© 2019 Disney

Blackmagic Designの発表によると、VFX監督のロブ・レガート氏が、ディズニー映画「ライオン・キング」のバーチャルプロダクション環境の作成に、数多くのBlackmagic Design製品を使用しているという。ジョン・ファヴロー監督、ドナルド・グローヴァー、ビヨンセ・ノウルズ=カーター出演の同作は、2019年7月19日の公開以降、全世界で15億ドルの興行収入を上げている。

「ヒューゴの不思議な発明」、「ジャングル・ブック」などの作品でアカデミー賞を受賞したVFX監督のロブ・レガート氏は、テクノロジーを新しいレベルに押し上げ、実写のセットで使用するようなツールを使用して、従来の映画制作者たちがデジタル環境で作業できるスペースを構築したいと考えたという。

レガート氏:私たちが目標としていたのは、すべてのショットをコンピュターで作成することではなく、デジタル環境をリアルなセットのように撮影することでした。

同作は、アフリカのサバンナを舞台に、プライドロックの正当な地位を継承するため、裏切りや悲劇を乗り越えてゆく未来のキングの旅を描いている。現代テクノロジーの可能性を最大限まで押し広げ、コンピューターグラフィックを駆使した結果、これまでにない、実写のようにリアルなスタイルを実現し、作品の最終的なルックのみならず、プロジェクト全体を通じて新しいテクノロジーが使用されている。プロダクションに最先端のバーチャルセットが用いられているのもその一環だという。

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「ライオン・キング」の撮影現場は一見奇妙で、あまり一般的でない機材が床を占領し、コンピューターと向き合った多くの技術者たちが周りを取り囲んでいるが、これは単に撮影環境の骨組みである。撮影を始めるにあたり、ファヴロー監督とキャレブ・デシャネル撮影監督は、ヘッドセットを装着し、ムファサとシンバのバーチャル世界に入り込んだ。

レガート氏は、撮影スタッフたちにデジタルツールの使用を強いるのではなく、物理的な映像機材を改造して、バーチャルな世界で使用できるようにした。クレーンユニットにトラッキングデバイスを装着し、クレーンの動きをコンピューター内で正確に再現できるようにした。またステディカムも導入し、デシャネル撮影監督は、実写の撮影と同じツールを使用してカメラをバーチャルに動かすことができた。現場やコンピューター内にすでに存在する標準のツールを使用して、従来と同じ方法でプロダクションを実現することが目標であったという。

レガート氏:従来のプリビスでは、カメラは完全にコンピューター内で動かしていました。私たちのバーチャルセットでは、撮影現場に実際にドリートラックを設置して撮影しましたが、それがデジタルセットで正確に表現されています。

Blackmagic Designは、単にこのシステムの一部というよりはシステムの基幹であり、バーチャル世界のみならず、スタジオ全体のインフラを構成している。VFXプロデューサーのマット・ルビーン氏は次のようのコメントしている。

ルビーン氏:最初は、Blackmagic Design製品をスタジオ全体のルーティングに使用していました。その後、ビデオを扱うすべての段階でも使用するようになりました。撮影したフッテージのキャプチャーにはDeckLinkカードを使用、Micro Studio Camera 4Kをウィットネスカメラとして使用、さらにTeranexコンバーターや、ATEM Production Studio 4KおよびATEM Television Studio HDなどのATEMビデオスイッチャーも導入しました。

編集とVFXはSmart Videohubを介してネットワーク接続されており、どちらの部署も映写室にアクセスできるだけでなく、映写室へのソースとしての役割を担うこともできる。バーチャルプロダクションでは、コンピューターでバーチャルセットを作成し、DeckLinkキャプチャー・再生カードでそのフッテージをキャプチャ。さらにビデオネットワークを通じて再生してコントロール・ステーションへと送信し、HyperDeck Studio Miniで収録した。

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フッテージを撮影してコンピューターに取り込んだ後、セットアップはVFXスタジオのMPCに引き継がれ、写真のようにリアルなイメージが作成された。フッテージを確認し、最新の編集を残すという過程では、レガート氏と彼の率いるチームは2つの編集スイートでDaVinci Resolve Studio およびDaVinci Resolve Advanced Panelを活用し、カラリストたちの参照用としてレガート氏がショットにカラーを適用した。

DaVinci Resolveのプロジェクトは、MPCからの新しいフッテージにより、1日の中で何度もアップデートされることがあった。レガート氏は、個別のショットではなく、編集のコンテクストをファヴロー監督に提示していたので、ショットをバランス調整してスムーズに表示できることが非常に重要であった。スタジオ内でDaVinci Resolveのデータベースを共有することで、スタジオ内の様々なチームメンバーが、映写室を占領することなく、同一のタイムラインを確認することができたという。

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同作のバーチャル撮影には最先端のシステムが使用されているが、最終的な作品は、実際の撮影ツールとクリエイティブなワークフローによる映画制作の真の芸術スタイルを反映している。

レガート氏:バーチャルセットの作成は、柔軟な撮影を実現するバーチャル世界を構築することでした。デシャネル監督の指示で、太陽の位置を動かして1日の時間を設定することや、プロダクションの最中に、美術監督にセットに必要な木などを配置してもらうことができるのです。バーチャル世界は、映画撮影のすばらしいプラットフォームです。これはまさに、今までにない制作形態でしょう。一般的なプロダクションの特徴をすべて備えた上で、より柔軟に創造性を発揮できます。