今年で6回目を迎えた「ライブ・エンターテイメントEXPO」は、昨年同様千葉・幕張メッセにて2月27~3月1日の3日間開催された。主催者や制作会社がコンサート、フェス、スポーツ興行などを開催する際に必要な機材やシステムの展示会で、「ライブ配信・収録」や「演出・機材」などのゾーンでは毎年映像業界で機材を取り扱う企業が出展していた。

また、昨年と同様に同時開催展として「第2回 スポーツビジネス産業展」も開催された。同展示会は、「クラブ経営」、「ファンサービス」、「選手の育成」、「最新テクノロジーやITを活用したトレーニングやスカウティング」、「スタジアムソリューション」を求めて、プロスポーツ、トップリーグ、トップアスリートなどが導入や選定のための商談を目的としたスポーツビジネス産業の専門展となっている。2020年の東京オリンピックに向け、今後注目の分野と言えるだろう。

2020年東京オリンピックに向けた施策多数「スポーツ ビジネス産業展」

■Robycam Japan

4点吊りケーブルカメラシステム「Robycam Compact」を展示。Robycam Compactは縦横無尽に空中を可動し、様々な角度のアングルで撮影可能。Compactは、スタジオや展示ブースや小型から中型の会場でコンパクトに使用するように設計されており、設置の柔軟性と安全性を保持している。

カメラヘッドは3軸のジャイロスタビライザーヘッドとなっており、360°無制限連続パン回転が可能で、カメラへの電源供給も行える。対応カメラはHDカメラではソニーHDC-P1、グラスバレーLDX Compactなど。UHDカメラはソニーHDC-P43、グラスバレーLDX Compact、パナソニックAK-Ub300など。シネマカメラではARRI ALEXA Mini、RED EPIC、RED DRAGON、ソニーPMW-F55など。対応レンズはキヤノンおよびフジノンのENGレンズ。バッテリー交換なしで6~8時間は連続で可動するとのこと。


■富士通

スタジアム/アリーナ向けソリューションとして、競技観戦のエンターテインメント性を向上しつつ、同時に管理/運営を効率化するソリューションを展示。

今年1月に富山県で開催されたB.LEAGUE ALL-STAR GAMEのライブビューイングを東京で開催。次世代型ライブビューイングとして、富山市総合体育館の試合映像をリアルタイムにライブビューイング会場に届ける高臨場感映像伝送技術と、音の情報を取り込み拡張して観客へ届けるSound Intelligence技術を駆使した観戦スタイルを実現している。

次世代型ライブビューイングでは、8Kワイドスクリーンとサラウンド立体音響による臨場感、音のAR技術と低遅延・双方向伝送による一体感、プレーを盛り上げるための演出としてICTガジェットが活用されている。ブースでは高精細な映像と臨場感のある音声だけでなく、選手のドリブルや靴の音など、試合中のコートの振動と合わせて床が振動する仕組みとなっていた。

リアルタイム映像伝送装置「IP-HE950」は、H.265/HEVCを採用したリアルタイム映像伝送装置。H.265はH.264の約2倍の圧縮効率を実現。LSIを採用し、1Uハーフラックサイズの小型筺体で4K映像のリアルタイム伝送が可能


■ニコンシステム

ニコンシステムブースでは、「撮影自動化/省力化」「ファンサービス向上」に有効な撮影ソリューションを展示。フィールドスポーツ向け半⾃動追尾撮影ソリューション「POLYCAM ONE」や、⾃動追尾撮影ソリューション「POLYCAM CHAT」の紹介が行われていた。

POLYCAM ONEは、主にスポーツの撮影を省力化するソリューション。撮影者が操作するメインカメラの動きに合わせて、複数のサブカメラ用ロボット雲台が連動し、ワンオペレーター・マルチカメラを実現するとしている

POLYCAM CHATは、小規模スタジオ撮影やインタビュー撮影の自動化を可能にするソリューション。人の顔や手足を検知するAIによって人物を追尾し、滑らかで安定した動作で被写体を自動で撮影してくれる

Mark Roberts Motion Control社製映像機器のロボット制御ソリューション「AFCシリーズ」は撮影用ロボット雲台で、放送用BOXカメラなどの高重量の撮影カメラを搭載可能。ブースで搭載されていたカメラは参考出展のZ 7

3D技術でスポーツのフォームを解析するシステムも参考出品されていた。同システムは、体の動きや姿勢を3Dデータとして撮影・画像処理し、数値化したり視点を変えて観察可能な姿勢解析システム。普段のウェアのまま、撮影・分析が可能で、屋外での利用も可能だ。使用用途としては、選手力の強化・育成、商品開発検討などが挙げられる


■丸玉屋

丸玉屋は、1990年に創業し、音楽と花火をシンクロさせたショー「花火ファンタジア」を開発。以来、日本全国のテーマパーク、花火大会、ライブ会場等のあらゆる環境で年間500を超える花火ショーを実施している会社だ。ブースでは、新しい花火鑑賞方法「ハナビリウム」を展示していた。

「ハナビリウム」は、本来花火師しか見ることのできない、花火を真下からみた映像を360°カメラで撮影し、フルドーム型映像として制作。フルドーム用に設計した3600発の花火演出で全天周を360°にわたり花火が駆け巡り鑑賞者を包み込み、3D音響でリアルな音場を再現していた

ドームの天井にBenQ社プロジェクターを4台設置し、円形のスクリーンに投影

イベント業界の“今”がわかる「ライブ・エンターテイメントEXPO」

■NHK

NHKブースでは「8Kスーパーハイビジョンシアター」を設置。300インチ大画面スクリーンにて、紅白歌合戦のダイジェストや、NHK杯フィギュアなどの8Kコンテンツの上映を行った。ハイビジョンの16倍の超高精細映像と22.2ch立体音響による映像は、目の前で物事が繰り広げられているかのような臨場感が味わえる。


■映像センターAVC

AVCのブースでは、ムービングLEDパネル「Wing Panel」と、ビジュアルモーションコントロールシステム「Kinesys」の組み合わせによる空間演出を行った。また、d&bのSoundscapeシステムの展示も行われ、ステレオ、モノラル、Soundscapeでの音の聞こえ方の違いもデモンストレーションを行った。

ムービングLEDパネル「Wing Panel」を搭載し、スポットライトも連動した空間演出が可能。LEDはIP65/3.9mmピッチ/3800cdと高輝度高精細。スポットライト部は10w/6×2/6度レンズにより力強いビームを出力している

コンサート会場などではステレオシステムが多く採用されており、スピーカーの場所によって音の聞こえ方が左右されていたが、d&bのSoundscapeは見たままの場所からそのまま音が聞こえてくるシステムだ。生演奏にも対応できるよう、ライブで演算して制御している。音を定位させているのは、音響システムプロセッサDS100シグナルエンジン。ディレイと音量のレベルをDS100で全て計算して制御しているという。

Soundscapeの場合

モノラルの場合

ステレオの場合

このようなシステムを作るきっかけとなったのは、ライブを見ている時に、演者のいる場所と音が出てくる場所が違うことに違和感を感じたことだという。また、ライブはどこの席でもチケット代は同じだが、聞こえてくる音の環境が席によって異なるため、どの席でも音の聞こえ方が平等になるようにという想いも込められている。


■シネ・フォーカス

シネ・フォーカスブースは、毎年3Dホログラムシステムに注目が集まっているが、今回は新たに開発した3m×2mサイズのホログラムフレームユニット「CFF-QU3020」を展示。軽量の可搬型フレームにホログラム演出用の特殊フィルムを予め張ってあるため、イベント会場への搬入や設置を短時間でスムーズに行うことができるとしていた(残念ながら写真撮影はNG)。

その他にも、ブース内外に設置されたLEDディスプレイや、3面ディスプレイ、1面ディスプレイの展示を行った。

3面ディスプレイdreamoc HD3は、3方向展開の立体的な視覚効果でアイキャッチに最適だとしている


■コナミデジタルエンタテインメント

特別企画として、プロゲーマーを招待したeスポーツのエキシビジョンマッチが行われていた。ゲームはウイニングイレブン2019。プロゲーマーの選手同士の3on3対戦を実施しており、ゲーム終了後にはその演出を行った機材や体制の解説を行った。