Premiere Proに新しく搭載された「プリーフォームプロジェクトパネル」

アドビは、NAB2019に合わせてAdobe Creative Cloudビデオ&オーディオ製品のアップデート提供を開始した。今回の発表に先立ち、最新アップデートを紹介する説明会が行われたので、その内容を紹介しよう。

After Effectsに待望の「コンテンツに応じた塗りつぶし」機能搭載やエクスプレッションエディターを強化

■映像の中から特定のモノを消せえる「コンテンツに応じた塗りつぶし」を搭載

After Effectsのアップデートでもっとも注目すべき機能は、ビデオに対応した「コンテンツに応じた塗りつぶし」機能の搭載だ。Photoshopでお馴染みの「コンテンツに応じた塗りつぶし」機能が、動画対応となってAfter Effectsに搭載された。これまでは、映像中から特定のモノを消すという発想がなかったが、これからは「コンテンツに応じた塗りつぶし」を使って映像の中から消すという選択肢もアリになりそうだ。

(01)例えば、空撮で全体撮影と車載カメラで寄りのシーンを撮影したいとする。この場合は、同時に撮ると引きのカットに寄りのカメラが映ってしまうために、寄りと引きを別々に撮影するのが一般的だ。

空撮で引きの映像を撮影。自転車を寄りで撮影する車が映ってしまっている

(02)「コンテンツに応じた塗りつぶし」を使えば、引きの映像から簡単に車を消すことができる。手順は、車の位置にマスクを切ってトラッキングを行う。マスクは、ラフにきっても問題はない。

車の位置にマスクを切っていく。ラフで問題はない

(03)キーフレームを打った箇所に新機能の「コンテンツに応じた塗りつぶし」でマスクに1フレームずつ画を作っていく。「塗りつぶしレイヤーを生成」をクリックすると分析が開始され、そこに画を作ってくれる。

「塗りつぶしレイヤーを生成」をクリックして、分析を開始。分析時間は長くない

(04)処理が終わると、もともと車が走行していたカットであったことがわからないほど自然な感じに車が消えている。「コンテンツに応じた塗りつぶし」の精度は高そうで、今後は「コンテンツに応じた塗りつぶし」前提の撮影なんてこともありえるかもしれない。撮影のワークフローを変えるかもしれない、画期的な機能といえそうだ。

分析をしてレンダリングを実行すると車が消える

「コンテンツに応じた塗りつぶし」を活用した例も紹介された。「コンテンツに応じた塗りつぶし」で、崖のカットから女性を消した。

塗りつぶし前の状態

塗りつぶし後の状態。女性が消えている

ドローンで撮った空撮の映像に、無駄な影が映ってしまった。「コンテンツに応じた塗りつぶし」で無駄な影だけを消した。

塗りつぶし前の状態

塗りつぶし後の状態

バイクの走行映像。タンクに貼ったロゴやステッカーを消した。

塗りつぶし前の状態

塗りつぶし後の状態

自転車の走行シーンを撮りたかったが、道路を封鎖できなくて一般車両が映ってしまった。このような場合も、車だけを消せる。

塗りつぶし前の状態

塗りつぶし後の状態

お城の景観を撮りたかったが、貸し切りにできなくて来場者が映ってしまった。このような場合は、来場者だけを消すことができる。

塗りつぶし前の状態

塗りつぶし後の状態

■エクスプレッションエディターの強化

今回のアップデートを行い、After Effectsのエクスプレッション機能がより使いやすく改善された。これまでのエクスプレッションは内容に誤りがあるとエラーが表示されるが、どこにエラーがあるのかわからなかった。今回のアップデートで、エラーの原因を示してくれるようになった。

エラーの原因を示してくれるようになった

Premiere Proも大幅にアップデートで、「エッセンシャルグラフィックスパネル」の機能拡張や「フリーフォームプロジェクトパネル」を搭載

■感覚的にファイルを一覧したり、タイムラインへの読み込みも可能なフリーフォーム表示を搭載

Premiere Proにも、数々の新機能が搭載された。もっとも注目すべき機能は、画面左下に追加された「フリーフォーム表示」だ。これまでビンの内容は、「リスト表示」と「アイコン表示」だけだったが、「フリーフォーム表示」の追加により、コンテンツをビジュアライズに確認できるようになった。

また、クリップを好きなところに動かすことが可能。自由自在に動かしたり、クリップのサイズを拡大して、重要なものを強調することもできる。

画面の左下にフリーフォームのアイコンが追加された

ビンの内容をビジュアライズで確認することができる

フリーフォームは、クリップにイン点、アウト点を打ってある程度の使い所を指定できる。イン点、アウト点を決めたものをまとめてドラッグアンドドロップでタイムラインに読み込ませることも可能。フリーフォームの登場によって、クリップを感覚的に素早く自分の思い通りに動かせるように改善されたといえそうだ。

■ストローク機能の強化でバラエティ番組風のテロップを実現

エッセンシャルグラフィックスパネルの文字ツールを使った新タイトル機能が改善された。今回のアップデートでは、国内ユーザーの多く要望を受けて実現したもので、バラエティ番組に使われるテロップを実現できるようになった。

バラエティ番組で使われるテロップは、文字に縁を付けるストロークを3個使う複雑なものが多い。しかし、これまでのPremiere Proはストロークを一つまでしか入れられなかった。今回のアップデートにより、複数のストロークを入れられるようになった。さらに、縁取りに対して、「マイター結合」「レベル結合」「ラウンド結合」の選択が可能。レベル結合は少し角がとれて、ラウンド結合は丸みの帯びた感じになる。

複数のストロークに対応。また、設定したストロークに対して「線の結合」を適用できる

「線の結合」を適用した例。丸みの帯びた縁取りが可能

■テロップを効率的に入れられる定規とガイドを搭載

テロップに背景を入れることが可能になって、余白や背景の透明度の調整ができるようになった。背景との連動も可能。改行を行えば、きちんと背景がついてくる。

テキストに背景を追加。色や余白、透明度を設定可能

テキストに改行を入れれば、背景も連動して大きくなる

Premiere Proのメインメニューに「表示」項目が追加され、「定規を表示」「ガイドを表示」が搭載された。Photoshopにはすでに搭載されているお馴染みの機能だ。

例えば、テキストを配置する位置が決まっている場合は、同じ位置に視覚的に入れられるようにプリセットで保存して、ほかの人に渡すといったことも可能。指示の共有にも便利だ。

Premiere ProとAfter Effectsでパフォーマンスを強化を実現

今回のPremiere ProとAfter Effectsのアップデートでは、パフォーマンスの強化が図られている。例えば、Premiere Proのマスクトラッキングでは、4倍から38倍の高速化を実現し、デュアルGPUに対して最適化を行っている。

また、HVCがWindowsでの再生がハードウェアコーディングに対応し、よりスムーズに再生できるようになった。After Effectsに入っているエフェクト、色変更とラフエッジのエフェクトはもともとソフトウェアの処理のみだったが、GPUやハードウェアでの処理に対応。より早いパフォーマンスを実現している。

Creative Cloudのアップデートは、本日より提供を開始する。なお、Creative Cloudの新バージョンは2019年4月8日から11日(米国時間)に米国ラスベガスで開催されるNAB2019の同社ブース(セントラルホール/SL5610)にて展示予定だ。