Blackmagic Designは、「Blackmagic RAWのベータ版」を発表した。Blackmagic RAWのパブリックベータは、URSA Mini Pro向けのBlackmagic Camera 6.0ベータアップデートでダウンロードでき、Blackmagic RAWの最終リリース版は、さらなるテストの後、数週間後に発表予定。また、Blackmagic RAWのサポートを追加するDaVinci Resolve 15.1アップデートも、同社Webサイトから無償でダウンロード可能。

Blackmagic RAWは数年にわたって開発が続けられており、デモザイクアルゴリズム、幅広いメタデータ、GPUおよびCPUアクセラレーション処理など、新しいテクノロジーを複数採用したコーデック。同コーデックは、撮影に加えて、編集およびカラーグレーディングなどのポストプロダクションを通して使用でき、単一のファイルとして管理可能。

Blackmagic RAWは、デモザイク処理の一部をカメラに移し、カメラ本体でハードウェアアクセラレーションが行われるため、効率的にエンコードされるが、品質、ビット深度、ダイナミックレンジ、柔軟性はRAWと変わらないという。その他のビデオコーデックと比較して、優れたパフォーマンスと小さなファイルサイズを実現。プロセッサーに負荷がかかるデモザイクの一部がカメラハードウェアで行われるため、DaVinci Resolveのようなソフトウェアにおけるファイルのデコードに関する負担が減る。さらに、GPUおよびCPUアクセラレーションによりフレームのデコードが高速に行われるため、編集やグレーディングで極めてスムーズなパフォーマンスが得られるとしている。

カメラやセンサーの特徴を認識できるため、画像データに加え、イメージセンサー固有の特徴がエンコードされ、Blackmagic RAWファイルに保存されるため、ISO、ホワイトバランス、露出、コントラスト、彩度などをコントロール可能。また、第4世代のBlackmagic Designカラーサイエンスを採用しており、スキントーンを極めて正確に再現。イメージは、最大限のカラーデータとダイナミックレンジを提供するためにデザインされた、カスタム・ノンリニア12-bitスペースを使用してエンコードされる。

また、Blackmagic RAWが採用しているテクノロジーには、ソフトウェアデベロッパーが簡単にアクセスできる。無償のデベロッパーSDKを使用すると、Mac、Windows、Linuxで、あらゆるサードパーティ製ソフトウェアアプリケーションにBlackmagic RAWのサポートを追加可能。Blackmagic RAWデベロッパーSDKは、エンベッドされたセンサープロファイル・メタデータおよびBlackmagic Designカラーサイエンスを自動的に使用するため、予測可能で正確なイメージがレンダリングされるため、ワーフクローを通して一貫したカラーを得られる。

ファイル圧縮は2種類あり、ユーザーは固定クオリティまたは固定ビットレートから、作業に合わせてエンコードの種類を選択できる。固定クオリティは、可変ビットレート・エンコーディングを使用する。ディテールなどを多く含む複雑なフレームは、高いデータレートでエンコードされるため、ディテールが維持され、可能な限り高い品質が保たれる。Blackmagic RAW Q0では量子化は最低限しか行われず、その結果として得られる画質は最高品質となるという。

一方、Blackmagic RAW Q5は中程度の量子化を行い、より効率的なエンコーディングと小さめのファイルサイズを実現する。Blackmagic RAW 3:1、5:1、8:1、12:1では、固定ビットレート・エンコーディングが使用され、予測通りの一貫したファイルサイズで、可能な限り優れたイメージが得られる。これらの比率は、カメラセンサーからの単一フレームの未処理のファイルサイズに基づいているため、圧縮の相対的な量が簡単に把握できる。

Blackmagic RAW Q0および3:1では、カメラが本来持つ、手を加えられていないネイティブ品質が得られるため、エフェクトを多用する劇場映画や商業作品に最適。Blackmagic RAW Q5および5:1は極めて高品質であるため、テレビシリーズやインディーズ映画に適しているという。Blackmagic RAW 8:1および12:1は高品質で高速であるため、通常はRAWで撮影しない制作に向いているとしている。

Blackmagic RAWのサポートを追加するDaVinci Resolve 15.1では、編集、カラーコレクション、VFX作業がスピードアップし、単一ファイルの作業では、フォルダー内の無数のスチルイメージのシーケンスを扱うのに比べ、メディア管理が極めてシンプルになるとしている。DaVinci ResolveでRAW設定を変更すると、サイドカーファイル(.sidecar)が生成されるか、既にファイルが存在する場合はアップデートされる。Blackmagic RAWに対応する他のソフトウェアアプリケーションでファイルを開くと、付随するサイドカーファイルに保存されたDaVinci ResolveのRAW設定が、自動的にイメージの表示に使用される。サイドカーファイルを取り除くと、ファイルはエンベッドされたメタデータを代わりに使用してイメージを表示する。同ワークフローにより、異なるアプリケーションを使用して作業する際に、RAW設定の非破壊的な変更が可能になるとしている。

最新のCPUおよびGPUアクセラレーションをサポートしているBlackmagic RAWは、AVX、AVX2、SSE4.1に対応したプロセッサー向けに最適化されている。マルチスレッドに対応しており、複数のCPUコアで処理が可能。また、GPUアクセラレーションはApple Metal、CUDA、OpenCLをサポートしている。フレームのデコードおよびイメージ処理は極めて速く、DaVinci Resolveで編集、カラーコレクション、VFX作業が円滑に行える。

無償のBlackmagic RAWデベロッパーSDKは、Mac OS、Windows、Linuxに対応。同SDKには、デベロッパーが作業する上で必要なあらゆる情報が含まれているため、サードパーティ製ソフトウェアアプリケーションでBlackmagic RAWをすばやく簡単にサポートできる。デベロッパーは、ファイルのデコーディングのGPUおよびCPUアクセラレーション・アルゴリズムにアクセスできるだけでなく、カメラのイメージセンサー特有の情報にもアクセスできるため、使用しているアプリケーションでファイルを正確にデコードおよび表示できる。

メタデータは、直接Blackmagic RAWファイル(.braw)にエンベッドされ、サイドカーファイル(.sidecar)に保存することも可能。サイドカーファイルのメタデータは、エンベッドされたメタデータを上書きすることなく、オーバーライドできる。また、Blackmagic RAWはフレームごとのメタデータもサポートしているため、焦点距離などのフレーム単位で変更されることの多い値も確認可能。

Blackmagic DesignのCEO グラント・ペティ氏は次のようにコメントしている。

Blackmagic RAWは、真の意味で、時代に即した高性能なプロ仕様のRAWコーデックです。オープンでクロスプラットフォーム、さらに無償である点を踏まえると、世界唯一の存在と言えます。視覚的ロスレスのRAWの画質が、従来のビデオワークフローの速度で得られるので、とてもエキサイティングです。何より、ライセンスや継続的な費用は一切必要ありません。Blackmagic RAWは、オープンでエレガントな、標準化された高品質の画像フォーマットを業界に提供するために開発されました。完全無償で、多様な製品に対応し、様々なワークフローで使用できるように作られています!

なお、Blackmagic RAWベータ版は、2018年9月14日~18日(現地時間)の期間中、オランダ・アムステルダムにて開催される欧州最大の放送機器展「IBC2018」の同社ブース(スタンド7/B45)にて展示される。