テレコムおよびケーブル市場向けのマルチスクリーンTV 配信ソリューションを展開している米Envivio社(エンビビオ社)がIBC2011に合わせて、同社のシステムを採用した企業の新サービスについて紹介した。

ベルギー有数のケーブルネットワークBelgacom TVは、パッケージサービスとして180チャンネル番組、国内サッカー中継、テレビガイドやPVR機能と、オプションのオンデマンドビデオ・サービスを提供している。新サービス「TV Everywhere」では、サービス加入者は無償で好きなコンテンツをテレビ以外にもタブレット、スマートフォン(Wifi経由もしくは3G)やPCで視聴できる。新サービスを開始するにあたり、基盤システムにノキア・シーメンス・ネットワークス社の「Ubiquity Multiscreen TV(ユビキタス・マルチスクリーンTV)」ソリューションを採用し、エンビビオ社製のネットワーク管理システム下にマルチスクリーン配信用エンコーダが組み込まれた。

フランス主要電気通信事業者、フランステレコムのブランド名ともなっているテレコム事業「Orange」では市場いち早くOTT TVサービスを展開している。同社は今回、既存サービスの拡充として提供チャンネルを増やした。システム構築には初期システムを手掛けた、同傘下で伝送サービスやコンテンツ管理を賄うGlobecast社が行った。新しいシステムではOrange Franceのモバイル、Wi-Fiおよびインターネットサービスを取り扱っており、当社では既存の運用を中断することなく、新しいサービスを開始できたという。

新しいヘッドエンドでは、1台のエンコードプラットフォームの各チャンネルから、全ての受信デバイスを網羅する13プロファイルを配信できるため、今までのように複数のヘッドエンドを設備する費用も管理する必要がなく、運用の能率性を向上させられると期待している。100チャンネル以上のライブTV番組をモバイルデバイスやPCで視聴できるサービスを提供するオペレーターは、ヨーロッパ市場でOrangeが初となる。米国では8月にケーブルビジョンがiPhone/iPad向けのオンラインVODサービスを300チャンネルに増やしている。

 

デンマークで主要ケーブルテレビ事業者として2番目の規模を持つStofaは、Envivio社製4Caster C4 エンコーダとネットワーク管理システムを採用し、既存のIPインフラストラクチャを利用して70チャンネル配信のOTTサービスの技術基盤を構築した。Stofaが始めた新サービス「web TV」は既に昨年11月から開始されており、加入者にiPhone/iPad、AndroidおよびPCデバイス上からテレビ番組を観賞できるサービスを無償で提供している。

Envivio 4Caster C4は、モバイルTV、IPTVやデジタルTVでのライブおよびVOD配信用マルチプラットフォーム・マルチプロファイル対応H.264トランスコーダ/エンコーダ。1入力から、iPhone/iPad、Androidといったモバイル系フォーマットから、Windows Media、Silverlight、Flash MediaやQuickTimeなど、さまざまなプロファイル/フォーマットへ同時にエンコードできる。そのため多様化したプラットフォームへのビデオ配信サービスのヘッドエンドシステムとして急速に需要を伸ばしている。

エンビビオ社は、ヨーロッパのほかにも米国、アジア市場の大手ケーブルおよびテレコム社が始めたマルチスクリーン配信サービスのシステム構築に携わっていることもあり、2012会計年度上半期の決算、売上高・純利益ともに大幅な伸びを示した。上半期だけで新しく38社のテレコムおよびケーブル局が当社システムを導入、北米においては市場トップ5の事業社が導入したと同社では発表している。

米市場リサーチ会社Informa Media & Telecomsによると、OTTで映像を視聴する規模は2013年にはIPTV利用者数を超え、2015年までには世界で約3億8000万人になるだろうとしている。