株式会社エブリーが運営するレシピ動画配信メディア「DELISH KITCHEN」の撮影に、キヤノンの業務用4Kビデオカメラ「XC10」が使用されているという。

エブリーは動画メディアサービスを中心に事業を行っており、DELISH KITCHENの他にも、女性向けのライフスタイル動画メディア「KALOS」、ママ向けのファミリー&ライフスタイル動画メディア「MAMADAYS」、ニュース&エンタメ情報を配信している「Timeline」を展開している。DELISH KITCHENでは、2017年2月のオフィス移転を契機に、キッチンスタジオのメインカメラをXC10に総入れ替えした。

DELISH KITCHENの編集長で料理研究家の菅原千遥氏に、XC10を採用した経緯や目的、その効果などを伺った。

DELISH KITCHEN編集長/料理研究家 菅原千遥氏

菅原氏:DELISH KITCHENは「明日だれでも簡単に作れるレシピ」をコンセプトにレシピ動画を提供しています。配信先はSNSと自社のアプリでユーザー層は20代から40代の女性が中心です。その80%以上が既婚の女性で主婦層が多いですね。

主婦の方に毎日の献立を提案したり、初心者の方でも簡単に作れる料理をピックアップして提案したりしています。2015年の9月からスタートして、弊社のサービスの中ではコンテンツ数が現状で一番多く、SNSのファン数が270万人(※2017年6月末時点)を超えるサービスに成長しました。

――DELISH KITCHENの動画の特徴を教えてください

菅原氏:スマホで見てもらうことを前提にしているので、アプリの中では基本的に全画面で見るのに適した縦型と、スクロールしていくときに見やすい正方形を採用しています。あとはYouTubeへの配信や、企業とタイアップ動画を作らせていただくこともあり、PCのディスプレイに表示する場合などは16:9の横型が好まれます。動画の尺は1分前後で、隙間時間でも見てもらえて、しっかりレシピがわかることを重要視して生まれたフォーマットです。

縦と正方形、横と正方形という組み合わせでコンテンツを作る場合はトリミングをして使うこともあります。最近では引きで撮影しておいて、縦・正方形・横の3つを同時に作成するということも少しずつテストし始めています。

――XC10を選んだ経緯をお聞かせください。

菅原氏:オフィスを移転するタイミングでキッチンスタジオを増やすことになり、既存のカメラを増やすか、新しいカメラを導入して増やしていくか検討しました。カメラに求めたポイントは3つあります。それまで使っていたカメラより「小型である」こと、「画質が良い」こと、さらに操作性に関して調理スタッフが「操作しやすい」ことです。

調理スタッフは基本的に一人で調理と撮影をします。皆さん料理のプロではありますが、撮影の技術や知識に関してはほとんどありません。そういった撮影に詳しくないスタッフでも手軽に使えることが大前提としてありました。

小型であるというのは、基本的に俯瞰の定点で料理の動画を撮っていて、ブームスタンドにカメラを取り付ける際に揺れないようボディが小型・軽量であることが重要でした。幾つかカメラを検討しましたが、XC10は頭一つ抜けていました。

自分でも触ってみてオートフォーカスが使いやすく、とても軽いので女性のスタッフでも持ち運びやすいだろうと感じました。新オフィスに移転してから徐々に使い始めていますが、XC10は20台以上導入していて、すでに全コンテンツの半分くらいで使用されています。

――画質に関しては、どんな点が評価されたのでしょうか。

菅原氏:これまで使っていたカメラに比べるとXC10は平均のビットレートが高い点が決め手になりました。料理動画は寄りたい場合に編集でトリミングしてアップにするのですが、ビットレートが高くて画質が良いほうが綺麗に寄れます。揚げ物のアップやシズルが欲しい時に、拡大した時の画質の粗さが以前使っていたカメラよりもだいぶ改善していますね。

――操作性に関してはいかがでしたか。

菅原氏:これまで使っていたカメラはボタンやダイヤル式で設定するタイプでした。RECもボタン式だったのですが、操作性としてはタッチパネル式のほうがカメラに慣れていない調理スタッフでも扱いやすいですね。また俯瞰の位置に設置すると、カメラ側の操作ではなくリモコンのボタンひとつで操作できるところも、すごく覚えやすくて便利だと思いました。

――レシピ動画を作る上で、特に気に入っている機能や使い勝手が良い機能はありますか。

菅原氏:料理の完成カットは調理スタッフが一人で箸上げをしてオートフォーカスで撮るのですが、タッチパネルでフォーカス操作ができるので使いやすいです。ワンマンだとどうしても大変になるところですが、箸上げしながらフォーカスが綺麗に合って、すべて一人で完結できるというのがポイントです。

また、モニターが可動式になっているのも良いですね。カメラからHDMIで外部モニターに出力はしていますが、カメラ本体のモニターも下からちゃんと見えるように設定できるので安心です。あとは使ってみてわかったことなのですが、キッチンは小麦粉や塩など細かい粒子のものを多く使う場所なので、レンズ一体型のほうがカメラの中に粉末などが混入しないという点でも扱いやすいと思いました。

――撮影から編集までのワークフローを簡単に教えていただけますか。

菅原氏:調理スタッフが一人で撮影を行って撮影漏れがないかどうかを確認し、撮った素材を大きい容量のHDDとクラウドにアップします。編集はHDDの映像を使ってエディターが担当します。クラウド上にも格納することで、撮影後に調理スタッフもエディターも映像素材を共有できるようにしています。

調理スタッフが動画を確認する際はXC10で撮ったままのデータでMXFのファイル形式に対応したプレイヤーを使って確認します。編集ではMXFファイルを編集ソフトのAdobe Premiere Proでそのまま読み込んで編集をしています。

――レシピ動画の色味などについては、どのように設定や調整をしていますか。

菅原氏:現在はマニュアルで撮影していて、撮影モードをEOS Std.のルック2に設定しています。色が鮮やかに撮れるモードなので料理の色味がはっきりと出るのが特長です。部分的に発色がちょっと鮮やかになりすぎるところもあるので、他のモードも調整しながら検討しているところです。

ホワイトバランスや絞りなどのセッティングは全て事前に設定し、調理スタッフの方にはどのぐらいの数値感で設定しているかを情報共有しています。照明も位置は事前に決めておいてライトをつけるだけなので、映像チェックの段階で修正が必要になった場合にカメラの調整を加えるようにしています。

XC10でできるカラー補正や設定などの調整はとてもやりやすいと感じています。また今後は色味の補正方法として、Canon Logで撮影してLUT(Look Up Table)で色を調整することも検討していますが、今はまだ試験段階ですね。

――今後のXC10の活用についてお聞かせください。

菅原氏:XC10に関しては、すべての調理ブースに導入しましたので、今後は撮り方などをブラッシュアップしてより良いコンテンツを作っていきたいです。新しいコンテンツが求められた時にクオリティの高い画質のものを展開できたらいいなと思っています。4Kに関しても録画時間と容量の面で制約が大きくなってしまうので現状では試せていませんが、撮影時間の短いコンテンツなら対応できるかもしれません。XC10は4Kも撮れるので、今後コンテンツを増やしていく段階で試していきたいです。