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[DIGITAL SIGNAGE EXPO 2013]変わりゆくデジタルサイネージエキスポ2013から

#DIGITAL SIGNAGE EXPO #Report NOW! #DSE2013

2013-03-06 掲載

今年もデジタルサイネージエキスポ2013がラスベガスで2月27日から開幕した。私は5年連続参加という、おそらく日本人で唯一のヘビーユーザーとなっていると思われる。他の映像系展示会も毎年巡回しているので、デジタルサイネージにだけに捕われない視点からレポートしたい。

デジタルサイネージの今を問うDSE開幕!

DSE2013_1.jpg Digital Sinage EXPO 2013

全体概要として定点観測的に俯瞰してみると、今年は、すっかりDSEは機器展示会になってしまったという印象である。数年前にはコンテンツ系企業の出展やセミナーが多くあったが、昨年にも増して今年はハードウエア中心になってしまった。少なくとも日本のデジタルサイネージ市場は、すでにモノ売り、システム売りだけでは市場が拡大しないことは明らかなことだ。コンテンツや運用、そしてそもそものユーザー視点で、何のためにデジタルサイネージを導入するのかという点について、他の手法も含めて複合的に提案しなければならない状況になっていて、そしてそれは当然の成り行きである。

デジタルサイネージエキスポでは、一部のセミナーを除いて、こうした部分に関してこの展示会から学ぶものはない。デジタルマーケティングとか、マルチスクリーンによるコミュニケーション設計といった視点は、現状ではデジタルサイネージ以外の場所に存在してしまっているだけであって、日本と状況としては変わりがない。

デジタルサイネージの世界にも4Kの波

DSE2013_2.jpg LGの84インチ 4K UHDディスプレイによるSD/FHD/UHDの比較

まず、今年の傾向としては放送業界がそうであるのと同様に、やはりデジタルサイネージの世界にも4Kの波が確実に来ていることを感じさせられる。現時点では4KUHD(Ultra HD)ディスプレイだけの展示であるが、来年あたりにはプレイヤー側やデリバリーに関する展示が増加していることだろう。最もわかりやすい展示をしていたのはLGである。84インチのディスプレイ3枚で、ファッションショーのような映像を用いながら、SD、フルHD、4K UHDの比較をしていた。当然のことながら、大画面でのUHD超高精細の素晴らしさが一目瞭然であり、ファッション、化粧品、自動車などの業界はこのクオリティを望むのは言うまでもない。

DSE2013_3.jpg LG 84インチ タッチパネルディスプレイ

現在でも印刷物のクオリティーに達していないという理由で、ディスプレイを利用しないクライアントも少なくはない。こうしたニーズにはUHDは十分答えになっていると思われる。なおLGは84インチのUHDタッチパネルも展示していた。他社のデジタルサイネージ向けのUHDディスプレイの展示は、Planarが84インチ、ViewSonicが84インチのタッチパネル型の展示を行なっていた。サムスンはUHDの展示はなかったので理由を聞いてみたところ、準備中ではあるが今回は出展を見送ったとの回答であった。

DSE2013_4.jpg PLANAR 84インチ 4K UHDディスプレイ

こうしたUHDディスプレイは、デジタルサイネージ的に見ても現時点では価格がネックであろうが、放送機器の動きを見る限りにおいては想像以上に普及浸透は早いと思うべきである。デジタルサイネージ業界はこれまで比較的閉じた世界であり、新しい技術に対して貪欲ではなかった。しかしテレビの動向からすると、数年のうちに対応が迫られるのは間違いない。現状の駅などにおけるディスプレイの主流である60インチクラスから80インチ以上が標準となり、コルトンボックスと比較して広告主やロケーションオーナーが許容出来るレベルにいよいよ到達できるのである。

DSE2013_5.jpg ViewSonic 84インチ 4K UHDディスプレイ

このクラスの映像を見ていると、超高精細大画面であるが故に、縦置きにして無背景に人物のアップを表示するのが非常にインパクトがあるのがよく分かる。横置きでは大きさも感じられず、地図や案内板などの用途はあると思われるが効果が薄いように感じた。

会場に見られる今年の見所とは?

Intel | SNS対応インタラクティブサイネージ
DSE2013_6.jpg インテル SNS対応インタラクティブサイネージ

インテルブースでは、数年前からの傾向と同様に、自販機やインタラクティブ系の利用事例が目立った。写真の例はカメラ内蔵のいわゆるプリクラ系のサイネージである。これまでもこうしたものはテーマパークなどに設置されていたが、それらは写真を撮影してメールで送れるといったものであった。今回の展示はFacebookやTwitterに投稿できるようになっているのがイマ風である。タッチパネルではなく、下に設置されている3色のボタンが画面連動しているのが苦肉の策といえようか。さらに顔認識によって表示される背景などが変化するというてんこ盛りともいった内容になっている。

このままの状態でニーズがどれくらいあるか疑問も残るが、はじめにソーシャルネットワーク側でコミュニケーションが設定されていて、スタンプラリー的に各ポイントを押さえていき、その様がSNSで拡散していくといったことであれば活用される可能性は秘めていると感じた。

DNP(大日本印刷) | 着せ替えサイネージで活用インタラクティブミラー
DSE2013_7.jpg 大日本印刷 インタラクティブミラー

インタラクティブの事例としては、シャープのブースにおいて大日本印刷(DNP)が開発したユニクロの着せ替えサイネージの事例が注目を浴びていた。いわばインタラクティブミラーである。60インチディスプレイとその上に取り付けられたカメラ、タブレットの組み合わせで構成されている。衣服を試着した状態でディスプレイの前に立ち、タブレットを操作して他の色や、袖のあるなしなどを試すことができる。従来もこうした例はあったのだが、衣服を単純に合成したようなものだったので、合成の違和感や動きには追従できなかった。

今回は、いわゆるクロマキーでキーイングして、カラーコレクターで各カラーに合わせているので、動きにも非常に自然に対応してくる。一昔前では長時間編集作業が必要だったことが、低コストでリアルタイムに実現してしまうのが感慨深い。メールやSNSにも対応している。ユニクロの商品のように、カラーバリエーションを試したいような場合には最適であろう。サンフランシスコのユニクログローバル旗艦店に実際に配置されているとのこと。現地で確認したいと思う。

X2O media | メディアを限定しないソリューション
DSE2013_8.jpg X20 media HTML5ベースのコンテンツオーサリング画面。左から素材をドラッグするだけ。各素材の大きさや位置も自在に変えることが可能

デジタルサイネージに限定せず、テレビやWEB、スマートフォンやタブレットといった複数のスクリーンを連携させるためのソリューション展示を会場内で唯一行なっていたのがX2O mediaである。HTML5ベースのコンテンツの制作および配信管理を含んだものだ。モバイル端末のOSとして、同じ時期にバルセロナで開催されていたMWC2013では、FirefoxやTizenといった新しい動きもあるようだ。HTML5でどこまで汎用性や実行速度が保たれるのかに関しては不透明さも残るが、唯一、真のマルチスクリーンを提唱している点には期待をしたい。マルチスクリーンはNABやIBCなどといった放送系展示会でももはや当然となりつつあるのだが、X2Oはこれらにデジタルサイネージも同一線上で配信できる点が他にはない考え方である。

DSE2013_9.jpg X20 mediaのマルチスクリーンの概念図。コールセンターまで含んでいる点が、インバウンドマーケティング的で画期的
SOUNDGRAPH | 手軽系のサイネージYouFrame
DSE2013_10.jpg SOUNDGRAPH YouFrame

またお手軽系のサイネージでは、SOUNDGRAPHのYouFrameに注目しておきたい。詳しくは同社のWEBをご覧頂きたいが、スマートフォンやタブレットでコンテンツ制作できるアプリを配布し(無料)、これが同社のクラウドを通じて専用のプレイヤー(350ドルから)にアクセスし、データダウンロードやスケジュール配信を行う仕組みである。制作や配信を手軽に行うという考え方としては非常に進んだものであり、さらにその使用感や操作性に非常に優れている。アプリはiOSおよびAndroidでそれぞれ無料ダウンロード可能できるので、コンテンツ制作方法の概要を掴んでみていただきたい(プレイヤーが接続されていないと一部機能が動作しない)。

DSE2013_11.jpg 無料のアプリによるコンテンツの制作と配信のステップ。スマートフォンでも操作しやすい工夫がされている。特にステップ4のプレイリストのタイムラインへの割付が、1時間単位の枠にドラッグするだけで自動で時間調整される。この要件で十分なケースを対象とする割りきりである DSE2013_12.jpg 専用のメディアプレイヤー。通常版は350ドル。右はHDMI入力の外部ソースを配信可能なバージョンで550ドル程度 DSE2013_13.jpg スマートフォン向けのコンテンツ制作配信アプリ

総括

展示会全体を通して飛び抜けたイノベーションは正直感じらず、機器展になってしまったのは残念ではあるが、アメリカ市場の堅調さを実感できる内容であった。と同時に、日本のデジタルサイネージ業界はアメリカに何ら遅れることはなく、コンテンツの工夫やマーケティング視点の導入、災害時の対応に向けた取り組みなど、最先端を走っていることが最認識できた。


WRITER PROFILE

江口靖二 江口靖二事務所主宰。現在デジタルサイネージコンソーシアム常務理事などを兼務。


[ Writer : 江口靖二 ]
[ DATE : 2013-03-06 ]
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