Blackmagic Designの発表によると、安徽Orange Mediaが2019年の斗魚(Douyu)カーニバルのライブグレーディングにDaVinci Resolve StudioおよびDaVinci Resolve Mini Panelを使用したという。同イベントは、中国のストリーミング大手である斗魚が主催するもので、多様なエンターテインメントや文化を紹介している。

3日にわたる同イベントのストリーミングの視聴回数は3億1,000万回以上におよび、そのワークフローにはDeckLink 8K Pro、ATEM 1 M/E Production Studio 4K、ATEM 1 M/E Broadcast Panel、HyperDeck Studio Proが使用された。

斗魚カーニバルは、中国のストリーミング関連の大型イベントで、ライブパフォーマンス、ゲーム、映画、アニメーション、食べ物などの多数のジャンルのエンターテインメントを3日間にわたり提供している。また、その動員数は41万人、オンラインでの視聴数は3億1000万回におよぶ。

2019年の斗魚カーニバルでは4つのステージが設立された。メインの斗魚ステージでは、オンラインセレブリティの音楽やダンスパフォーマンス、Linkステージではファンミーティング、Youngステージではその他のパフォーマンス、Gamingステージではライブゲーム番組やストリーミングが行われた。

全番組のストリーミングは、安徽Orange Mediaが担当した。同社は2014年に設立され、「Mad for Music」、「Race Forward, Boys and Girls!」、「Anhui TV Spring Festival Evening Gala」、「Law of the Jungle」、「China TV Drama Awards」などのテレビ番組の実績をもつ。

Orange Mediaの設立者である朱静(Zhu Jing)氏は次のようにコメントしている。

静氏:通常のストリーミングと異なる点は、斗魚ステージでのパフォーマンスをライブグレーディングする必要があった点です。パフォーマンスを行った全員が、何百万のファンを持つオンラインセレブリティだったのですが、ファンは、このようなセレブのストリーミング・アプリ上での見た目の方に見慣れています。

セレブたちは、アプリのビューティ機能を使って肌を実際より白く見せているため、皮肉なことにファンは実物よりも、美化されたセレブたちの姿の方を好んでいます。斗魚からは、ビューティ機能と同じ効果をリアルタイムでストリーミングに適用するように指示を受けました。

様々なライブグレーディング・ソリューションを試しましたが、ほとんどがプライマリーグレーディングにのみ対応しており、肌など特定の領域を調整できません。幸いにも、DaVinci Resolveはライブでプライマリーとセカンダリーグレーディングがポストプロダクションと同じように適用できます。

正確なセカンダリーグレーディングを行うために、ノードやクオリファイアーだけでなく、OpenFXも追加できます。斗魚は、当プロジェクトを非常に重要視していて、はるばる武漢市から合肥市までResolve Liveのライブグレーディング機能をチェックしに来たほどでした。何度かデモを行ったあと、DaVinci Resolveが目的を達成するのに十分な機能を備えていると納得していました。

Kang StudioのDaVinci Resolveカラリストである劉康(Liu Kang)氏は成都市出身で、Orange Mediaより出演者のスキントーンを変える作業を依頼された。

康氏:スキントーンの調整前に、使用している全カメラが実際の肌の色を正確に再現しているか確認する必要がありました。そこから、肌の色を好みに合わせて選びました。

スタジオカメラ、ハンドヘルドカメラ、ドローンなど、様々な種類のカメラを7台使用し、異なるレンズとイメージセンサーを搭載していたため、同じモデルで同じ設定を使用しても、古いスタジオカメラのルックは他とは異なっていました。

全カメラのルックを一致させるために、各カメラ用にLUTを生成し、LUTをロードしたTeranex Miniに各カメラフィードを送信して、カラーキャリブレーションを行い、その後ATEM 1 M/E Production Studio 4Kに送信された。プログラムフィードはDeckLink 8K Proキャプチャーカードを介してDaVinci Resolveに送られ、カラリストがDaVinci Resolve Mini Panelでライブグレーディングした。

グレーディングされたプログラムビデオは、ストリーミング・ソリューションに送信され、インターネットでライブ配信された。

希望通りの肌の色に見せるのをクライアントは最も重要視していたが、照明が絶えず変わっていたため、ライブグレーディングに多くの課題をもたらした。パフォーマンスは正午から夜まで行われ、日中は自然光だけで撮影されたが、夜間は複雑な舞台照明だけでなく、スモークなどの効果も使われたため、ビデオ上のスキントーンが変わってしまい、グレーディングを適用した際に不快なノイズが生じた。

ライブストリーミングでは、ノイズなどはあってはならないことだったが、劉氏は、DaVinci Resolveはそれに対処できる機能を搭載していることを見つけ出した。

康氏:DaVinci ResolveのHSLツールを使って肌の色を変えたい部分を選択し、エッジ部分をソフトになるように選びました。フェザーツールとソフトツールを使用して、扱いやすいようにしました。

同氏は、こういった理由でプライマリーグレーディングのみに対応しているライブグレーディング・ソリューションは、このプロジェクトには適していなかったと語る。

康氏:照明が変わるとLUTは使い物になりません。しかし、新しいLUTを作成する時間はないので、リアルタイムでグレーディングするしかありません。また、クライアントが真横に座って「肌をもっと滑らかに見えるように」とか「肌をもっと白くして」とか細かく指示してくるような状況だったので、LUTを適用するだけでは不十分でした。

スキントーンに加え、ライブグレーディングで画質と照明効果も調整された。

康氏:ライブグレーディングの全作業にDaVinci Resolve Mini Panelを使用しました。瞬時に機能を使用でき、観客が気づかないくらいの微調整をグレーディングに施すことができました。マウスではカーブを調整する際に慎重に使用しないと、ライブのイメージに急激な変化が加わってしまい、大惨事に陥りかねません。

グレーディングを行ったビデオはHyperDeck Studio Proで、ポストプロダクションとアーカイブ用に収録された。多数のMini Converter UpDownCrossが、Gamingステージの信号変換と分配に使用された。

康氏:2014年にBlackmagic Designのコンバーターとキャプチャーカードを使用し始めました。費用効果と信頼性が高いため、今ではスイッチャー、レコーダー、ソフトウェアツールなど他のBlackmagic Design製品もワークフローに導入しています。

斗魚カーニバルは、今までとは全く異なる課題がたくさんありましたが、Blackmagic Design製品、特にDaVinci Resolveのおかげで、プロのライブプロダクションにリアルタイムでビューティ機能を適用でき、プロのツールを使用した新しいライブストリーミングのワークフローを構築できました。