ラスベガスで開催されたDigital Signage EXPO 2012に参加してきた。今年で4年連続である。これはきっと私は日本人最多出場に違いない。さて、最多出場者としてまずは定点観測的な視点で見ると、これまで年々倍々ゲームの勢いで展示会場が拡大してきていたが、今年は昨年より若干拡大といった程度である。広さはおおよそ幕張メッセの2ホール分くらいだから、日本の「デジタルサイネージジャパン」と比べたら4、5倍くらいの規模である。

会場内の数ヶ所にはこうした案内のためのデジタルサイネージ。検索は勿論、その場所から目的のブースまでの道順も地図上にプロットしてくれる。このあたりはもはや定番と言った感じだ。

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今年の全体傾向としては

  1. 機材展の方向が強まり、なぜかコンテンツ系が減少してしまった
  2. 透過型の液晶パネルが非常に目立つ
  3. ソーシャルネットワークやモバイルとの連携は期待したほど進んでいない

といった具合であろうか。では気になる展示を具体的にご紹介しよう。

透過型液晶ディスプレイの進化と応用

昨年までの展示と異なり、かつ複数の企業の展示があったのがこの透過型液晶パネルを利用するものだ。昨年くらいから20インチ程度のものを使って、小型のショーウンドウに応用する提案がLGやサムスンなどからあったが、今年はパネルが55インチくらいまで大型化し、透明度が上がり、カラーも鮮やかになるなどの進化が著しい。

岡谷エレクトロニクスがSCALAブースで展示を行っていた例では、55インチのサイズの透過型タッチパネル液晶を自販機の前面に取り付けていた。実際に自販機として動作するモデルだ。今回はモノクロであったがコントラストも透明度も非常に高く、中の商品がよく見える。またすでにカラーモデルも完成しているとのことだ。 もちろん全て動画再生可能なディスプレイである。自販機というのは、特に欧米市場では日本と異なり、現物を見せて商品を確認できることが大原則ということなのだそうだ。日本でも時々見かける、商品現物が見えて購入すると商品が押し出されてくるあれだ。このようにリアルな商品とディスプレイの映像をミックスするような場面での映像コンテンツは新しい領域でもあり、動くPOPとして今後映像演出の工夫が求められるだろう。

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岡谷エレクトロニクスのシースルーディスプレイ自販機

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こちらはフィリップスブースに展示されていたもの

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Manufacturing Resources Internationalの「TruVu」を組み込んだ冷蔵庫

また自販機以外にはコンビニなどのショーケース型の冷蔵庫に組み込んだ例の提案も 複数見られた。MRI(Manufacturing Resources International)の「TruVu」はカラーであるが透明度の確保がもう一歩の感じだ。STRATACACHEの「PrimaSee」もやはりお店の冷蔵庫への応用。発色はとてもいいのだがこれらは透明度がかなり低くて中の商品があまりよく見えない。

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STRATACACHEの「PrimaSee」

LGはかなり透明度の高いフルカラーの展示である。確かにトータルでは一番美しいのだがサイズが26インチだ。

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LG 26インチフルカラーシースルーディスプレイ

WRITER PROFILE

江口靖二

江口靖二

放送からネットまでを領域とするデジタルメディアコンサルタント。デジタルサイネージコンソーシアム常務理事などを兼務。