疾風の様に現れたNinja!

昨年のInterBEE2010でも話題を呼んだ、バッテリー駆動のコンパクトキャプチャーデバイス『ATOMOS Ninja』。日本人としてはなんとも気がかりなこのネーミングの製品は、香港に本社拠点を持つブランド、ATOMOSが送り出してきたProRes422による収録が可能なシンプルかつ安価なファイルベースレコーダー。

ATOMOSのCEOであるJeromy Young(ジェロミー・ヤング)氏とIan Overliese(イアン・オーバーリース)氏によって開発された。ジェロミー氏は以前カノープス社に在籍した経験から、大の日本贔屓だ。同社でプロダクトマネージャーやインターナショナル開発マネージャーを経てブラックマジックデザイン社へ移籍、ワールドワイドのビジネス開発マネージャーを担当していた。イアン氏は画像技術のASIC(カスタムチップなどの集積回路)技術のエキスパートで、独自のGPU(グラフィック・プロセッシング・ユニット)技術を持っており、彼もまたブラックマジックデザイン社でいくつかのプロダクトは彼が単独で設計した経緯がある。そんな業界プロフェッショナルがタッグを組んで生み出したATOMOS Ninjaとはどんな製品なのか?同社のCEOで『NINJA』のスポークスマンでもある、ジェロミー氏にインタビューした。

Ninja誕生の秘密は?

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ATOMOSのCEOであるJeromy Young(ジェロミー・ヤング)氏

–「Ninja」という名前の命名由来は?

J「私はカノープス時代の7年間日本に住んでいて、その間、日本の文化を楽しみ、本当に日本が大好きになりました。この『Ninja』のアイディアは、日本の武士の世界で、何かの事件が置きた時、そこに忍者が現れて急場を解決することに例えて、製品を使う上でその現場の問題を一挙に解決出来るようなイメージから考えたのです。あたかもマンガスタイルな話ですが、事件の現場に背後からサッと忍者が飛び出してきてその場を解決するかのように、ユーザーが他の製品を使っていて現場で様々な問題で困っているときに、さっと取り出してその場を救うことができるというイメージから、私はこの『Ninja』という名前にしたのです。私は日本人の武士が大好きなんですよ!」

–開発の経緯とバックグラウンドとは?

J「『Ninja』の開発は2010年5月に開始しました。ユーザーが制作現場において直面している問題を解決する必要があることを見て、私とイアンがまず決定したのは、良い製品を作るためには3つの条件のクリアが必要だということでした。

まず第一に、長時間収録が可能で、記録媒体は安価で手頃なメディア(=HDDかSSD)であること。Ninjaに使用しているノートPC用のHDD(SSD)はコンパクトフラッシュやP2カード、SxSメモリーカード、およびSDHCカードよりはるかに安いのです。

そして第二に、高品質な収録をするには、カメラ側のコーデックではなく、編集コーデックであるアップル社のProResで収録する必要があること。これは収録後の編集作業において、Final Cut Proや他のアップルのアプリケーションが非常に速く動作することを意味します。 そして第三は、バッテリーの問題。現場制作におけるバッテリーはいつでも大きな問題を抱えています。私たちが求めていたのは、現場で収録を停めずに、しかも長寿命が保てるバッテリーシステム=ノンストップでパワー供給が出来る、デュアルバッテリーシステムでした」

–『Ninja』の一番の特徴は?

J「持っている機能すべてが一つに組み合わさっていることです。長時間収録、安価なメディア、長寿命バッテリー、モニタリングと簡単操作のためのタッチスクリーン、それにプラスして、ポストプロダクション作業で最も使い勝手の良い、アップルのProResコーデックで記録できることです」

–製品発表して以来の市場反応は? InterBEE2010 Ninja.jpg

InterBEEでのATOMOS社(実際はフォーカルポイント社)のブースは、小さいながらも注目の的

J「お陰さまで『Ninja』は世界の市場から反響を頂き、すでに5,000以上のプリオーダー(2010年12月時点)を頂きました。そのうちのいくつかは、フルHD(1920×1080)をサポートしないDSLRユーザーなので、彼らには何らかの周知が必要です。『Ninja』はHDMIソースからクリアな1920×1080のフレームが出力されていれば、それを記録することができます」

–今後の展開は何か発表出来るものがありますか?

J「次はSDI入力のバージョンを考えています。『Ninja』はHDMIの手頃なカメラのためにあり、より安いカメラに高品質の収録機能を持たせることができます。そしてそれは、制作費やランニングコストも下げることになるのです」

ちなみにATOMOSはブランド名で、KATANA Ltd.が社名という位置づけだ。(社名もまた日本贔屓!)国内では今月末頃出荷開始予定。日本での価格は99,800円(税込)。またバッテリーはソニー製のものが使用可能。さらに今後はバルクのHDDを個人購入しても使用できるように、Ninja専用トレイのみを販売するという計画もあるようだ。今後の展開にも大いに期待したい。

フォーカルポイントコンピュータ(株)

WRITER PROFILE

石川幸宏

石川幸宏

映画制作、映像技術系ジャーナリストとして活動、DV Japan、HOTSHOT編集長を歴任。2021年より日本映画撮影監督協会 賛助会員。