米NBCの長寿深夜番組「Saturday Night Live (サタデー・ナイト・ライブ/SNL)」は、先駆けてウルトラHD(4K)でのプロダクション・ワークフローの構築を始めた。

4Kフォーマット対応のカメラは、市場に登場した当時から収録カメラとして検証を進めてきたという。前回のシーズン(シーズン38)では番組の一部を、4Kフォーマットをマスターとして収めた。撮影部隊の監督リス・トーマス氏とカメラ監督アレックス・ブルーノ氏を先導に、プロダクションチームは4Kをマスターとした様々なワークフローを試したという。

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通常SNLでは、プリ収録(SNL放送自身はスタジオからの生放送)の部分は金曜日に行って24時間後までに完パケを仕上げている。4Kフォーマットに変えても、このルーチンが保てるかどうかがひとつの検討材料だったという。収録カメラはCanon C500。ブルーノ氏はRAWファイルだと24時間以内に番組を仕上げることは厳しいと判断した。そこでRAWファイルをProResにカメラから直接変換できるAJA Ki Pro Quadに着目した。このソリューションによってRAWフォーマット処理作業の負担は勿論、記録デバイスの容量を抑えることができたという。RAWファイルだと1時間収録で1TBを費やしてしまうが、Ki Pro Quad(ProRes)であれば700GBで収められる。またKi Pro Quadで変換された444 ProResファイルのイメージクオリティは、Canon C500で収録したオリジナルのRAWファイルと同等だったという。

このワークフローで作り上げた番組は、先月5月4日に放送されたエピソード19(シーズン38)で放送された。番組は、俳優・コメディアンのザック・ガリフィアナキス氏が主演した70年代の刑事物語のパロディ「Kanish」とフットウェアブランド・New BalanceのCMパロディの部分。

金曜日に撮影したデータは、カラリストとエディター2名(New BalanceのCMとKanish部分)にそれぞれ送られる。New Balance CM編集側は、受け取ったプロキシデータでカット編集をおこない、EDLをポストプロダクション(Katabatic)に金曜日中に転送する。受け取ったKatabaticでは、DIシステムAssimilate Scratchでコンフォームとカラーグレーディングを行い、終わった素材をスタジオ側に転送する。Kanish編集側は、編集し終えた素材をポストプロダクションLight Ironへ転送しQuantel Pablo Rioで仕上げた。

AJA社によると、6月3日から、米国31か所を回って開催されるワークショップ「The Art of Visual Storytelling」にて、SNLで14シーズンも携わってきたブルーノ氏が、この4Kプロダクション・ワークフローなどについて講演をする予定だという。

(山下香欧)