オランダ・アムステルダムで開幕となったヨーロッパ最大級の放送機器展IBC2013では、放送に関するプロジェクトで用いられた革新的な技術および放送事業者と技術パートナーのコラボレーションを評価するイノベーションアワードが併催される。本アワードはコンテンツ制作/管理/配信の3部門がある。寄せられた200以上のプロジェクトの中、ノミネーションが各部門で3-4つのプロジェクトに絞られた。プロジェクトの中には日本で展開されたものもある。受賞者発表と表彰は、9月15日に行われる。

(1)コンテンツ制作部門

1つ目は、オーストラリアのFoxSportsが放送したクリケット試合中継で使われたライブ収録するヘルメットPOVカメラGlobeCamだ。開発元はグローブキャスト社。クリケットのバットマン(バッター)とウィケットキーパーのヘルメットに取り付けた、HD対応小型CMOSセンサー搭載のカメラで、HDMIウルトラワイドバンドを使ってライブ伝送をする。

2つ目には、BBCニュースとBBCスポーツが展開したロンドンオリンピックのトーチリレー中継がノミネート。モバイルビューポイント、ブラッドリーエンジニアリング、コブハム、LiveUとAntaresの5社がタイアップして、3G回線をボンディングした中継伝送が行われた。ライブストリーミングは、BBCのWebサイトとリニア放送のほか、ソーシャルTVとの連携もとった。

3つ目は、ITVとアドビが提携して開発したAdobe Storyという台本とスケジューリングを一括管理するツール。

4つ目は、世界初のHFRによる3D映画「ホビット」トリロジーのポストプロダクション。3部の製作を携わったパークロードポストプロダクションでは、SGO社MistikaのHFR-3Dメディアのコアプラットフォームが収録から完パケまでの制作ワークフローで採用された。

(2)コンテンツ管理部門

1つ目は、スロベニアのサービスプロバイダT-2と、システムインテグレーターのFora、Vision247が構築した、クラウドベースのIPTVプラットフォーム。120チャンネルのマルチスクリーン配信サービスにn-PVRも提供している。

2つ目は、RTEでのワークフローを完全にファイルベース化した、FAST(ファイル収集サーバ技術)プロジェクト。

3つ目は、GEMSセマンティックマルチメディアブラウザ。コンテンツクリエータ向けのマルチメディアコンテンツ検索ソリューションで、ユニークなGUIを持ったソフトウェアベースのソリューションで、セマンティックデータ処理、グラフィック表現、音声からテキストへの自動変換、自然言語処理が可能だ。

(3)コンテンツ配信部門

1つ目は、有料TV事業者Ziggoのクラウドベース・インタラクティブデジタルケーブルTVで、アクティブビデオ、SeaChange、サムスン、ヒューマックス、United&Webadvanceの5社が技術提携をして開発した、ZiggoのクラウドTVサービス用のSTBが評価された。

2つ目は、NTTコミュニケーション、富士通、ジュニパーネットワークスが日本民間放送連盟(JBA)向けに技術提携をして実現したMPLS(Multi Protocol LabelSwitching)専用線のギガストリームサービスを利用した非圧縮によるHDTV映像伝送。

3つめは、スペインAberitsテレコムのMPEG-DASHマルチスクリーンクラウドサービス。HarmonicとNagraの技術提供によって実現した、MPEG-DASHベースのマルチスクリーンTVサービス。

(山下香欧)