NTT(日本電信電話株式会社)は、MPEG-4 AVC/H.264の拡張規格であるSVC(Scalable Video Coding)に準拠したコーデック(エンコーダとデコーダ)を開発したことを発表した。

このコーデックはソフトウエア構成で、1920×1080のHDTVからモバイルまでの多様な解像度の映像を1つの圧縮データで再生する「スケーラブル映像圧縮」という機能を実現するという。エンコーダによる圧縮データの生成およびデコーダによる複数解像度映像の再生を、ともにリアルタイムで処理する。これらの機能をフルHDの解像度で実現したのは世界初という。

最近の映像はデータ量が膨大であるため、効率的に伝送・蓄積するためには圧縮処理が必須だ。しかし、従来の主要な動画コーデック技術では、異なる解像度の映像の要求に応じて、複数の圧縮データが存在してしまい非効率だった。スケーラブル映像圧縮ならば、1つの圧縮データから異なる複数の解像度の映像を再生することが可能だ。この技術を用いるとサイマルキャストに比べてデータ量を10~30%程度減らすことができるという。

SVC(Scalable Video Coding)は、スケーラブル映像圧縮の国際標準方式として2007年に規格化された。SVCはMPEG-4 AVC/H.264の拡張規格であり圧縮効率が高いという特徴がある半面、圧縮処理のための演算量が膨大になりやすいという短所を持つ。フルHDのような高解像映像をリアルタイム圧縮処理するためには、画質を落とすことなく演算量を効果的に削減することが重要なポイントとなる。「階層構造を利用した高速モード選択」や、このモードを効率的に実現するための「階層ストライプ並列エンコーディング」を開発し、解決を図った。

NTTは、来る4月に米ラスベガスで開催される世界最大級の放送機器展NABにて、この技術を一般公開する予定。