部に配したHXR-NX3は、対応アプリである「PlayMemories Mobile」をインストールしたNFC対応のスマートフォンをかざすと、スマートフォン上で自動にアプリが起動してネットワーク接続を行い、即カメラコントロールできる状態にスタンバイしてくれる。

PlayMemories Mobileのイメージ

Wi-Fi接続の面倒さを解消した便利機能だが、この機能はこれまでのFeliCa対応だけのスマートフォンでは利用できない。NFCに対応したスマートフォンはここ1~2年の機種に限られているため、あらかじめ手持ちのスマートフォンがNFC対応であるかどうか確認しておく必要があるだろう。無論NFC機能がないスマートフォンでも、手動でHXR-NX3をWi-Fi設定してスマートフォンからコントロールすることはできるのでご安心を。


OGRV_vol11_08.PNG XDCAMカムコーダーのWi-Fiリモートイメージ
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ちなみにWi-Fiリモートの操作性だが、プレビュー映像の画面をタッチしてフォーカスをあわせられること、アイリス、ズーム、REC Start/Stopに限られている。これはスマートフォン用アプリがコンシューマー用のPlayMemories Mobileだからだ。せめてXDCAMカムコーダーのWi-Fiリモートのようにホワイトバランス調整などの機能は持たせてほしかった。

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また、スマートフォン側からPlayMemories Mobileを終了した場合、カメラ側は接続待機状態となり、この待機状態の画面を閉じなければ、カメラ本体で撮影することができない。リモート切断後すぐさまカメラ本体で撮影したい場合、一旦液晶上の画面を閉じる操作が発生するのは手間だ。スマートフォンから切断されたら自動的にカメラのスタンバイ状態に戻るようにしたほうが便利だと思うのだが。

総評

HXR-NX3は4年の歳月を経たHXR-NX5Jの純粋なるブラッシュアップモデルといえる。型番からすれば一見下位モデルのようだが、ハンドヘルドのENGカメラとして大きく進化し、機能が豊富になった。

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おまけのように感じるLEDライトも補助光として十分で、直射ではまぶしく写真ストロボ用のディフューザーをかぶせたほうがいいくらいだ。

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フラッシュメモリーユニット装着部は廃されたが、2つのメモリースロットで併録もできる。メモリースロット部はメモリースティックの対応が片側のみになったが、いずれもさほど大きな問題ではない。

価格もHXR-NX5Jの発売当初からすれば、大幅に安くなった。4K制作が一般的になるまではまだ時間がかかるだろう。ということはHD番組の制作においては安価で高性能なHXR-NX3は新たなスタンダードカメラになるといえるだろう。

WRITER PROFILE

黒田伴比古

黒田伴比古

報道・ドキュメンタリーエディターでありながら、放送機器に造詣が深く、放送局のシステム構築などにも携わるマルチプレーヤー。