左から、上田晃司氏、佐藤健寿氏、うちだなおこ氏、ジャン・リー氏

液晶モニターや起動の高速化を実現しつつ価格が引き下げられたX1D II 50C

ハッセルブラッドジャパンは6月20日、中判ミラーレスカメラの新製品「X1D II 50C」やXCD 35-75mm f3.5 / 4.5ズームレンズ、近日発売予定のCFV II 50Cデジタルバックと907Xカメラ本体の発表会を都内で開催した。

冒頭ではハッセルブラッドジャパンのCountry Manager、蒋力(ジャン・リー)氏が登壇。ハッセルブラッドは、X1Dユーザーからのユーザーフィードバックを聞いて新しいX1D II 50Cコンパクトミラーレス中判カメラを開発したといい、「画質は最高、ボディはコンパクト、なにも変わっていないように見えるけれども、すべてが変わった。全く新しいXシステムを、本日発表します」と意気込みを述べて新製品を公開した。

発表されたばかりのX1D II 50CとXCD 3,5-4,5/35-75を持つハッセルブラッドジャパンのジャン・リー氏

X1Dのコンパクトさや高画質を受け継ぎながら進化したX1D II 50C。レンズはXCD 3,5-4,5/35-75

X1D II 50Cは、中判カメラとして非常に軽い650グラム。センサーは、35mmフルフォーマットセンサーの1.7倍となる5000万画素、43.8×32.9mmのCMOSセンサーを採用。16ビットの色深度と14ストップのダイナミックレンジを備え、より豊かにディテールを表現すると説明した。

ハッセルブラッドナチュラルソリューションにより、スキントーンなどを実物に近い優れた色調を実現。また、46パーセントの起動時間の短縮や、リフレッシュレートの向上、連写速度は2フレームから、2.7フレームへ35パーセントの高速化を実現しているという。

ボディのサイズはコンパクトのまま、起動速度の短縮やリフレッシュレートの向上、連写速度の高速化を実現している

X1D II 50Cは、ビューファインダー、ディスプレイ、ユーザーインターフェイス、コネクティビティも進化しているという。リフレッシュレートは60フレームになり、より自然に近いプレビューを可能にしている。画面サイズも3インチから3.6インチのタッチディスプレイを採用し、中判カメラとしては最大の液晶ディスプレイを実現。ビューファインターは、有機EL電子ビューファインダーを採用し、ファインダー倍率は中判ミラーレスカメラの最高倍率の0.87倍となっている。

タッチユーザーインターフェイスのレスポンスや操作性も向上しており、メニュー構造を見直しにより簡単にアクセスが可能。フォーカスポイントのセレクトも背面ディスプレイから直接行えるように改善されたという。

再設計されたファインダーと改良された背面ディスプレイ

X1Dシリーズは、さまざまな接続方法を採用している。1つ目は、撮影した場所の位置情報を自動的に記録するGPSを内蔵。2つ目は、Wi-Fiによって、iPhoneやiPadと接続して、カメラの設定や撮影を行える。3つ目は、USB Type-Cを搭載しており、直接接続して充電が可能。iPad Proに接続して、新しいワークフローが可能となっていると説明した。

また、アダプターを使用することによって、Vシステムのレンズ、Hシステムのレンズ、XPANなど、ほぼすべてのハッセルブラッドのレンズを使うことが可能。動画機能の仕様については、一切発表されていない。聞いてみると、現段階では未定だという。

内蔵GPSやUSB-Cなど、接続方法を拡張性している

X1D II 50Cの参考価格は税別65万円で、X1Dから大幅に引き下げされている。出荷時期は、今年の7月を予定。

XCD初のズームレンズ「XCD 3,5-4,5/35-75」を発表

XCD 3,5-4,5/35-75

レンズは、「XCD 3,5-4,5/35-75」を発表した。XCD初のズームレンズ。これまでXCDレンズは、8本のラインナップだったが、XCD 3,5-4,5/35-75で9本目のレンズとなる。焦点距離は、35mmフルサイズ換算で28mmから60mmで、絞りは3.5から4.5とのことだ。

また、インナーフォーカスにより、焦点距離によらず一定の長さを実現。レンズシャッターを採用しており、1/2000分の1秒までのストロボ全速同調が可能だという。

これまで21mmから135mm8本の単焦点レンズをリリース。XCD初のズームレンズXCD 3,5-4,5/35-75を発表した

焦点距離は、35mmフルサイズ換算で28mmから60mm。絞りは3.5から4.5

フィルター径は77mm

XCD 3,5-4,5/35-75の参考価格は、税別58万5,000円。出荷時期は、今年の10月を予定。

907XとCFV II 50Cでオートフォーカスと自動露出が可能なミレーレス中判デジタルカメラを実現

左は往年のVシステムとCFV II 50Cの組み合わせ。右は907XとCFV II 50Cの組み合わせ

新しいVシステムの発表も行われた。Vシステムは弊社の創業者ビクターハッセルブラッド自身が設計して、自身の思いを形にしたカメラと紹介。Vシステムは、1948年のhasselblad 1600Fから58年間に渡り、約30の派生モデルを発売。最後のリリースは2006年のhasselblad 905SWC。

今年で最後の905SWCの発売から13年目だが、「次のVはでないのですか?」といつも聞かれるという。「われわれその期待には裏切りません」とジャン・リー氏が力強く言いながら発表したのが、CFV II 50Cと907X。907Xは、全く新しいカメラボディでレンズ側がXCDマウント採用し、XCDレンズの装着が可能。デジタルバックは、CFV II 50Cを装着することが可能。907Xカメラボディと組み合わせると、すべてのXCDレンズでオートフォーカスと自動露出が可能になる。さらに、Vシステムをケーブルなしにシームレスに最新のデジタルカメラに変更できるという。

左から、CFV II 50C、中央が907X、右がXCDレンズ。907Xはボディだが「フレームだけじゃないの」といっていいほど小型だ

以前のCFVでは、広角レンズに使用制限があったが、CFV II 50Cと907Xの組み合わせは、XCDレンズの21mmや30mmを含む広角レンズに対応。この組み合わせは、ハッセルブラッドSWCカメラを連想させられるが、レンズ交換式であるところが大きな改善点となっているという。

XHアダプター、XVアダプター、およびXPANレンズアダプターと組み合わせると、すべてのHC、HCD、Vシステム、PNAレンズが使用可能。また、CFV II 50Cのチルト式タッチスクリーン機能を使用すると、Vシステム特有のウエストレベルでの撮影スタイルを含むクラシックなスタイルで撮影することも可能。光学ビューファインダー、ハンドグリップなど、追加のアクセサリーにより、さまざまな撮影スタイルが可能。

CFV II 50Cの外観。フィルムマガジンを連想させる共通のデザインを実現している

液晶モニターの角度は変更可能

CFV II 50のマウント側を見ると、これまでのCFVシリーズにはない907Xボディと通信するためと思われる接点が増えている

これまでのVシステムの構成

CFV II 50C、907X、XCDレンズ構成

光学ビューファインダー、ハンドグリップなど、追加のアクセサリーが用意される

モニターの角度は変更可能

CFV II 50と907Xは、下半期に情報を公表予定。

X1D II 50Cを使った3名のフォトグラファーによるトークショー

新製品発表会では、X1D II 50Cでテスト撮影をした3名のフォトグラファーによるトークショーも行われた。

フォトグラファーの佐藤健寿氏は、「X1D II 50Cは、中判カメラであることを忘れられます。これまでは中判を使う、三脚を立てて使うという感覚がありましたが、X1D II 50Cで起動速度が高速化したこともあり、そのような心構えは必要なくなったと思います。夜市のところにふらっと持っていったり、中判でスナップってなかなかできませんでした。X1D II 50Cは、今までありえないことができちゃいます」と語った。

X1D II 50Cの使い勝手を語るフォトグラファーの佐藤健寿氏

フォトグラファーのうちだなおこ氏は、「X1D II 50Cは中判のエンジンを積んでいるため、色ノリや画質がとてもきれいで加工の必要を感じません。もともとの写真の撮ったときの良さを残しながら、撮影することができると思います。撮ったときに露出ミスで潰れてしまったと思っても本当に色がでてくる。ハイライトも残ってくれる。フィルムに近いような感覚を感じます」と語った。

フォトグラファーのうちだなおこ氏

フォトグラファーの上田晃司氏は、ハッセルブラッドを使う理由を紹介。「ストロボ撮影の頻度が高いのですが、X1D II 50Cは全速同調1/2000に助かっています」と語る。「最近のストロボは出力が小さなものが増えていますが、僕が使っているProfoto B10は250ワットで、ハイスピードシンクロをしてしまうと出力が落ち過ぎてしまって使い勝手が悪いです。ハッセルブラッドと組み合わせることで、フル発光を使わなくても日中シンクロ撮影ができたりして非常に助かっています」とのこと。

フォトグラファーの上田晃司氏

上田氏はX1D II 50Cの魅力に1/2000のレンズシャッター搭載を挙げた

また、16ビットRAW記録の14段分のダイナミックレンジで安心感があることも紹介した。上田氏は、黒つぶれの部分に関しては、フルサイズカメラでも戻せるイメージがあったという。しかし、白飛びってどうなのか?と疑問を呈してわざとX1D II 50Cで白飛びをしている画像を撮り、白飛びした風景から雲のディテールを再現できることを紹介した。

「基本的にEVFを見ながら撮るので、本来白飛びしたら露出調整すればいいのですが、やっぱり調整したいと思ったときに、X1D II 50Cはハイライトの伸びしろだったり、シャドーの伸びしろを持っています。そういった部分では、本当にありがたいです」と上田氏。階調の再現性など、さまざまな魅力を紹介した。

わざと白飛びをした状態で風景を撮影

「白とび軽減」を77に設定した様子。白でとんだ雲のディテールが戻ってくる