日本放送協会(NHK)と株式会社日立製作所(東京都千代田区)は8月31日、放送映像を低解像度の動画ファイルに変換する際に、画質の劣化を抑えながら識別情報を電子透かしとして埋め込めるH.264トランスコーダーを共同で開発したと発表した。

今回発表されたトランスコーダーで変換された動画ファイルでは、専用ソフトにより識別情報を把握できるため、データ流出対策への貢献が期待できるという。従来は、データ流出を防ぐ方法として、データの識別情報を画像や文字として映像に上乗せ(スーパーインポーズ)していた。この方法では、本来の映像に不要な情報を上乗せしなければならないという問題があった。

共同開発されたトランスコーダーでは、映像が単調な領域や輪郭部を避け、絵柄の複雑な領域に多くの識別情報を埋め込み、この埋め込んだ識別情報を専用ソフトで把握できる。トランスコーダーの入力映像フォーマットはMPEG-2(100Mbps)、出力映像はH.264/AVC(2Mbps~512kbps)で、電子透かし埋め込み情報量は、映像1フレーム当たり64bitである。日立独自の電子透かし技術によって、放送映像を低解像度の動画ファイルに変換する際の画質劣化の低減も実現した。

今後、NHKと日立は、同トランスコーダーを活用して、映像データの効率的なセキュリティ管理を実現する放送映像のファイルベース化を進めていく。なお、同トランスコーダーの技術については、8月31日から愛媛大学にて開催される2010年映像メディア学会年次大会、9月7日からスペインで開催予定 のコンピューターと人工知能に関する国際会議「International Symposium on Distributed Computing and Artificial Intelligence 2010 (DCAI’10)」において発表される予定。