ローランドブース動画

ローランドブース 360°全天球動画

RICOH THETA Vで撮影した360°全天球動画です。視点変更機能を利用するにはPC版Google ChromeブラウザおよびiOS/Android版YouTubeアプリが必要です。(アプリ起動はこちら)

ワイヤレスタリーのシステムが魅力的な「V-60HD」

ローランドブースの目玉は初展示となるHDビデオスイッチャ-「V-60HD」。ローランドはここ数年、コンパクト型のスイッチャーを何機種もリリースしてきているが、V-60HDはその集大成的なモデルだ。特に2018年上旬提供予定の「スマートタリー機能」というワイヤレスタリーのシステムが面白い。今までタリーのシステムを導入したくても予算的に導入できなかった人には朗報となる機能だろう。

スマートタリーは、スマートフォンをタリーランプの代わりとして使えるというシステムで、無線LANアクセスポイントやスマートフォン、カメラのシューにスマートフォンを取り付けるアクセサリーを別途用意する必要はあるものの、この機能自体は新たな追加投資を必要とせずにタリー機能を実現できる。スマートフォンのランプはWebブラウザで実現している機能で、新たにアプリケーションをインストールする必要もない。また、タリーデバイスとして使用する端末はiOSやAndroidのどちらでもよく、特に最新のOSでなければいけないということもない。そのため、現場のスタッフのスマートフォンを一時的に借りて対応することもできるだろう。

映像だけでなく音声もミキシングできるSDI/HDMI両対応の6chビデオスイッチャー「V-60HD」

スマートタリー機能を使うと、本体のチャンネルの選択に合わせて対応させたスマートフォンの画面の色が変わる。例えば本体の4チャンネルを選択するとことで、4チャンネルのスマートフォンの画面も連動して赤くなる

管理もWebブラウザ上で行い、管理画面で「何チャンネルをタリーとして使う」という設定が可能。グリーンタリーとよばれるスタンバイの状態も緑で分かるようになっている。複数のスマートフォンに同じ番号を割り当てることも可能で、カメラマンと演者さん用に同じ番号を割り当てるような使い方もできる。

タリーデバイスの設定もスマートフォンのWebブラウザから行うことが可能

複数のデバイスに同じ番号を割り当てることも可能

デモ機にはなかったが、スマートフォン用のヘッドシューを用意してカメラに取り付けて使用する

本体側の仕様としては、SDIの入力は4つ、スケーラーの入ったHDMIは2つ、7番と8番は静止画が使える。小規模なセミナーや講演会の収録でプロジェクターに映像を出したい場合などで使いやすいといえるといえるだろう。

入力は3G/HD-SDI×4とHDMIx2など。出力は3G/HD-SDI×2やHDMI×2などを搭載する

静止画も使えるので、ライブ配信で決まった位置にロゴを載せることができる。また、DSKと呼ばれるキーを合成するような機能も搭載されている。A4サイズのコンパクトなスイッチャーにも関わらず、プログラムやプリセットの映像の切り替えと別にオグジュアリーの列も独立してもっている。オグジュアリーで別系統の映像を送り出すということもできる。

PinP機能は、Squareのほか、Circle(丸)、Heart(ハート)、Diamond(ひし形)の3つのサイズから選択可能

8chオーディオエンベデッダー機能も見逃せない機能だ。本来、SDIには8チャンネルのオーディオを含めることができ、V-60HDではマスターアウトの2チャンネルのほかに6チャンネルのアナログ入力音声をSDI映像にエンベデットできる。そこにはマイクが4本とラインが2系統入るようになっており、ステレオアウトと別にオーディオを個別に音素材としてSDIで送り出すことができる。

ATOMOS SHOGUN INFERNOは、SDIにエンベデッドした8チャンネルオーディオのレコードに対応している

ATOMOSのレコーダー「SHOGUN INFERNO」はSDIの8チャンネルのレコーダーに対応しており、ブースではこちらと組み合わせて映像と音声8チャンネル分が一個のファイルとして収録ができるデモを紹介していた。従来はノンリニア編集でステレオの音しか残っていないとマイクごとの音量調整をもう一回やりたくてもできなかったが、8chオーディオエンベデッダー機能では元素材も全部パラで残っていることになり、後から個別の編集を行うことが可能になる。

光ケーブル接続を使ったリモートプロダクションシステムを実演

池上通信機ブースと光ケーブルを接続したリモートプロダクションシステムも目を引く展示となっていた。リモートプロダクションとは、スポーツイベントの際に中継車の台数が限られていて中継車が出せない場合や、機材やスタッフの数が限られているような状況のときに、スタジアム側には最低限の機材とスタッフだけを置いて、放送局と光ファイバーでつないで局側のほうの機材やスタッフを使って制作を行っていく方法のことだ。

放送局と中継現場を池上通信機の「iHTR」でやり取りをするリモートプロダクションシステム

このリモートプロダクションを実現するうえで肝となるのが、池上通信機の「iHTR」という機材で、こちらを使用して映像信号、音声信号と制御信号の通信を行っている。例えば、ローランドブースを放送局と仮定して、池上通信機ブースのカメラを動かし、そのカメラからきた映像がSDIで返しとして送られてきて、ローランドブースのスイッチャーに入ってくる様子を体験できるようになっていた。

IP接続のKVMを使って、池上通信機に設置しているビデオサーバーを非常に短い遅延で操作する実演もできるようになっていた。また、IP接続のKVMを使うことによって、テロップの情報を出先から打ち込んで局側にあるサーバを使ってテロップを作り、信号をもらうことも可能だという。

池上通信機の映像パケット化多重光伝送装置「iHTR」シリーズ

音声を載せることも可能で、ローランドのデジタル伝送規格のREACも対応しており、SDIとREAC信号の制御信号をすべて光ケーブルで送るようなことができるようになっている。リモートプロダクションは、高校野球の中継やマラソン大会の中継とかですでに実際の中継業務でも使われているという。リモートプロダクションを使った映像制作は今後ますます増えてきそうだ。