米Apple社が11日に世界開発者会議(WWDC)で発表した新iOSでの新たな戦略は、米Google社との関係を終結するものとして話題を呼んでいる。

Googleとは、Google Mapsを提供してもらいながらも、自社開発Android OSでサービスを展開している事実、フレネミー(frenemy)な関係であった。しかし、キックオフイベントでティム・クック最高経営責任者が「世界で最も進んだモバイルOS」と呼んだ新バージョン「iOS6」では、約200余りの新しい仕様が実装される中、独自開発の地図サービス「Maps」、Facebookとの連携機能といった、Google離れとなる仕様が含まれる。

iOS担当スコット・フォーストール上級副社長いわく、新OS開発において「Facebookにとっても最高のモバイル構築になるよう、非常に親密な協力体制で進めてきた」という。SNS分野でGoogleの強敵であるFacebookがOSシステムレベルで組み込まれ、端末に搭載されるほかの機能とシームレスで連動する。ユーザーフレンドリーな操作として、例えばFacebookへの一回のサインインで、写真共有からSafariやMaps、iTune、AppStoreなど、すべてのiOSアプリと連動する。それに加え、Facebookの友達情報や共有情報がすべてのiOS端末で同期するようになる。

これらはiOS5でTwitterと情報を同期させたものと似ている。iOS5のTwitter連動機能がリリースされた後、Twitterへの登録が3倍になったという。そして現在iOS5デバイスからは100億件のツイートが行われ、iOS5デバイスからの写真投稿の47%以上はTwitterから行われているという。

また事前情報で予測されていたとおり、iOS6ではGoogle Mapsにとって代わり、自社製の地図アプリ「Maps」が登場する。同社は過去にPlacebase、Poly9とC3 Technologiesのマッピング技術会社を買収しており、これら技術とデータを集結し、3Dマッピング「Flyover」、ターン・バイ・ターンナビ、そして1億以上のビジネスリストとYelpエンジン採用のリアルタイムの交通情報のほか、機能強化したSiriとの連携で音声による映画や飲食店などの検索機能や質問などに答えるナビ機能が搭載される。当初はGoogle Mapsにあるストリートビューや徒歩や乗換情報などは組み込まれないようだが、サードパーティとの提携で地下鉄乗換情報は今後期待される。

iOS6はiPhone 3GSおよび第二世代目以降のiPadにも対応する。開発者には開発キット提供の登録が当日から開始され、この秋にリリースされる予定だ。今回の開発者会議で明らかになったApple社の独自路線は、開発者側のGoogle離れを促すものとも見られる。

(山下香欧)