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パナソニックLUMIX S1H、14+ストップや動画無制限記録はなぜ実現できたのか?その秘密を開発陣に聞く

2019-09-04 掲載

S1Hを手にもつパナソニックの津村敏行氏

目指したのはBカメをメインで狙いつつも、Aカメとしても使えるシネマカメラ

2019年8月29日に有明で行われたLUMIX新製品発表会にて、S1Hの開発を担当した津村敏行氏と小林悠浩氏にインタビューすることができた。開発の背景や狙いなどを聞いたので紹介していこう。

――パナソニックは、業務用カメラになりますがAU-EVA1(以下:EVA1)やVARICAMなどのシネマカメラをラインナップしています。そこに、S1シリーズのシネマモデル「S1H」を投入した理由を教えてください。

津村氏:もともとLUMIX GHシリーズのターゲットは、スチルだけではありません。スチルを撮りながらも、新たに動画を撮る方をターゲットとして広げてきた経緯があります。一方、VARICAMとEVA1は、Netflixの大型作品をはじめとするトップエンドのAカメ(メインカメラ)として使われているほか、ローバジェットの制作ユーザーに裾野が広がってきているところを捉えてきました。

S1Hは当初、どのように提供するのか?を議論したことがあり、その結果、「動画と静止画の両方」という解に至りました。EVA1は、Aカメとしても使えるインターフェイスを構成し、一方GHシリーズの一眼フォルムは撮影の自由度の高さやシネマ機のフォルムでは実現できないBカメとしての撮影ニーズがあるだろうと考えました。

当社のGHシリーズは、基本的にはトップエンドの映像制作の中でもBカメのポジションで使われています。ただ、ローバジェットの現場においては、いわゆるBカメだけれどもAカメ的に使う方も増えています。Bカメをメインで狙いつつも、Aカメとしても使っていけるアプローチ。それであれば、一眼フォルムで提供すべきだろうと考えて、投入を決めました。

小林氏:動画の市場は拡大しており、今後も多くのお客様が注目される市場と予測しています。そこに、Aカメラがもっている画質と、GHシリーズで培ってきた機動力を併せ持った商品がこのタイミングで出せれば、多くの方に使っていただけると議論に達しました。S1Hは、これまでになかった製品に仕上がりました。思い切って実現しようと決めて発売してきた経緯があります。

パナソニックの津村敏行氏(左)と小林悠浩氏(右)

――S1Hの市場実勢価格は約50万円、EVA1は約80万円と、民生用と業務用の違いはありますが価格はだいぶ近いです。今後、社内での開発の差別化や開発の統合など、どのように考えていますか?

津村氏:もともとプロAV部隊とLUMIX部隊は、技術開発をかなりの密度で行っています。お客様の声に基づき、最も価値を出せそうなところを双方で作っていこうと考えて開発を行っています。決して、争う「競争」ではなくて、共に作る「共創」です。トータルでルックも合わせて、トータルなワークフローをお客様に提供しようと考えています。

S1シリーズの3台目のラインナップとなる「S1H」

スチルの使い慣れたファインダースタイルで動画撮影を実現

――シネマをターゲットにしたLUMIXを開発と聞いたとき、シネマカメラでお馴染みのキューブスタイルLUMIXが誕生するのでは?と想像しました。S1Hはグリップスタイルを採用していますが、デザインにこだわった点などありますか?

津村氏:企画段階で、日本、アメリカ、欧州のGHシリーズやEVA1を使っていただいているお客様にユーザーヒアリングを重ねました。その結果、グリップフォルムの良さは多くのメリットがある結論に達しました。たとえば、ドキュメンタリーを押さえる際など、スチル構図のスタイルで、使い慣れたファインダースタイルで撮れるのはとても有効です。

しかも、動画撮影とスチル撮影を併用している方がほとんどだと思います。それらの用途も含めすべて、ローバジェットの方は1個の機材でレンズも共通で使えるのが理想です。そういった意味で、動画のシネマをメインとしつつも、スチルの機能を載せたのはその理由からです。

また、シャッター機構には、耐久回数40万回を達成した高性能なメカシャッターが入っています。これは、動画機からのアプローチではなく、スチル機を生業としてきた中でシネマに進化しました。その結果、スチルのフォルムを維持しました。

小林氏:グリップフォルムは、かなり市民権を得ているのではないか?という認識をもっています。たとえば、ドローンを乗せたり、一眼ミラーレスにリグを組んで撮影される方も街中でも見かけるぐらい増えています。そのような形もだいぶ馴染んでいると認識しています。

S1Hのデザインは、従来のSシリーズと大きく変わることはない

――今回S1Hを実現するうえで、最も苦労した点を教えてください。

津村氏:2つあります。1つは、ダイナミックレンジ14+ストップを実現するところは、大変な苦労を重ねて実現をしています。もう1つは、無制限記録の動画の実現です。

小林氏:S1は、熱がある程度の高さになると安全性を重視して、記録が停止してしまいますが、S1Hは-10°から40°の範囲内での使用であれば、記録時間を気にせずに撮っていただけます。

このようなフォルムで、発熱や消費電力も大きいフルサイズで動画無制限の実現は大変厳しい開発となりました。無制限時間を諦める議論も一時出たほど、やはり熱の高さで停止してしまうリスクもありました。

しかし、撮影中や、出演者が努力をして演じているところで万が一止まってしまうのは最悪の事態です。無制限記録を実現しなければと言う思いで、放熱構造を新たに考えて構想をしましたが、実現するまでのステップはかなり大変でした。

ファンについては、ノイズの問題があります。静音性を目指しました。ノイズも入らず、ファンをあのフォルムに入れ込むのは今回の技術的の中でも、最も難易度の高いチャレンジでした。

カメラ内部に冷却ファンやヒートシンクを搭載

――最後に、RAWへの対応について詳細を教えて下さい。

津村氏:RAWに関しては、当社もかなり力を入れて進めております。しかし、相手メーカー様がいらっしゃる話なので、当社単独では情報をお伝えできないのが現状です。しかし、近いうちに、正式にお伝えできると思います。

発表会では、ATOMOS社製の製品との組み合わせによって、HDMIを経由したRAW動画撮影に対応すべく、現在開発中と発表が行われた


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[ DATE : 2019-09-04 ]
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