株式会社JVCケンウッドと株式会社JVCケンウッド・公共産業システムは、2019年7月22日~23日の2日間、東京・秋葉原のアキバ・スクエアにて「JVCケンウッド ソリューションフェア 2019」を開催した。同イベントは、同社グループの総合イベントとして初開催となった。

会場内では、同社グループが展開する「映像」「音響」「無線」技術を生かしたソリューションを13のテーマにわけて展示。また、BCP・防災・危機管理への対応やデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組み、イノベーションや感性をテーマとしたセミナーも行われた。今回は、13のテーマの中から「映像活用ソリューション」エリアを紹介する。

「映像活用ソリューション」エリアでは、映像制作・配信・共有・記録などのニーズに対応する、LTE網/クラウド/ネットワークを活用した映像伝送のデモンストレーションを実施。新製品のライブスイッチャーシステム「CONNECTED CAM STUDIO」や、CONNECTED CAMの第二弾「GY-HC550」「GY-HC500」、PTZカメラとリモートコントローラー、ビデオスイッチャーを組み合わせた少人数運用システム、スポーツコーチングカメラシステムの提案、8K解像度での表示が可能なプロジェクターなどが展示されていた。

■ライブスイッチャーシステム「CONNECTED CAM STUDIO」

「CONNECTED CAM STUDIO」。本体のほかに各機能が個別に印字、色分けされたキーボードが付属している

「CONNECTED CAM STUDIO」のライブプロダクションシステム「KM-IP6000」「KM-IP4100」は、IPライブスイッチャーとカメラコントローラー、オーディオミキサーを1台に集約したシステム。ネットワークを経由したIP制御により、遠隔地に設置したJVCカメラ(GY-HC900CH/GY-HC550/GY-HC500/GY-HM200/GY-HM250/GY-HM660/GY-HM850/KY-PZ100)のリモート操作がどこからでも可能。タリー表示とマルチカメラ撮影に対応し、ライブスイッチングや、ズーム、アイリス、フォーカス、シャッタースピード、ホワイトバランス、ゲインなどのカメラ設定が行える。

IPデコーダーを使用せず、KM-IP6000は6系統、KM-IP4100は4系統のIPビデオストリームの入力が可能。また、HD-SDI入力をKM-IP6000は6系統、KM-IP4100は4系統装備。

最大でHDカメラを6台制御することができ、操作は基本的にタッチパネルで行う。初めて触る人にも簡単に、直感で操作できるようなUIとなっている。基本的にはワンオペを想定しており、リプレイ機能や、簡易スポーツ用スコア・テロップ機能、IPリターンビデオ(GY-HC500/550HC900使用時)、IPリターンオーディオ(IFB)機能(GY-HC500/550/900CH/HM850/HM660使用時)などを搭載している。

CONNECTED CAM STUDIOは、生中継を低予算、少人数で行うことが可能。CONNECTED CAM STUDIOをスタジオに設置し、中継先にはカメラマンなどの技術者が赴き、有線でカメラの映像をWANにアップロードし、WAN経由でCONNECTED CAM STUDIOに直接映像が伝送可能。有線を使用するので映像の乱れが少ないとのこと。また、ビデオリターンとオーディオリターンも可能なため、ディレクターがカメラマンに指示を送ることができ、カメラマンも今なにがオンエアされているかをリターンビデオで確認することができるため、カメラマンとしては必要最低限の情報もコンパクトなシステムで全てまかなうことができる。

1つデメリットを挙げるとすれば、同システムはIPを使用しており2秒程度の遅延が発生してしまうため、現場とスタジオの掛け合いなどは少し厳しいかもしれないとのこと。CONNECTED CAM STUDIOの市場想定価格は6入力モデルのKM-IP6000が税別170万円前後、4入力モデルが税別140万円前後。

※現状、5G実用化後は改善の可能性あり

ライブ配信サービスへ直接映像をアップロードできるRTMP(Real-Time Messaging Protocol)およびUDP(User Datagram Protocol)に対応しており、YouTubeなどで簡単に生配信が行える

■4Kメモリーカードカメラレコーダー「GY-HC550」「GY-HC500」

「GY-HC550」「GY-HC500」は、1型CMOSセンサーと、新開発の4K 20倍レンズを搭載し、同社のハンドヘルドタイプカメラとして初となる4K60p記録に対応。記録コーデックは4:2:2 10ビットに対応したApple ProRes 422と、MPEG-4 AVC/H.264をサポート。ProResフォーマットは、Apple ProRes 422HQ、Apple ProRes 422、Apple ProRes 422LTが選択可能。MPEG-4 AVC/H.264はQuickTime(MOV)とMP4が選択可能。

SDカードとSSDカードで記録可能

別売のSSDメディアアダプター「KA-MC100」を使用することでSSDメモリー(SATA M.2、Type2280)にApple ProRes 422の4K60p記録が可能。現時点では4Kのみの記録となるが、将来的にはHD記録にも対応予定で、長時間記録が可能になるとしている。また、SDカード記録にも対応しているが、記録はHDのみとなる。SDカード記録は「シリーズ記録」「デュアル記録」「バックアップ記録」「プロキシビデオ記録」と、4つの記録方式に対応。

LAN端子

従来のUSBホスト端子を使った無線LAN、LTEなどのドングルに加えて、内蔵LAN端子、GY-HC550のみとなるが2.4GHz/5GHzのMIMO方式デュアル・アンテナ型内蔵無線LANなど、さまざまなネットワーク対応の各種インターフェースを装備している。市場想定価格はGY-HC550が税別50万円前後、GY-HC500が税別40万円前後。

IP伝送中継器

香港Peplink社とのコラボレーションにより商品化したドッカブル型IP伝送中継機「SFE-CAM-VM-LTEA」は、GY-HC550/500およびストリーミングが搭載されているJVCカメラと組み合わせて使用可能。SFE-CAM-VM-LTEAは複数のLTE回線を束ねて伝送するボンディング技術、エラー発生時のホットフェイルオーバー、不安定な回線をスムーズにするWANスムージングにより転送レートを高めるだけでなく、信頼性を確保でき、取材現場と放送局間の安定したIP伝送回線を確保するとしている。

SIMカードを4枚搭載しており、SIMフリーデバイスとして稼働。設定されているSIMカードキャリアの電波状態が設定レベル以下になると自動的に予備カードに切り替え可能。電源供給はVマウントバッテリーが使用できる。カメラとの接続はUSBまたはLAN端子。同IP伝送中継機を使用することで、GPSによる現在位置やLTEスピードの確認、カメラ設定・ステータス確認がリモートロケーションから実施できるため、カメラマンは撮影に集中できることもメリットだとしていた。

上図のIP伝送中継器と基本性能は同じだが、こちらのモデルは無線LAN機能を搭載している。無線LANが搭載されていることで、複数端末を容易に接続することが可能

こちらはSIMカードを4枚搭載

なお、GY-HC550のみ、クラウドサービス「Zixi」や、2.4GHz/5GHzのMIMO方式デュアル・アンテナ型内蔵無線LAN、MPEG-2コーデック、MXFフォーマットに対応している。