米IBMは2016年1月21日(現地時間)、ライブビデオ配信サービスプロバイダーの米Ustreamを買収したと発表した。財務的条件は公表されていない。今回の買収は、ビデオから収益化する企業顧客を支援するために、IBMのクラウドプラットフォームを強化することを目的としている。

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その一環としてIBMは、開発ラボと昨年までに買収したAspera、Cleversafe、ClearleapそしてUstreamを統合し、企業向けのクラウドビデオサービス部門を形成する。この部門では「クラウドベースのビデオサービスおよびソフトウェア市場の規模は1,050億ドル」とIBMが推計する潜在市場に向け、オープンAPIの開発、デジタル・ビジュアル解析、簡素化した管理まで、一貫としたビデオ配信サービスを展開していく。Ustreamの技術を組み込み、たとえばIBMのアプリ開発サービスBluemixにUstreamの開発プラットフォームを統合して、クライアントが開発者に独自の映像サービスを提供できるようにする。また視聴者の反応を測定するUstreamのリアルタイムソーシャル感情分析が利用できるようになる。IBMは、ビジュアル解析とインデックス作成やビデオ、デジタル画像の検索分野で1,000件以上の特許を保持しており、ビデオ関連の技術革新において4度のエミー賞を獲得した実績を持つ。

Ustreamは個人向けの動画共有サービスも提供しているが、米航空宇宙局(NASA)、韓国サムスンや米Facebook、米ナイキや米ディスカバリーチャンネルと企業向けのライブおよびオンデマンドビデオサービスも手掛けており、現在月間8,000万人以上が視聴しているという。

テレコム業界でもビデオ事業に賭けている。例えばAT&Tは衛星放送事業者ディレクTVを買収し、シングテルやベライゾンでも独自のビデオストリーミングサービスに乗り出している。さらにYahooやGoogleでもビデオストリーミングは収入源として非常に重要なポジションにある。Facebookもビデオコンテンツを拡大し、ライブビデオストリーミング機能に注力しているところだ。

IBMは現在、企業IT市場において厳しい圧力に直面している。同社はハードウェアに替わりハイブリッドクラウドとビッグデータ分析分野からの利益を得始めているが、この新しいクラウドビデオサービス部門の展開で、クラウド戦略を更に推し進めると見える。

(山下香欧)