Blackmagic Designの発表によると、The Post Loungeのカラリストであるデイドラ・マクルランド氏(CSI)が、コメディ映画「A Few Less Men」のカラーグレーディングにDaVinci Resolve Studioを使用しているという。

2011年公開の「A Few Best Men」の続編である同作は、第1作のその後を追うもの。デビッド、トム、グラハム、ルークの親友4人組がデビッドの結婚を祝福している中、ルークが崖から転げ落ちる。一命を取り留めたルークを発見したものの、直後に巨大な岩がルークを押しつぶしてしまう。デビッド、トム、グラハムがルークの遺体を故郷のイギリスまで送り届けることになったが、彼ら自身がオーストラリアの人里離れたアウトバックで立ち往生することになり、そこから奇妙な冒険が始まるというストーリー。

ブリスベンに拠点を置くThe Post Loungeだが、同プロジェクトのために、メルボルンの新しい施設にDaVinci Resolve Studioのグレーディングシアターを構築した。The Post Loungeオーナーのスティーブ・クーパー氏は次のようにコメントしている。

クーパー氏:当社では、映画製作業界に対して、効果的でフレキシブルな低価格のサービスの提供を信念としているので、効果的でフレキシブルな機器だけを選ぶことは最も重要です。つまり、ワークフローの多くの段階で使用でき、低価格でポータブルな使いやすい機器である必要があります。そういった意味で、DaVinci Resolve Studioは当社のビジネルモデルに最適でした。ラッシュのトランスコード、編集、オンラインコンフォーム、グレーディングに使用しており、ブリスベンとメルボルンの両施設でファイルベースのファイナルの作成も可能です。

マクルランド氏:夜間にブリスベンのチームが、リモートで必要に応じてVFXの追加や編集の調整を行えたのはとても便利でした。DaVinci Resolve Studioの利用者数は急速に増えており、またエディターとカラリストの両方が簡単に使えるツールです。オーストラリアの別の州にいるエディターチームとアシスタントカラリストが、夜間やバックグランドで作業できることに非常に感心しました。

いくつかのVFXショットでサポート作業を行ったマクルランド氏は、DaVinci Resolve Studioのツールが増加していることにより、VFXアーティストとカラリストとの間の区別が薄くなっているという。

マクルランド氏:クライアントが抱える問題を積極的に私自身でグレーディングスイートで解決する方が、別のVFXのデリバリーを待っているより好きですね。俳優たちが砂漠を歩いているシーンで、例のごとく青空と曇り空のジレンマに行き当たることになったのですが、DaVinci Resolve Studioを使うことでシーンが一貫性のあるものとなりました。曇りの白い空をキーイングし、前のシーンからの青空を重ねて、青空をシーンに反映しました。

グレーディング中にフィルムの全体的なルックを微調整することに加え、マクルランド氏は環境や地理的な変化をグレーディングで強調することで、シーン間のコントラストを強調するように指示を受けたと語る。

マクルランド氏:グレード中、この映画のルックを「チョコレートボックス」と呼びました。これは、飾り立てた派手なという意味でルックにぴったりの言葉でした。フィルム全体のルックは暖かくカラフルで「本当とは思えない出来過ぎた感覚」を生み出すように心がけました。

また、オーストラリア中央部が舞台なので、観客がその熱気を感じられるようにしました。誇張された色の照明のシーンが複数あり、かなり独特な衣装があちこちで使われているので色を強調することは重要でした。それに対して、主人公たちが見知らぬ人の家を訪れるシーンの暗くて不気味にすら感じる雰囲気が反対の効果を生み出し、また逆にその不吉な暗さは部屋中にあふれ返る、型破りな服のカラフルな色で一瞬にして覆されます。

全体的に暖かみを強調する作業に重点を置きましたが、作品を通して一色のみのイメージにならないように緑と青を強めて対比を作りました。作品全体は彩度の強い色を使い、汗を感じられる熱気、そして時折暗く不気味な雰囲気を感じられる仕上がりになりました。また、異なる地理を色によって特徴付けています。ロンドンに切り替わるシーンでは、低彩度の冷たく暗い色を使用することで、観客が寒さとオーストラリアとの違いを感じられるようにしました。

グレーディングは13日間で行われ、マクルランド氏は作業効率を最大限に上げるにあたり、DaVinci Resolve Studioの複数のツールが役立ったとしている。

マクルランド氏:バランスを取るためのグレーディングの後、ショットをグループ化し、特定のシーンの全体的なルックを作るために「プリクリップ」または「ポストクリップ」を使用すると非常に効率的に作業できることが分かりました。クライアントが作業前と後を比較したい場合、ルックのオンとオフを切り替えて複数のバージョンを作成できました。「末尾にノードを追加」コマンドもとても役立ちました。クリック1回で複数のショットに同じ調整ができました。

同作品の監督を務めたマーク・ランプレル氏は、マクルランド氏の仕事に関して次のようコメントしている。

ランプレル氏:撮影監督のスティーブ・アーノルドと私は、極めて明確なビジョンを持って撮影に取り掛かりました。デイドラは、そのビジョンを注意深く引き継ぎ、幾度となく映像に反映してくれました。短期間で作業を完了させてくれただけでなく、デイドラ自身のアイデアや考えなども提供してくれました。さらに私たちが抱いていた期待値を何度も超越する改善をグレーディングでショットに加えてくれました。デイドラは「正確な仕事をする」という静かな信念のもとで、膨大なグレーディングの知識を魔法のように使って作業を行ってくれました。