米Apple社は7月27日(現地時間)、デジタル権利管理技術(DRM)会社のオーセンテックを3.5億ドル(約270億円)で買収することを明らかにした。Appleが上場企業を買収するのは稀。通常は、買収先には新興の技術企業などが多い。オーセンテックを獲得することで、iPadやiPhoneといったモバイルデバイス向けの指紋認証や暗号化セキュリティの強化を狙うとみられる。

監督当局への提出書類によると、Apple社はオーセンテックの26日終値よりも58%プレミアムの一株当たり8ドルを提示した。これを受けて27日終値は、オーセンテックIPO以来の最大上昇記録、前日比64%高の8.42ドルまで跳ね上がった。アップルの株価も約1.8%(7.67ドル)上昇した。

オーセンテックは、マイクロソフトのDRM技術「Microsoft PlayReady」を用いた、iOSとAndroid OS対応のDRMクライアントを提供している。アダプティブ・ビデオストリーミングに対応し、スムースストリーミングとHTTPライブストリーミング上でコンテンツ保護を強化できるもの。

日本では、J:COMのマルチスクリーン対応VODサービス「クロスヴィ」にて、DRMフュージョンシステムが採用されている。オーセンテックは、DRMのほか、指紋認証技術で知られる企業で、指紋センサー・チップを開発、サムスン電子やレノボ・グループ(Lenovo)、モトローラ(Motorola)やノキア(Nokia)、富士通などに技術提供を行っている。今月にはVPN関連のセキュリティ技術の提供で、サムスン電子と契約していた。オーセンテックがApple社に買収されることにより、マイクロソフト社との技術協力および以上の提携会社のプロジェクトなどに影響がでてくる予測ができる。

(山下香欧)